イルマと商業学園。
やっと落ち着いてきたと思った例の流行病。
再び暴れる。
今月も更新不安定かもしれません……
「イルマ君、今週中に授業料が支払われないと学園を退学する事になるって先程事務から連絡が来たよ。」
「そうですか……」
「まぁ商売は生き物だからね。せめて家族の無事だけでも祈ろうじゃないか。……でもまぁ、君が受け入れてくれるっていうなら僕がパパにお願いして君の分も払ってあげるよ?ぐふふ……」
イルマは両親より突然振り込まれなくなった授業料に困惑していた。
慌てて両親へと手紙を送ったものの……
一向に振り込まれる気配が無い。
そして先程、学園の事務局から通知が来た。
今週中に授業料が支払われない場合は退学となると……
『何で振り込まれないんだ……?あの村での商売は確実に安泰だったハズ……手紙の返事も来ないし。』
そして本性を隠して猫をかぶっていたイルマは見目麗しい清楚で真面目な少女として学園で生活をしていた。
もしもアオバ村の住人が今のイルマを見たらきっとこう思うだろう。
『お前ダレ?』
それくらいガラッとイメージを変えていた。
「僕は君の為に言っているんだよ?君は成績優秀、それにその美貌。是非とも僕を将来支える妻の1人となって欲しいのだよ。」
先程からニヤニヤとイルマに絡んでいる子供の正体は、シーカリオン内でここ数年急成長を遂げているとある商会の跡取りであるサッシュという名の少年だった。
『何が僕を将来支える妻だ。下心丸見えなんだよ、クソが!』
イルマは内心荒れていたが何とか平然を装っていた。
「まぁ、突然の事で決心はつかないだろうけどね。いい返事を待ってるよ。」
イルマの肩をトントンと叩くとサッシュは大笑いしながら去っていくのだった。
そして数日。
イルマはあれやこれやと手を尽くしてはみたものの……
所詮は11歳の子供。
どうすることも出来なかった。
「後1日か……」
朝、女子寮で目を覚ましたイルマはぼーっとしていた。
明日中に授業料を振り込まなければ学園から退学。
つまり女子寮からも追い出される事になる。
そして……
ヒノハバラに帰るお金も無い。
このままでは本当に最悪な結果が見えていた。
『とりあえず今のうちに飯だけでも食っておかなきゃな……』
学園にいる間は三食きちんと食事が無料で出される事にイルマは心から感謝していた。
気分は最悪だが食堂に向かうイルマ。
そして1人で席に座る。
以前はイルマが座ると同席の奪い合いが起きていたが……
金が無くて授業料が払えないらしいと噂が一気に広まると、友達と思っていた仲間もすぅーっと離れていった。
そして今週に入り、毎日絡んでくる少年。
「そろそろ決めたかな?僕だって忙しい身なんだ。はやく返事が欲しいものだよ。」
僕の物になれと絡んでくる少年。
イルマは心を無にして食事をしていたが。
サッシュはイルマの態度に対して我慢の限界だった。
ガシャーン。
食堂に広がる音。
サッシュはイルマの落ち着いた態度に我慢出来なくなり、イルマの食器を手で吹き飛ばしてしまった。
食堂はシーンと静まりかえる。
「いい加減、強がるのを辞めないか!もう明日だぞ?僕の物になればまだ学園に通えるというのに何故ウンと首を振らないんだ!」
サッシュは自身が食堂にいる生徒から注目されているのも気にせずに大声で叫ぶ。
「僕の妻の1人になれるんだぞ??何が不満なんだ!えっ?なんだその目は!!」
流石のイルマも食事をぶちまけられて大人しくしているなんて出来なかった。
椅子を吹き飛ばしながら勢い良く立ち上がり、サッシュをシメようとする寸前。
「何の騒ぎかしら?これは。」
食堂に突如現れた人間の姿をみた生徒達に緊張が走る。
「が、学園長……」
シーカリオン商業学園のトップ。
学園の生徒達から恐れられている学園長が何故かこの食堂に姿を現した。
「私の質問聞いていたかしら?何の騒ぎかしら?」
恐怖に固まるサッシュとイルマ。
「オイ、お前。何があったのか説明しろ。」
質問に一向に返事が無い事に苛立った学園長は先程までの優しい女性口調から一変、ドスの効いた強面の声へと変化した。
学園長に指名された生徒の1人が恐怖に怯えながらも学園長からの質問に答えていく。
「イ、イルマさんが食事をしていた所にサッシュが現れまして……学園長が把握しているかは知りませんが……その……イルマさんが学費を払えないならサッシュが替わりに払うと……そのかわりに……その……妻になれと……」
「で……?」
「えっと……サッシュの事を無視してイルマさんは食事をしていたのですが……その態度が気に入らなかったみたいで……サッシュがイルマさんの朝食の食器を吹き飛ばして……」
「朝食を吹き飛ばしただと……?」
「ヒィッ。」
朝食を吹き飛ばしたと聞いた学園長からの怒りのオーラは凄まじかった。
「おまえら!商人の見習いの癖に食事を無駄にするとは何事だ!!その意味も理解出来ねぇのか!」
食堂に広がるドスの聞いた学園長の声だけが響くのだった。
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