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商業ギルドと震える手。

寒すぎてたき火で遊ぶ気にもなれない……




王都に帰宅した次の日。


さっそく朝から行動を開始する。


「まずは商業ギルドに行って話を聞きに行かないとな。」


学園で外出許可の手続きを済ませ、商業ギルドへ。


「これは俺のだ!」


「どけっ!さっそく仕入れに行かなければ!」


「ほぅ、この特許のレシピは面白いな。うちの店でも出してみるか。」


朝一番の商業ギルドは商人でごった返しており、とてもじゃないが俺が並んで受付の人と話せるような雰囲気じゃなかった。


仕方がないので商業ギルド内に併設されているレストランで果実水とグーナパンを注文して商人達を眺めながら朝食を取る。


しばらく眺めながら食事をしていると商業ギルドの制服を着たお姉さんが側にやってきた。


「お待たせして申し訳ありません。奥で代表がお待ちです。こちらへどうぞ。」


そう耳打ちするといつも通り商業ギルド奥にある個室へと案内された。


「失礼します。ラグナ様をお連れしました。」


「おう、ご苦労さん。久々だな、ラグナ。いろいろと巻き込まれているみたいだな。」


個室で俺のことを待っていたのはヒノハバラ王都統括ギルド長のアムルさんだった。


「お久しぶりです。好きで巻き込まれているんじゃないですよ……」


「まぁ、そうだろうな。まさかお前がパスカリーノになるとはさすがの俺も予想出来なかったわ。あぁ、そうだ。新しい紅茶のレシピについて連絡を取りたかったんだ。遅くなったがあのレシピについて正式にメイドギルドがレシピを買い取りたいとの事だ。詳しいことは聞いていないが、一流の技術を持つメイドの一部にのみこのレシピを伝えるらしい。よって、このミルクティーを楽しむことが出来る貴族はごく一部。上級貴族には大変喜ばれるだろうな。ほんの一握りの選ばれた人間しか知らない紅茶。貴族連中の好きそうな話じゃないか。まぁそのうち作り方は広まっては行くだろうがな。どうする?」


どうすると言われてもなぁ。あんなのすぐに広まりそうだし。


「特に考えて無かったのでメイドギルドで買い取って頂けるならそれでお願いします。」


「わかった。ちなみに売却に関して希望金額とかはあるか?」


「い、いえ。考えてもいなかったので……」


「そうか。メイドギルドからはいずれ広まってしまうだろうからそこまでの高額な金額は出せないと掲示された金額はこれだ。」


アムルさんから用紙を手渡されて金額を確認する。


その金額を見た俺は一時的に思考が停止する。


『希望金額 大金貨5枚 』


『まじか……たかがミルクティーのレシピに5000万もの値段が付くのかよ……』


「向こうからはこれが上限だとの事だ。まぁ妥当な金額だと思うぞ。」


「そ、それでお願いします。」


あまりにも想像していなかった金額に手が少し震えるが、なんとか契約のサインをする。


ちなみにミルクティーのレシピについてミーシャさんが作るのは問題ないが、他のメイドには広めないで欲しいと書かれていた。


「僕としてはこんなに高額な金額で買い取って頂けるのは嬉しいのですがメイドギルドから見て大金貨5枚の価値はあるのですか?」


「あぁ。確実に元は取れるだろう。美味い紅茶。誰も知らないレシピ。作り方を知りたがる上級貴族はいるだろう。大金を積んででもな。それだけ『誰も知らない紅茶』って所が大事なんだ。それだけで貴族共からしたら自分の武器になるんだよ。」


「貴族ってやっぱり怖いですね……たかが紅茶に……」


そう言うとアムルさんに突っ込まれる。


「おいおい、何言ってんだ。お前だって男爵様だろうがよ。」


「あっ……僕は本当に名前だけなので……」


「まったく。はやく慣れないと苦労するぞ。特にこの国ではな。」


「出来れば断りたかったですよ……そうだ、預金残高を知りたいんですけど今見れますか?この後買い物に行きたくて。」


「預金額かちょっと待ってろ。」


まさかのアムルさんが俺のギルドカードを手に取るとぱぱっと魔道具を起動してプリントしてくれた。


「ほらよ。俺は見てないから安心しろ。」


手渡された羊皮紙を見て俺は再び思考が停止することになった。



名前 ラグナ・パスカリーノ


出身 アオバ村


所属 ヒノハバラ王国、商業の女神マリオン


特許数 2


預金残高 

 

 ミスリル大銀貨 3

  ミスリル銀貨 6

     大金貨 9

      金貨 8

     大銀貨 9

      銀貨 4

     大銅貨 3

      銅貨 8

      鉄貨 3



「……はっ?」


あまりにも意味不明な金額に驚き羊皮紙をそのまま落としてしまう。


アムルさんが拾ってくれて再び手渡してきた。


「そんなに驚く金額だったのか?」


アムルさんの問いにただただ頷く事しか出来ない。


思わずアムルさんに見せるように手渡してしまう。


「これは間違いなんて事は……」


だって金額がおかしいし。


こんなに持っているわけないし。


アムルさんはチラッと金額を確認すると再び俺に手渡す。


「まぁその年齢でこの金額は驚くかもしれんが、金額は当然だと思うぞ。何せお前がパスカリーノ家の遺産受取人なんだからな。フィオナ・パスカリーノが生前稼いできた分も、その前の当主が稼いできた分も含まれたらそのくらいにはなるだろう。それにお前が男爵家を引き継いだ祝い金も含まれてるんじゃないか?おまえのレシピで稼いだ分だって入っているし。」


いったいパスカリーノ家はいくら稼いできたんだよ!


