バケモノの正体
たき火やる!って先月した日に限って……
何で雨になるんだろうね……
「あのぉ……さっきの奴はまだ生きてると思うので、離れて貰えますか?」
「いやん♪冷たいところも素敵よ?」
「いや、そうじゃなくて……」
「もう照れちゃって可愛いわね!」
ほっぺをツンツンしてくる。
今は何を言ってもダメかもしれない。
「本当に間に合って良かったですよ、エイミーさん。」
そう言うと、ようやく離してくれた。
「あらやだっ。アタシったら。お礼がまだだったわね。本当に助かったわぁ。ありがとっ!」
相変わらず勢いを感じるウィンクがバチコンと飛んできた。
「いえ、本当に間に合って良かったです。ところで、あれは一体何です?それにどうしてエイミーさんがここに?」
さっきの奴は結構遠くまで吹き飛んでいったので、未だに戻って来ない。
「今回は初回って事でアタシも輸送部隊に参加していたんだけど……急に笑い声が聞こえたと思ったら、空からアレが降って来たのよっと、戻って来たわねぇ。」
「あヒャヒャヒャひゃー!!」
ラグナが殴り飛ばしたバケモノは笑い声をあげながら、高速でこちらへと飛翔してきていた。
ラグナは身体に魔力を纏わせて戦闘態勢に入る。
コウモリの様な形の巨大な翼を持ち、全身に縫い目。
顔はピエロの様なマスクが縫い付けられており、素顔を見ることは出来ない。
ラグナが身構えていると、バケモノは空を飛びながら急停止。
「あヒャ?アヒャひゃ?」
ラグナの顔を見ながら首を傾げている。
そして……
「貴様ぁァぁァ!!」
先ほどの狂った様な笑い声から一変。
ラグナに対して指を差しながら怒鳴り散らして来た。
「ゆ、許サん!貴様だケは許さン!!オ前ノせいデ!!」
バケモノは怒りに震えて今にも飛びかかって来そうな様子。
「ま、待て!僕はお前なんて知らないぞ!?」
「嘘ダ嘘ダ嘘だ嘘ダ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」
「ちょっ!?話を聞け!!」
「うるさい!!黙レ!!指図スルな!!」
いきなりバケモノが怒り狂いながら襲ってきた。
「このっ!!」
振り下ろされた腕を掴んで、そのまま背負い投げの要領で地面に叩きつける。
「ガハッ!!」
「誰なんだよ、お前は!!お前なんて知らないぞ!!」
「フザケルナ!!ワたシは貴様とセシルのせいで!!」
セシル……?
「何でここでセシルの名前が……そもそも仮面で顔か隠れてるんだから判るわけないだろ!!」
「ふざけルな!!ふざけルナ!!」
まるで魔族の様な羽を持つバケモノはピエロの仮面へと手を伸ばし……
縫い付けられている糸ごと引きちぎって仮面を外す。
「忘れタとは言わセないゾ!!」
仮面を外した素顔……
顔中が縫い目だらけ……
右目は人間の目だけど、左目は別の生物の目が埋め込まれている。
そして額には大きな宝石?
「えっと……誰?」
原型なんかあまり残っていない素顔を見せられても判るわけない。
「フザけルなコろス!!殺しテヤル!!」
バケモノは激昂しながら攻撃を仕掛けてくる。
ラグナは攻撃を避けながら、反撃のチャンスを伺うが……
「おい、待てよ!!本当にわからないんだよ!!自分の顔を見てみろよ!!」
ラグナは収納から鏡を取り出すと、目の前にいる存在に向かって鏡を見せる。
「はッ??」
鏡に映る自分の顔を見て固まるバケモノ。
「ぼ、ボクの顔ガぁぁァ!!」
バケモノは自分の顔を両手で抑えて絶叫する。
「セシルとオマぇのせイで……ボくは……ボクは……ボくハァァぁァ!!」
そう叫ぶと羽を羽ばたかせながらどこかへと飛んで行ってしまうのだった。
「なんだったんだ……セシルと僕に怨みが……あっ。」
セシルと俺が同じ人物に恨まれるような事をしたっけと考えていると、2人ほど思い浮かぶ人物が……
「さっきのって……セシルの兄貴のどっちかだったのか……?」
確か魔族であるグラムニュートに連れ去られて、セシルの兄貴達は行方不明になっていたハズだけど……
「何とか助かったと言っていいのかしらね?」
そう言いながら、エイミーさんが近づいて来た。
「知り合い?あんなバケモノと。」
「知り合いというか……エイミーさんはヒノハバラの学園に魔族が襲撃してきた件、ご存知ですか?」
「ええ、勿論よぉ。あの事件と何か関係が?」
「はい。あのバケモノは……多分なんですけど……僕の同級生の兄達のどちらかだと思うんです。魔族が襲撃後に撤退する際に同級生の兄達2人が連れ去られたんです。その後は一切手掛かりが無く、行方不明になってました。」
「そんな事が……」
「はい。まさかあんなバケモノになっているなんて……」
あのバケモノは間違いなく、セシルの兄貴達のどっちかで確定だろうな。
魔族であるグラムニュートに連れ去られた後、あんな風に改造でもされたのだろうか……?
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