その頃学園では
時は少し戻って、ラグナがシーカリオンへと向かっている頃。
「詠唱開始!……放てぇぇぇ!!」
まだ子供と呼べる年齢の子ども達が城壁の上にて横一列に並んでおり、指揮官の指示通りに魔法を放っていた。
放たれた魔法は迫り来る魔物達へと着弾。
しかし……
威力はバラバラ。
着弾する速度もバラバラ。
それでも何とか数頭の魔物を倒しているが、討ち漏らしが多くこちらへと襲い掛かってくる。
「次!!詠唱開始!!……放てぇぇぇ!!」
この光景を繰り返すことたったの数回。
子ども達の魔力はあっと言う間に空になってしまい、魔法の発動が出来なくなっていた。
「ちっ、もう使えないか。後ろに下がれ!第一魔法師団前へ!!」
子ども達の後方で控えていた魔法師達が前へと出ると一斉に詠唱を開始。
「放て!!」
指揮官が指示すると、ほぼ同時に魔法が発動。
隙間無く綺麗に着弾した魔法は大量の魔物の命を奪っていた。
それほど時間も掛からずに魔物の殲滅に成功していたのだった。
「話では今年の三学年は過去一番の出来だと聞いていたんだがな。一学年にして最上級生すら追い抜いた実力を持つ集団だと」
指揮官の男は、魔力枯渇によりダウン寸前の子供達の姿を冷めた目でみていた。
「所詮、噂は噂でしかないな。蓋を開けてみればこのザマか」
「それなのですが……」
魔法師の一人が耳元で囁く。
それを聞いた指揮官の男は顔を真っ赤にして怒りを露わにする。
「我ら栄光ある第一魔法師団に対して、なんたる侮辱!すぐに抗議をしろ!」
「はっ!!」
指揮官が怒りを露わにした理由。
学園からこの場へと派遣された生徒は一流でもなければ二流でもない。
それどころか三流ですらないクラスから派遣された生徒達だった。
クラスで言うと黒組以下。
最低限の魔法が発動出来るレベルの生徒を前線へと送ってきたのだった。
普通であれば、特級組が前線へと送られるはず。
しかし、その頃には学園内に三学年特級組の姿はいなかったのだった。
更に時は戻る。
「これ以上は無理だ!退くぞ!」
「くっ……クララ、ベティー、シーヴァ……」
「ウィリアム、早ようして!」
「……すまん」
ヒノハバラ魔法学園三学年、特級組はヒノハバラからの脱出を目指して動き出していた。
事の発端は、自らを真の女神と名乗る存在が世界に向けたメッセージだった。
あのメッセージの後に、異変が起きる。
すぐに学園長は王宮へと今後の対応について話し合いに向かったのだが……
数日経過しても王宮から戻ってくることは無かった。
学園の職員が困惑している中、突然として王宮より兵士が派遣された。
そして学園の入口でこのような声明が発表された。
『ヒノハバラ魔法学園学園長イアン・ロビンソンに謀反の疑い有り。これより学園の捜査を開始する!妙な動きをすればすぐに捕縛する!』
ちょうど生徒達が登校途中の時間にそれは起きてしまったのだった
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。