2日目は。
6月17日で1年が経過。
読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
2日目。
今朝の朝食は……
もう語ることはあるまい……
女将さんにあと追加で2泊する事を伝えた。
もちろん食事無しで……
初めてこの街に来たので、いろいろな所で食事してみたいとそれらしい理由を添えて。
「さてと……とりあえず公爵家の家とやらを見に行ってみるか。」
場所はすでにタチアナさんから聞いている。
むしろ馬車を降りた時にチラッと見えていた。
ヨハネスのメイン通り。
その最終地点がヨハム公爵が住むとされる屋敷。
メイン通りにある商店をぶらぶらと覗きながら歩いていく。
『どの店も品質の割に高く感じる。これならエチゴヤで取り扱ってる商品の方が質が高く値段が安いよな。』
そしていよいよ公爵家の屋敷の近くへ。
『あらためてみてもこれは流石に……』
目の前にあるのはいろいろと縮小されてはいるものの、どう見ても小さい王城にしか見えない。
辺境を守る領主の館とはとても思えないほど優雅な作りをしていた。
更に警備の為の兵士があちらこちらに配置されている。
『これじゃあ、守るための城じゃなくて魅せる為の城だよな。』
防備が弱いのを補う為なのか、巡回する兵士の数が本当に多い。
あまりにも警備員が多いのでかなり遠くから眺めるだけで終わりにする。
そろそろお昼時。
再び昨日の串焼き屋さんへ。
「こんにちは~」
「おぅ、こんにちは。嬢ちゃん、今日も1人か?」
「うん、今日ものんびりとふらふらしてるんですよ。」
「昨日、嬢ちゃんくらいの女の子が追いかけられてたって話を聞いて俺は心配したぞ。嬢ちゃんは大丈夫だったか?」
どうやらラグナが暴漢達に追われていた姿を街の住人は見ていたらしい。
『なら助けるなり、衛兵に通報するなりしてくれればいいのに。』
「大丈夫です。何も無かったですよ?でもこの街はそういう事が多いんですか?」
「俺がまだ本当に小さい頃はそんな事無かったんだけどなぁ。ここだけの話だ……」
店主のオジサンが顔を近付けてきてこっそり話し始める。
「……ヨハム公爵が領主になってから街の雰囲気は一気に変わっちまったんだ。」
ヨハム公爵が領主になってからまず始めたのが新しい領主の館の建設。
大量の魔法師と大工が集められて、短期間であの王城モドキは作られたらしい。
そして新しい領主の館を作るために必ず必要な物。
それはお金。
他領とは比べられないほどの大増税がある日突然決まった。
あまりにも急な増税に反発する住人や商人達。
そしてそれは武力衝突へと発展すると思われていた。
しかし……
戦いはすぐに終了する。
反発した住人や商人達は……
見るも無惨な死を遂げた。
魔法師団による反乱軍殲滅作戦。
一般市民、女、子供関係無く反発した住人は捕まえられ、魔法師団によって『処理』された。
「そんなんじゃ皆逃げちゃうんじゃないの?」
「それがな、逃げようにも既に逃げられなかったのさ。」
住民達はいとも簡単に同じ街に住む人間が処理された事に恐怖し、街からの脱出をしようとしたがすでに時遅し。
街からの脱出経路はすでに厳しく監視されていた。
そして公爵より発表された新たな決まり。
『他の街に移住を希望する際は転出税を払うこと。』
転出希望者によって税金は前後するものの大体年収の3~4倍。
商人や職人などに至ってはさらに厳しい金額が設定されていた。
「そんな事が……でも、そんな状態でみんなは生活とか大丈夫なの?」
「まぁ、一応な……この街はシーカリオンと接しているおかげで、街の外からの人の出入りが多いんだ。そのおかげで何とかなっているのさ。」
人の出入りが多いので多少品物が高かろうが売れるらしい。
そのおかげでこの街に住んでいる住人達は他の街より稼ぎはあるものの、税金と物価高のせいで手元に残るお金は他の街とたいして変わらないとの事だった。
「嬢ちゃんの親御さんにも伝えておきな。あんまり長居する街じゃねぇからなって。」
「うん、ありがとう。おじさん、話をしてくれたお礼にあと3本よろしく!」
「いいのか?んじゃ、すぐに3本焼くから待ってろ!」
串焼き屋の店主から串焼き3本を受け取ると別れを告げて再びあの公園へ。
『さすがに2日連続追い掛けられる事はないでしょ。住人達にも昨日見られているんだし。』
手に持ってた串焼き3本のうち2本はこっそりと収納してベンチへと座る。
『最初は公爵家に嫌がらせをしてから立ち去ろうとしたけど、あんまりにもやり過ぎるとこの街の人達に迷惑がかかりそうだよな……』
こっそり忍び込んで金庫的な場所からごっそりと金貨などを奪ってやろうかとも考えていたが……
話を聞く限り、そんな事をしたらまた税金を上げて市民達から再び巻き上げようとするに決まってる。
『どうするかな……』
ラグナがベンチに座って考え込んでいると、再び奴らが現れた。
「おい、いたぞ!昨日の女だ!急げ!」
昨日と全く同じ場所で再び逃走劇が始まるのだった。
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