鍛冶神様、ワクワクする。
体調がもどらねぇ……
「それは……」
流石にいくら信頼しているからといっても、キャンプスキルを堂々と二人の前で披露するには気が引ける。
そう悩んでいると、
「こいつとはもう少し二人で話をする。この国の雑事に関してはおまえ達の好きにするがよい。」
「「はっ!」」
鍛冶神様がそう指示すると二人は立て膝を立てながら返事をする。
するとガッデス王がチラッと心配そうにこちらを見るので、大丈夫という意味を込めて俺は頷いた。
ガッデス王とルヴァンさんが去っていくのを見送ると、鍛冶神様はドカッと地面に座る。
そして手招きでラグナを呼ぶと、正面に座るように促してきた。
ラグナは覚悟を決めて地面に正座をするのだった。
目の前に座る鍛冶神様が改めて手をラグナへと差し出してくる。
キャンプスキルを発動し、まずはアルミ製のペグを手渡す。
「ふむ」
鍛冶神様はアルミ製のペグをじっと眺めている。
そして再び手を伸ばして来たので今度はチタン製のペグを召喚し手渡すとそれを眺めていた。
「……初めてみるが……面倒な素材だ」
鍛冶神様はそう言うが、ほのかに口元が緩んでいる。
「ふんっ!!」
鍛冶神様は一気に力を込めると、チタン製のペグを真っ二つに折った。
そして折れたペグをじっと眺めている。
しばらくして軽く舌打ちをし、鍛冶神様は折れたペグを地面の上に置く。
「これを再現するのは手間だな……だが……面白い。お前がいた世界には他の素材もあるのか?」
興味津々に鍛冶神様が尋ねてくる。
ラグナは少し考えた後、ある素材を意識しながらペグを召喚し手渡す。
「これは……ふむ……」
鍛冶神様はスチール製のペグを触るが……
「つまらん。他に素材は?」
どうやらスチールはお気に召さなかったらしい。
ペグ……
他の素材……?
思わず頭に浮かんだペグを召喚し手渡してみるが……
「何だこれは……?」
流石の鍛冶神様も困惑している様子。
それもそのはず。
この世界では再現できないであろう素材だから。
「それは僕がいた世界でプラスチックと呼ばれる素材で作られた物になります。」
「プラスチック?何だそれは?」
「よく知りませんが……石油と呼ばれている燃える液体?から作られていると聞いたことはあります。僕が知っているのはそれくらいしか……」
「燃える液体だと……?」
鍛冶神様は首をひねりながらブツブツと何かを言っている。
「プラスチック……燃える液体か……」
更に何かを考え込む鍛冶神様。
そして、
「他は?他に素材は無いのか?」
他の素材……?
確か……
「僕が知っているのはこれで最後になります。」
そう言って召喚したのはステンレス製のペグ。
板状で無骨でカッコイいなぁと思っていた製品。
「……」
鍛冶神様はステンレスのペグも他の素材と同様に触っていたが……
「これも初めて見る。これまでに出した素材、全て五本ずつ出す事は可能か?」
鍛冶神様の口元がまるでおもちゃを目の前にした子供のように緩んでいる。
ラグナは頷くと、これまで召喚したペグを五本ずつ手渡す。
「今日は良き日だ。感謝する」
と鍛冶神様に言われ、この場を後にするのだった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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