助かる者、助からない者
奥へと進むと、少し広くなっている広場の様な場所へとたどり着いた。
どういう原理かはわからないが、洞窟の中はほんのりと薄暗い感じ。
しかし、照明などの光がどこかにあるわけでも無い。
なんとも不思議な空間が広がっていた。
そして広場の中心には大柄の人?の様な何かがおり、手に持つソレに噛み付く瞬間だった。
ムシャ、ムシャ
「クソがぁぁぁぁ!!」
噛みついて咀嚼している正体に気が付いたラグナは声を荒げる。
駆け付けた時には既に手遅れだった。
ラグナが怒りのまま剣を振りかざそうとすると、魔物は手に持つ遺体をラグナへと向けて投げつけてきた。
「なっ!?」
予想していなかった攻撃に慌てるラグナ。
剣を構えながら、遺体を避けるとグシャっという生々しい音が後方で聞こえた。
「どこにいった!?」
遺体を避けた瞬間に魔物を見失ってしまったラグナだったが……
「グルゥァァァァァァ!!」
という叫び声と共に先ほどの魔物が上空から襲い掛かって来た。
「LEDライト!!」
ラグナは迫り来る魔物に向けてLEDライトを発動させる。
「キャイン!?キャンキャン!!」
激しい光を直視してしまった魔物は一瞬にして視力を失うとそのまま地面へと倒れ込む。
そして目を抑えながら地面を転がり回り、苦しんでいる。
「今なら!!」
好機と見たラグナは魔物へと接近するとガストーチソードを心臓の辺りに突き刺す。
肉が焼ける臭いが周囲に広がり、剣を抜くと魔物はそのまま力尽きて動かなくなった。
ラグナはその魔物を収納すると来た道を戻ろうとした所で、先ほど入り口で出会った兵士達が駆けつけてきた。
「大丈夫か!?」
よっぽど心配で急いできたのか、息を切らせながら話しかけて来た。
「はい、魔物は全て退治しましたのでもう大丈夫です」
ラグナが笑顔で応えるとホッと安堵の溜息を洩らす兵士達だったが……
すぐ近くの壁を見ると表情を硬くする。
それもそのはずで、壁には激しく衝突した遺体の臓物がぶちまけられていた。
その遺体の奥にも兵士だと思われる遺体が転がっていた。
「間に合いませんでした……ごめんなさい」
ラグナは兵士達向かって深く頭を下げるが、謝罪された側である兵士達は少し困った顔を浮かべた後に……
「謝らないでいい」
「そうだ、君が謝る必要なんてない」
と言ってくれた。
「我々だって君が駆け付けてくれなかったら、こうしてこの場には立っていなかっただろう。それよりも君はいったい……」
「えっと……」
どう説明したらいいのか悩んでいると、
ガシャガシャ
という金属が擦れる音が聞こえてきた。
その場にいる全員が武器を構えて、音がする方を警戒すると
「無事だったか!!」
と目の前にいる兵士達とは違う装備を纏った集団が現れた。
「助かった……」
その集団を目にした兵士の一人が心の底から安堵した様な声をあげた。
「まさか神殿騎士様達まで来て下さるとは……」
「この様な異常事態に備えるために我々は日々訓練していたのだ。して、そこの君!ちょっとこっちに来たまえ!」
神殿騎士はラグナの姿を見つけると、こちらへ来るように呼ぶ。
「そ、その子は俺達の命の恩人なんです!」
神殿騎士に呼ばれたラグナを守るために声を上げる兵士。
「悪いようにはせぬ。ちょっと話がしたいだけだ」
「それなら……」
俺は声をあげてくれた兵士にありがとうという気持ちを込めて会釈すると、神殿騎士の元へ。
3人の神殿騎士がまるで壁になるようにラグナの姿を隠すと、一番偉そうな神殿騎士がラグナの耳元でこう呟いた。
『使徒様、ご無事の帰還をお待ちしておりました。あの方より伝言です。はやく神殿に来るようにとの事でした』
その発言にラグナは驚き、改めて神殿騎士の顔を確認すると
「貴方は……」
しーっという合図をしながらニコッと笑う神殿騎士。
今、目の前にいる神殿騎士は神殿から賢者リオの身体が保管されている部屋に向かう際に扉を守っていた兵士の一人だった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。