神殿騎士と話し合い。
「~ってことで知り合いと食事に行きたいのですが……構いませんか?」
ラグナは神殿騎士の2人の元へと行くとこれまでの経緯をざっと説明していた。
「我々は構いませんが……流石にこの恰好では目立ってしまうので一旦神殿に戻ってもらえると助かります。」
説明時にさらっとあれなら護衛は大丈夫ですのでと遠回しに伝えてみたものの。
あの御方からの特別任務なのでそういう訳にはいきませんときっぱりと断られてしまった。
俺が宿に戻るまでは護衛に就くと引いてくれなかった。
きっとじゃあ宿に戻りますと言ってもある程度の時間までは宿の周囲を警護していそうな気配だったので諦める事に。
「それで、どちらの食事処に行く予定なのですか?」
それが問題だった。
ラグナはこの街に来てから対して散策もしていないので土地勘が全くない。
「どっか適当に見つけて食べようかと思っていたんですけど……お勧めのお店ってあります?」
神殿騎士の2人は目を合わせて頷く。
「ラグナ様は魚とかは平気でしょうか?」
「魚ですか?大好きですよ!」
確かイルマも川魚とかは好んで食べていたから大丈夫なはず。
「我々が休日に通う店でもよろしければ案内いたします。そこの煮魚が絶品なのですよ。」
「それじゃあそのお店に案内してくれると助かります。あっ、今から行っても空いてますかね?」
「あー、そうですね。昼時ですからね。私が先行して話を通しておきますよ。騎士団の連中が通っている店だけあって融通が利くんです。もちろんラグナ様とお知り合い様の席は個室を予約しておきますね。」
「何から何まで申し訳ありません。よろしくお願いします。」
「では、お先に失礼します。」
そういうと騎士の1人が部屋から退出していくのだった。
「それにしても……お噂はいろいろと伺っていましたが、本当に素晴らしい魔力の量ですね。」
「噂ですか?」
神殿での俺の噂ってどんなのだろう?
「数年前に私の知り合いの神殿騎士がラグナ様と旅をしたと聞いていたのですよ。」
神殿騎士と旅?
そしてぼんやりと思い出す。
確か受験の時に王都に向かう際に神殿騎士の人も一緒だったっけ?
「9歳にして恐ろしいほどの才能を持っているとべた褒めしていましたからね。」
「そんな……僕なんて普通の子供と何ら変わりませんよ?」
「話は伺っていますよ。なんでも9歳にしてワイルドボアを討伐したとか。」
「確かに倒しましたけど……本当にあれはたまたまですよ。普通なら死んでますって。」
あの時はサリオラが助けてくれたおかげで生き残れただけだもんな。
「仮にたまたまだとしても凄いですよ。普通の子供ならビビッて動けないでしょうからね。」
その後もひたすら神殿騎士の方に褒められ続けてむずがゆい気持ちになっていた。
流石に褒められ続けるのは恥ずかしいものがある。
コンコン
部屋がノックされる。
「どうぞー」
俺がそういうと部屋に入ってきたのは荷物を持ったイルマだった。
「お待たせしました。本日はよろしくお願いします。」
村では見たことがないお淑やかなイルマの態度に動揺してしまう。
「可愛らしいお嬢さんですね。では参りましょうか。」
「ほら、荷物は僕が持つから。」
僕がイルマの荷物を持とうとすると神殿騎士の方が自分がと言ってくれたが……
「そうすると護衛の任務に支障がでますよね?これくらいなら大丈夫なので気にしないでください。」
「ですが……」
一歩も引いてくれ無さそうなので耳打ちする。
『ここは僕に花を持たせるってことで。』
ラグナにそう言われてハッとする神殿騎士。
確かにここはラグナ様に花を持たせるべきだ。
自分が邪魔をしてどうすると考え直してくれたようだった。
「いいのか?重いよ?」
「大丈夫、鍛えてるから。」
「ではまずは荷物を置きにラグナ様の宿泊している宿へと向かいましょう。そこで荷物を置いている間に私は神殿に戻り着替えて参りますので少しの間ですが宿でお待ちいただけますか?」
「わかりました。よろしくお願いします。」
若干そわそわしているイルマを連れてエチゴヤの宿へ。
「それでは急ぎ着替えて来ますのでしばしの間お待ちください。」
何事もなくエチゴヤの宿へと到着。
「な、なぁ。ほ、本当にこんな所に泊まっているのか?」
流石のイルマもエチゴヤの宿を前にするとガチガチに緊張している様子だった。
「ラグナ様お帰りなさいませ。」
ラグナが一旦宿に戻ってきた事に気が付いた従業員がすぐに駆け付ける。
ちらっと見たが初日にいた護衛の人は居ない様子だった。
「今日だけ1人宿泊者が増えても大丈夫でしょうか?」
ラグナがそういうと従業員の人はちらっとイルマを見る。
そして満面の笑みで何人でも大丈夫ですよ?と言っていたが……
あれは完全に勘違いをしている雰囲気だった。
「では食事の方はいかがしましょう?」
学園長には無事に送り届けると言った手前そこまで遅くなるのはよくないだろうし。
「今日の夕食と明日の朝と昼の食事だけ1人分追加でお願いします。支払いは……」
「そちらに関しては何も問題ありません。本日はもうお部屋にお戻りですか?」
一旦荷物を置きに寄っただけですぐにまた出かけることを伝えると、いつの間にか従業員の方がもう一人増えていてイルマの荷物を部屋に運んでくれることになった。
そしてラグナ達はロビー近くの休憩スペースで神殿騎士が着替えてくるのを待っているのだった。




