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フォローとは?

「それは本当なのか?兵士をその……バケモノへと改変してしまうというのは……」


「はい。実際に目の前で見ました。その兵士だったバケモノが味方を襲い、喰らっていました……」


「喰らうというのはまさか……」


「想像の通りだと思います。仲間だった兵士に喰らいつきそのままムシャムシャと……」


ラグナの話を聞いていた幹部達の一部は顔を青ざめさせ、口を押さえながら部屋から退出していくのだった。


「なんて惨いことをするのよ……」


エイミーは唇を噛み締めて悔しそうな表情を浮かべる。


「兵士を食べることに夢中になっている兵士だったバケモノに、仲間だった兵士達が一斉に剣を突き刺したのですが……兵士だったバケモノが倒れると同時に一気に魔力が高まり、兵士達を巻き込んで大爆発を起こしました」


思っていた以上に厄介な相手だと理解したアリッサム王は、思わず頭を抱えてしまう


「そんなバケモノが相手ではどうにもならないではないか。息の根を止めたら爆発するなどと……それでミラージュの兵士達は……」


「えぇ……その爆発に巻き込まれてしまいました」


「そうか……いくら敵の兵士だからと言って、あまりにも惨い仕打ちに同情したくなる気持ちもあるな」


「へ、陛下!?」


まさか戦争を行っている相手に対して、自分達の長がその様な感情になるとは思ってもいなく、声を上げてしまう。


「判っている。お前達の中の身内で命を失った者がいることもな。だが、考えてもみよ。我らや我が国の兵士達もその様なバケモノへと改変されてしまう可能性があるのだぞ?」


「それは……」



「それにだ。仮に我が国の兵士や仲間達がバケモノへと改変されてしまった場合、ミラージュの兵士達と同様に仲間殺しをせねばならんのだぞ?命を奪ったとしてもすぐに離脱せねば、爆発に巻き込まれてしまう……だからといってその様に改変されてしまった仲間をその様な姿のまま逃がすわけにもいかぬだろう……」


会議室が静まり返る。


「本来なら人同士で戦っている状況じゃないんでしょうね……」


エイミーさんがそう呟くと、数人の官僚がキッと睨んでくる。


「言いたいことは判っているわ。ミラージュの国が一方的に攻めてきているんだもの。でも……数百年前に姿を消したと言われ、御伽噺の様な話でしか聞いたことが無かった魔族が現れたのよ?そして現に実害も出始めている。そんな状況下で人同士が争っているなんて……初代勇者様達が見たらどう思うのかしらね……?」


落胆するだろうか?


それともこうなることは予想していたのだろうか?


エイミーさんの言葉を聞いて、誰も何も言えなかった。


「で、では続きを。兵士が爆発した後に僕はバケモノの前に姿を現し、戦闘へと突入しました。その時に僕の顔を見るなり恨み辛みを罵倒してきたのでバケモノの正体が判明したんです。そしてその後、バケモノからの攻撃を何とか耐えながら反撃したのですが……その結果、反撃時に発生した大爆発によって僕は意識を失い精霊樹に助けられる結果になりました。」


「あり得ない!!」


ラグナが説明していると、官僚の中の1人であるエルフが声を荒げて反論する。


「あの威力は人間が扱える魔力ではない!どんな禁忌の道具を使ったんだ!」


「魔道具などは使用してませんが……」


「あの魔法の威力は我々エルフですら数人掛かりの魔力が必要だと分析結果から判明しているんだ。それが、こんな子供が。しかも人間が放てる訳ないだろう!!」


「そう言われましても……」


「第一、何故こんな子供が!」


「シーリアス!!いい加減にしないか!この方は我々エルフを救うために動いて下さっておるのだぞ!!」


アリッサム王はシーリアスというエルフに怒鳴るが、


「しかし陛下!!」


「お主は何故わからぬのだ!!普通に考えてもみよ!!あのシーカリオンがただの子供を命懸けの荷運びを頼むと思うのか!!それに移動時間も考えてみよ!!天下のエチゴヤがやっと一往復目の輸送を終え帰るタイミングで、この方はもう二回目の輸送を一人で行っておるのだぞ!!ただの子供でない事ぐらいすぐに判るだろう!!」


「それは……」


シーリアスと呼ばれたエルフはアリッサム王に叱責されると黙り込むしか無かった。


確かに言われた通り、普通の人族の子供がこの速度で移動していることが異常だと理解出来たから。


当の本人はと言えば……


『さっきから何で俺は異常な存在だと罵倒されているんだろう……』


と凹んでいた。


アリッサム王のフォローがフォローになっていなく、ラグナの心に深くダメージを与えていたのだった。





今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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