アースドラゴンとの衝突。
ラグナがアースドラゴンの元へと到着する頃にはすでに戦闘が始まっていた。
「「水よ、敵を吹き飛ばす球となれ、ウォーターボール」」
魔法師達はウォーターボールを発動させるアースドラゴンへと発射する。
ぺちゃっ。
あまりにも巨大なアースドラゴンには全く効果が無いのか気にせずに魔物を咥えると咀嚼していた。
「くそっ!デカすぎるんだよ!!」
騎士達に至っては近寄ることすら出来ない。
近寄った所で踏みつぶされて終わるだけ。
アースドラゴンが歩く度に激しい地響きが起きてふらついてしまい、まともに攻撃なんて出来ない。
「どうしたら……」
魔法師も騎士達もどう対応するべきか必死に頭を回転させていると、突如後方より『クソドラゴン!!』と叫ぶ怒号が聞こえビクッと身体が反応してしまう。
しかし流石、現役の軍人。
決してアースドラゴンからは目を離すことは無かった。
怒号を放ったであろう人物が後方より見たこともないほど高速で動きながら軍人達の目の前を通過していく。
「「子供だと!?」」
高速でアースドラゴンに突っ込んでいった子供は更に全員を驚かせる。
「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!!」
ドラゴンの鼻先に炎が出現し圧縮。
大爆発が起きた。
「グギャァァ!」
まさかの魔法に驚く軍人達。
「爆炎魔法だと!?まさかあの子供がパスカリーノ家の噂の新当主か!?」
魔法師団では既に噂は広がっていた。
フィオナ・パスカリーノは殉職したが、どうやら弟子が居たらしい。
その弟子がパスカリーノ家を引き継ぐと。
鼻先に爆炎魔法を受けたアースドラゴンは怯んで倒れ込む。
『ガストーチソード!!』
ラグナはガストーチソードを発動させると倒れたアースドラゴンの顔めがけて振りかざす。
「ジュッ。」
今までとは全く違う手応えにラグナは驚く。
どんな相手だろうと溶断出来てきたガストーチソードだったが、目の前にいるアースドラゴンに対しては皮膚に焦げたような後が付くだけだった。
そしてラグナはアースドラゴンと目があったことに気がつく。
『マズい!!』
全力で魔力障壁を張るラグナに対してアースドラゴンは巨大な顔を鞭のようにラグナへと叩きつける。
「くぅぅぅーー!!」
次々と魔力障壁がいとも簡単に破壊されて、吹き飛ばされた。
「おっと!!」
ふきとばされたラグナは地面へと叩きつけられる前にイアンが空中で受け止めてくれた。
「もっと慎重にいかないか!!」
流石のイアンも今の光景には冷や汗が一気に吹き出した。
「普通の魔法師なら今ので終わりだぞ!」
「ごめんなさい。まさか斬れない事があるなんて……」
魔族ですら斬ることが出来たガストーチソードが全く意味を成さなかった。
どうするべきか……
アースドラゴンはラグナを警戒しながらも堂々とした態度で食事を再開する。
ラグナが少しでも動こうとすると顔や尻尾を使い威嚇してくるが学園長や兵士が動く分には全く気にする素振りも無い。
そうこうしている内に大臣2人が現場へと到着。
「さ、流石にデカいねぇ。」
流石に一瞬狼狽えるものの、すぐに平常心を取り戻すと部隊の再編成を行った。
魔法師、騎士達はアースドラゴンから逃げるようにナルタへと接近する魔物の討伐。
大臣2人はラグナ達と共にドラゴン討伐戦に挑むことになった。
「大事な御身である2人が、なにも戦わなくても……」
イアンは2人に下がるように伝えるが、
「この国の大臣だからこそ、国を守るために最前線で戦うんじゃないか。」
と言われてしまい、何も言えなくなってしまった。
ラグナが動こうとするとアースドラゴンは過剰に反応するが、残りのメンバーが動く分には対して気にしない様子。
大臣2人はラグナの後方に。
イアンは空からアースドラゴンを観察していた。
『思っているよりも傷はあるな。ペッツォ領の領軍が粘ったのか?』
所々に矢が刺さったままだったり、剣による切り傷があったり。
イアンは大臣の元に戻るとアースドラゴンが負傷していることを報告する。
「えっ?あいつを切った人間が居るんですか?それに矢まで……」
ラグナがガストーチソードで挑んだ時は焦げたような後がついただけだった。
『つまり炎に対して耐性があったから?』
収納に剣は入っているけど……
しばらくアースドラゴンの食事風景をただただ眺めていると、突如後方より集団の足音が聞こえてきた。
そして……
「放てぇぇ!!」
様々な魔法がアースドラゴンへと降り注ぐ。
ラグナや大臣がまだ近くにいるというのに……
「グルァァァァァァ!」
食事を邪魔されたアースドラゴンは怒りの咆哮をあげる。
「ぐっ……」
ラグナ達4人は慌てて後方へと下がる。
「大臣ともあろうお方が前線に居るとは思いませんでしたのでなぁ。失礼しました。」
演技ったらしくそう言い放ったのは老齢の魔法師。
「あれは第一魔法師団団長のトアレフだ……気をつけろ。」
学園長が小さい声でこっそりと教えてくれた。
「私達がいるのに見えなかったと。老師、ボケが始まっているのでは?引退してそろそろ余生を楽しんだ方がよろしいかと。」
第一魔法師団団長が言い放った嫌みに対してビリーさんは嫌みで返答する。
「ぐっ……ま、まぁいい。あとは我々『栄誉ある第一魔法師団』に任せたまえ。」
増援として現れたのはよりにもよって、学園長やフィオナ先生と揉めてばかりだったと言う第一魔法師団だった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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