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僕は、なにも、みていない。

「……さて、と。そういう事で今回だけは何のお咎めも無しだよぉ」


「そういう事って……」


気になる言葉ばかり出てきたんだけど……


「知りたいのかぃ?」


「大丈夫です……」


「そうかぃ。残念だねぇ」


そんなやり取りをしていると先ほどまでピンとしていた精霊樹の根が助かったと安堵したのか、少しだけへにゃっと力を抜いたのをエミア様は見逃さなかった。


再びギュッと力を込めて根を握り、つま先を今までで一番力強くドン!と地面へと打ちつけると、


「赦した訳じゃ無いんだよぉ?何を勘違いしてるんだぃ?」


ドンドンとリズム良くつま先を地面に打ちつける。


再びピンとする精霊樹の根。


そしてエミア様はずっと土下座をしたままガクガクと震えるルテリオ様の元へ。


そしてゆっくり屈むとルテリオ様の頭をガシッと掴む。


一瞬止めなければと思ったものの……


エミア様の雰囲気が一変し、恐怖で身体が動かなくなった。



「次は無いからねぇ?躾は厳しくするんだよぉ?くれぐれも秩序を乱すんじゃないよぉ?」


ルテリオ様は恐怖で全身を震わせながら涙を流し、壊れたロボットの様にコクコクと激しく首を縦に振っていた。


「さて、と。寂しいけど、そろそろ時間だねぇ」


エミア様が指を鳴らすと、辺りに立ち込めていた濃い霧がスゥーっと晴れていく。


「むぎゅっと。」


一瞬本当に寂しそうな表情をしたエミア様は正面からギュッと俺を抱きしめる。


甘い、いい匂いに包まれる。


そしてすっと離れると優しく頭を撫でながら、


「絶対に無理はするんじゃないよぉ?」


と、もの凄く優しい表情で去っていくのだった。


バタン


エミア様が完全に帰られた後、恐怖から解放されたルテリオ様は地面へと力が急に抜けた様に座り込んでしまった。


「ルテリオ様……?」


呆然とした表情のまま座り込んでいるルテリオ様。


目の前に手をかざしても反応が無い。


精霊樹の根もどうしたらいいのか判らないらしく、ワタワタと動いている。


優しく頭を撫でてみると、徐々に目に涙が溜まっていくのが見えた。


そして……


「……怖かった……」


ただその一言をいうと涙が滝のように流れ始めた。


慰めようと手を取り立ち上がらせてあげようとしたその時。


「……。」


俺は何も見てない。


気のせい。


ルテリオ様が座っていた地面が少し濡れている気がするのも気のせい。


服が濡れている様に見えるのも気のせい。


精霊だもん。


気のせいだよ。


精霊神だよ?


神様だよ?


恐怖で涙を流していたルテリオだったがラグナが顔を背けてる事に気がつく。 


そして自身の異変に気がついた。


「あっ……」


気が付いた時にはもう遅かった。


ガタガタと震えていた身体はプルプルと震え始めた。


更に顔は真っ赤になり、恥ずかしさで涙が盛大に溢れてくる。


「うわぁぁぁぁん!もうお嫁にいけない~!!」


泣きながら慌ててその場を逃げるように消え去るルテリオ。


「えっと……」


呆然と立ち尽くすラグナ。


どこから取り出したのかわからないが、精霊樹の根達は雑巾で何故か濡れている地面を掃除し始めた。


ポツンと取り残されたラグナ。


「と、とりあえずここから出して貰えるかな?」 


精霊樹の根にそう話し掛けると、部屋が急上昇していく感覚を感じた。


そしてある程度その状態に耐えているとピタリと止まり、部屋の壁の一部が扉のように開かれた。


「……言いたいことはいろいろあるけど。命を助けてくれた事は本当に助かったよ。ありがとう」


部屋から出る前にエミア様が来るまで腕に巻き付いていた根を触りお礼を伝えると、精霊樹の根達が一斉に横並びに並びまるで頭を下げて謝罪しているような状態になった。


「本当にありがとね」


最後にもう一度感謝を伝えて、部屋の外へと出るのだった。


「ふぅ」


ようやく部屋から出た俺は一息つき、ゆっくり目を開けると……


「……なんで?」


エルフ達が不安げな表情で武器を片手に待ち構えていた。


「どういう事?」


そう呟いた瞬間、慌てて一人の男性が前に出て来た。


「ラ、ラグナ様!?」


前に出てきた男性はエルフの国の王であるアリッサム。


「王様!?なんで??」


お互いに驚いた表情のまま固まる2人。


そんな時、


「あら~?ラグナ様じゃな~い。これはもう運命ね。」


という声と共にまるで砲弾の様な速度でラグナへと迫ってくるオネエサマの姿が視界へと入ってきたのだった。



今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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