こんだけ持っているなら屋敷の家具とか処分する必要ないじゃん……


とりあえずお金についてはフィリスと相談しよう……


「……ちょっと1人で考えたいので今日は買い物しないで帰ります。」


「お、おう。気をつけて帰れよ。」


椅子から立ち上がり部屋を出ようとした時にアムルさんに肩を掴まれた。


そして耳元でこう囁かれた。


「誰もいない1人の時にこれを読め。その後はすぐに燃やせ。わかったな?」


アムルさんから差出人が無記名の手紙を手渡される。


あまりにも真剣な表情のアムルさんに一言『わかりました。』とだけ返事をしてポケットにしまうフリをして収納する。


商業ギルドを後にするとまずはフィリスの家へ。


コンコン。


『流石にもうお昼前だし起きてるよな?』


ノックをしてすぐに部屋の主であるフィリスが寝間着のまま出てきた。


「ふぁ~。おはよう。どうした、こんな朝から?」


あくびをしながらフィリスが出迎えてくれた。


いや、その前に。


「もう朝なんてとっくに過ぎてますよ。もう昼前です。まったく……こんなんで学園が始まったら起きられるんですか?」


そう言うとフィリスは顔を背けながら余裕だと呟きながら部屋へと招き入れてくれた。


「それで今日はどうした?ずっと一緒にいたから離れて寂しくでもなったか?」


「うん……やっぱりフィリスが側にいないと寂しくて……ちょっと抱きしめてもいいかな?」


フィリスがニヤニヤと笑いながら仕掛けてきたので盛大に反撃を行う。


すると一気にフィリスの顔が赤く沸騰。そしてコクンと頷いてきたので優しく抱きしめる。


『なに、この可愛い生き物。本当に同じ人物には見えないんだけど。』


本当に寝起きだったのか暖かい温もりを感じながら本題を伝える。


「フィリスと話し合いたい事があるんだ。」


「な、何だ。何でも言ってみろ。」


ちょっと緊張気味にフィリスがそう言うので羊皮紙を取り出しフィリスに手渡す。


するとフィリスは急に動揺し始めて羊皮紙を床に落とした。


「き、急にこんなものを手渡されても……心の準備と言うものが……それにまだお前の年齢だって……」


どうやらフィリスは盛大に勘違いをしているらしい。


更にイジってみたい気持ちをどうにか抑えつけて用件を伝える。


「フィリスから受け継いだこれ、どうしたらいい?」


「うん?どうしたらいいってなんだ?」


改めて羊皮紙をフィリスに手渡すとフィリスは恐る恐る羊皮紙を覗き込み、そしてぷるぷると震えた後に羊皮紙を床に叩きつけた。


「おまえ私を騙したな!!」


「違う!違うから!勝手にフィリスが何かと勘違いしたんでしょ!何と勘違いしてたの!」


そう言うと怒りのボルテージが急上昇していたフィリスは急に挙動不審になる。


「な、何だと……それはその……何でもいいだろう!」


勝手に勘違いしたのはフィリスでしょうが。


「それで、こんな大金どうすればいいの?フィリスに返すよ?」


そう伝えるとフィリスは首を振る。


「パスカリーノ家の当主はお前なんだから私に渡す必要は無いぞ。」


「でも……フィリスの稼いできたお金だよ?」


「それはフィオナが稼いできたお金であって私ではない。それにお金ならアブリック家から貰っているからな。」


「でも……」


「もうパスカリーノ家の当主はお前なんだ、気にすることは無い。それにだ……も、もしかしたら将来誰かと結婚した時に必要になるかもしれないだろ?」


「そ、そうだね。結婚……結婚か。」


このまま行けばフィリスと結婚するんだろうか?


その前に婚約するのだろうか。


でも成人になる4年後には魔王が降臨しちゃうんだよな……


魔王が降臨なんてしたら結婚どころじゃなくなりそうだよね……


サリオラとも定期的に話をしてるけど今の俺では魔王に対して全く太刀打ち出来ないって言われてるからな……


もっと学んで強くならなきゃ。


これからの人生楽しむためにも。



今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や、

☆☆☆☆☆を★★★★★に評価して頂けるとたき火の火を眺めながら涙が出るかもしれません。

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