バレたからには仕方ない。
「ラグナ、この匂いは何かな?お母さんに説明してくれる?」
このスキルはバレないように気をつけなきゃと思ったのにどうやら脇が甘々の隙だらけだったらしいです。
絶賛ピンチで追い込みを掛けられてます。
「この家にこんな香りの香辛料なかったよな?」
両親2人からの圧が凄い……
顔は笑ってるけど眼力がお強いことで。
はぁ……仕方ない。両親だもんね……
「こんな美味しそうな匂いの香辛料どこで見つけたの?まさか勝手に魔の森に入ったりしてないわよね?」
どうやら両親はこっそりと魔の森に入って見つけたんじゃないかと勘違いしてるみたいです。
じゃあさっきの父さんの魔力欠乏症って言葉はもしかしたら魔法を覚えたから魔の森でぶっ放してきたとでも思ったのだろうか?
「魔の森なんて怖くて近寄ってもないよ。」
魔物にあっさり殺されるなんて嫌だから。
ワイルドボアの子供ですらあんなサイズだよ?
「本当に?危ないことなんて本当にしてないわよね?」
無理、本当に無理だから。
改めて2人の顔を見る。
あぁ。2人は本当に危ないことをしていないか心配してくれてるんだ。。
本当にこの2人は最高の両親だよ。
このスキルを隠さなきゃって思って誤魔化そうとしたけど、2人には正直に話そう。
「母さん、ちょっとお皿あるかな?」
「あるけど……もしかして本当にどこかで香辛料見つけたの?それ毒とか入ってない?」
毒って考えが無かった訳じゃないけど……
あまりにも前世で使ってたほ○にしに似てたんだもん。
「この匂いって実はこれなんだ。」
ラグナは皿の上に手をかざす。
「うん?何も出てこないが。」
「それじゃ行くよ。ふぅ……」
深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
まさかこんなにも早くバレるとは思ってなかったから。
「スパイス召喚。」
そう唱えたラグナをキョトンとした目で見る2人。
ラグナは今まで見えていなかったが、手のひらが少し白く発光していた。
「あの光は魔力……」
ミーナが光をみてそう呟く。
そして……
手のひらの下からお皿にキラキラとした何かが流れ落ちていった。
2人の目の前でスパイス召喚したことにラグナは緊張していた。
こんな意味不明な能力。
不気味がったりしないだろうか?
しかし、あまりにも予想外な行動をしたラグナに驚いていた両親は、2人して仲良く口を開けたまま停止していた。
「この匂いの正体はこれなんだ。」
ちょっと多めに出したからか少し頭がクラクラする。
やっぱり何かしらの力を使っているんだろう。
母さんが魔力って呟いてたし。
もしかしたら魔力を使っていたのかも?
ってことは魔力があるならば、頑張れば魔法使いも夢じゃない?
「なぁ、ラグナ。これって言うけど……皿の上に出て来たこれはなんだ?白っぽいのやら赤色をしたのやら黒いのまで。」
「正直な所、なんなんでしょう?」
「お前、こんなヤバい色をしたのを口に入れたのか?大丈夫なやつかこれ?」
まぁ正直な所。
初めてこんな色の香辛料を見て口に入れる勇気なんて無いよね。
たまたま知っていた商品《ほり○し》にそっくりな物が出て来たから口に入れる勇気があったけど。
流石に初見でこれだったら厳しいよね。
「ねぇラグナ。正直に話して欲しいの。どうやってこれを出したの?」
どうやって……
つまりは何でこんなスパイスを知ってるかってことだよね。
未だに両親には転生前の記憶が有るんです!なんて話してないんだよね……
流石に転生前の記憶があるって話をする勇気が出ないよ。
考え込むラグナを見ていたグイドがおもむろに口を開く。
「なぁラグナ。正直に答えて欲しい。」
はぁ……言うしかないのか。
この際仕方ない。
腹を括るか。
父さんと見つめ合う。
「実は…「頭の中で急に声が聞こえたりしなかったか?」」
「へっ?」
前世の記憶があるって話をしようと覚悟したんだけど……
「ラグナ、頭の中で声を聞いたりしなかったかしら?」
頭の中で声ってあれだよな。
スパイスを召喚しますか?ってやつ。
「はい……聞こえました。」
改めて驚く両親。
もう少しでもっと驚く爆弾ぶちまけそうになってたんだけど……
「聞こえたのね。まだ5歳なのに。」
あれ?もしかしたら聞こえた方が問題だった…?
急に父さんがいつもみたいに頭をグシャグシャって撫でてきた。
「まじか、ラグナ!流石俺達の子供だ!」
「本当にラグナって凄いんだから!」
うん?思っていたリアクションと違う。
両親2人とも笑顔で喜んでるし。
「よく判ってないみたいだな?ラグナは5歳にしてスキルに目覚めたんだよ!」
スキル?
このスパイス召喚ってやっぱりスキルだったの?
「10歳くらいで初めてスキルに目覚める子が世間では天才って呼ばれてる位なのに。ラグナったらまだ5歳よ?5歳でスキルに目覚めるなんて、本当に凄いことよ?」
10歳で天才って呼ばれてるのか。
ん?5歳で目覚めたなんて大丈夫なのか?
恐る恐る質問するラグナ。
「母さん。5歳で使えるようになった僕は大丈夫?」
それを聞いて固まる2人。
「大丈夫……ではないわね……あまりにも早すぎるから。うちのアホ領主にバレると面倒な事になるかも。」
アホ領主……不吉な言葉だよ。
「確かにな。バレると面倒なことになりそうだ。最悪ラグナだけ連れて行かれるな。」
5歳児なのに目先の利益に飛びついて両親と離れ離れにするようなイかれた領主か。
そういえばこの2人の本当の子供はアホ領主のせいで残念な結果になったんだっけ……
2人の本当の子供を失ったことを思い出したラグナはとても悲しい気持ちになった。
その悲しむ姿を見て、連れて行かれるかもしれないと悲しくなってると勘違いした両親はラグナを2人で抱きしめた。
「大丈夫だ。俺達2人が守ってやるから!」
うん。がっつり勘違いされたみたいだ。




