学園内のベンチに座る君。
37.5℃以上の発熱がすでに一週間継続中。
頭がボーッとしてます。
コロナはまじでぱねぇ……
『はぁ……なんで学費が振り込まれないんだろうってずっと疑問だったけど。まさか村が壊滅してたなんて……なぁ……』
イルマはぐちゃぐちゃな心を落ち着かせる為に学園の敷地内に設置されている公園のベンチに腰をかけると、ただただ空を見上げていた。
『これからどうすっかなぁ……』
11歳の若さで両親を失う。
そして手元にある資金は本当にあと極僅か。
更に現在いる場所は他国。
『孤児院にでも入れるか……相談してみるしかねぇよなぁ……』
心はぐちゃぐちゃのまま。
自然と涙が溢れてくる。
『私はこれからどうやって生きていけばいいんだよ……父さん、母さん……なんで……死んじゃったんだよ……』
いくら顔を上に向けても、涙が止まらなかった。
その頃、ラグナは
「ではそういう事でお願いします。」
「本当によろしいので?」
「はい。持っててもどうせ使い道は無いですし。それならばアイツの為に。」
「わかりました。こちらで手続きします。今日はこれからご予定はあります?」
「いえ、特には……」
「せっかく商業学園に来たんですもの。あの国の学園との違いを見てほしいわ。」
学園を見てほしいと学園長であるエミリーさんにお願いされたので、学園内を職員に案内してもらいながらイルマを探していた。
ちなみに神殿騎士の2人は見学が終わるまでは待機していますとのこと。
確かに学園内を見学するのに神殿騎士の付き添いがあると目立ってしまうしね。
『……いた。』
最悪、女子寮に向かってもらいイルマと会うしかないのかとも考えていたが……
『やっぱりショックだよな……それに学園でいろいろ大変だったらしいし。』
ベンチに腰掛けて空を見上げているイルマを発見した。
「ちょっとここで待っていて貰えますか?彼女に用がありまして。」
「……わかりました。」
ラグナを案内してくれている職員はラグナとイルマの2人の関係など知らない。
ただただ迷惑が絶対にあってはいけない大事なお客様としか学園長から聞いていなかった。
イルマが金銭的に困窮しているのは事務で仕事をしていたので知っていたので、ラグナの姿を見た時にはパトロンか身請けの下見にでも来た貴族の子供だろうか?と考えていた。
ただそんな子供に神殿騎士が付き添うだろうか?
それに……ただの貴族の子供に対してあの学園長が大事なお客様として対応するだろうか?
考えれば考えるほど、目の前にいる少年の存在や立場が全く判らなかった。
ラグナはイルマの隣に座ると優しく抱き寄せる。
「……間に合わなくて本当にごめん。助けられなかった。」
イルマは首を振る。
「ラグナのせいじゃねぇよ……スタンピードが起きたんだったらどうにもならねぇだろ……それに悲しいのは私だけじゃない。お前だって……両親の行方……わかんねぇんだろ?」
「……うん。村や周囲に遺体は無かった。」
「……無事だといいな。」
「……うん。」
人目を気にせずにラグナは優しくイルマを抱き寄せたまま、頭を撫でていた。
だんだんと冷静になるイルマ。
『わ、私。ラ、ラグナに抱きしめられてる!?み、皆に見られたらどうすんだ!?そ、そうだ!あ、あれ!』
「流石に恥ずかしいんだけど……いくら私でも……」
「ご、ごめん。」
イルマにそう指摘されたラグナはすぐに離れたが……
「私……?」
以前のイルマなら自分の事を『私』なんて呼んで無かった。
「……いろいろ大変だったんだよ、この学園はさ。言葉遣いから振る舞い方まで。貴族との取引でも困らないようにって事らしい。」
「だからか……それにしても……」
ラグナはじーっとイルマを観察する。
「な、なんだよ……」
「昔から可愛い顔だとは思っていたけど、少し大人びて綺麗になったね。」
ラグナは昔からイルマの事を幼なじみではなく、可愛らしい子供だよなぁとまるで保護者の様な目線でイルマを見ていた。
それもそうだろう。
ラグナには前世の記憶があるのだから。
急に綺麗だと言われたイルマは……
「ば、ばかやろう!急に何言ってるんだ!」
赤くなっていた顔が更に真っ赤に燃え上がっていた。
顔を真っ赤にしたイルマを笑いながらラグナは眺めていたが……
この光景をぶち壊す存在が現れたのだった。
「私のイルマ君に何をしているんだ!!すぐに離れろ!!」
息を切らせながら此方へと全力で向かってくる少年の姿が視界に入ってくるのだった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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