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知らない天井だ。

「知らない天井だ。」


真面目に見たことが無い場所だ。


ここはどこだろう……?


身体を起こして周囲を見回そうとするが、思うように力が入らない。


しばらくの間、動こうともがいてみたが……動かそうとした場所の筋肉がプルプルと震えるだけ。


コンコン。


部屋の扉がノックされた音がする。


まぁ見えないんだけど……


「……入るぞ。」


聞いたことがあるような、ないような曖昧な感じの声の人が部屋に入ってきた。


そして近寄る人の気配。


「……まだ目が覚めないのか?」


小さな手が横から伸びてきて俺の頭を撫でる。


「起きてるよ。君は誰?ごめんね、ちょっと身体が上手く動かないんだ。だから横を向かせてもらえるかな?」


「ラグナ、目が覚めたのか!?」


顔をやや強引に横に動かされた。


目の前にいるのは知らない女の子。


「えっ?どなた?」


「どなただと?私が判らないのか?」


改めてよく見ると、どこか見たことがあるような無いような……


失礼だが思わず胸にチラッと目が向いてしまう。


『同じ歳』くらいの女の子でこのサイズの持ち主は見たことが……


「どこを見てるんだ!全く。」


この胸を隠すように腕を組んだ体勢はあれだな。


フィオナ先生に似て……


目の前にいる女の子をよく観察する。


このお胸様。


パッチリ二重。


スラッとしたルックスに特徴のある赤い髪の毛。


そして強気な目つき。


まさか……


いや、まさか……


1人だけ該当する女性を俺は知っている。


だけどその女性は俺よりずっと年上の女性だったはず……


「気のせいかな………?フィオナ先生が子供になった……?いや、これは夢だ。もう一度寝よう。」


だって先生が子供になったとか意味わかんないし。


もはや夢じゃん。


考えるのを止めて目を閉じる。


「起きろバカ者!夢じゃないわ!」


そう言って頭を叩かれる。


「イタッ!!」


頭を叩かれ、痛みが走る。


痛み……?


「えっ?夢じゃない……?」


「夢な訳あるか!本当に、本当に心配掛けやがって!」


そう言ってフィオナ先生?らしき?女の子は目に涙をためると俺に抱きついてきた。


泣きじゃくる女の子を落ち着かせようにも、身体が上手く動かないからどうにも出来ない。


わんわん泣きじゃくる女の子の声に気が付いたのか、看護師が慌てて部屋に入ってくるとフィオナ先生を引き剥がして座らせる。


そして医者?を呼びに行った。


「これは?」


「痛いです。」


「ここは?」


「くすぐったいです。」


「手をグーに出来るかな?」


「指は微かに動くんですけど力が上手く入りません。」


お医者さんが深いため息を吐く。


「やはり体内の魔力回路がズタボロだからだろうな。自然治癒に任せるほかあるまい。」


魔力回路?


自然治癒?


何のことだ?


「一つ聞きたい。倒れる前に身体強化魔法を使用したりしなかったかね?」


倒れる前に身体強化魔法?


つまり俺はあの後倒れたのか。


「使いましたけど……身体が動かないのはそれが原因ですか?」


「原因はそれだろう。よく新入りの騎士が身体強化魔法を習い始めた時に無理に魔力を流した時に起こる症状と似ておる。まぁしかしこんなにも重傷は初めてだ。ここまでボロボロになるにはどれだけ膨大な魔力を流したのやら……」


確かにあんなにも膨大か魔力を身体中に流したことは無いけど……


例えるなら小さいストローを挿す飲み口の穴に大きいストローを無理やりねじ込んで突き刺した用な感覚だった。


「それでここはどこですか?」


ここは本当にどこだろう?


全く見覚えがない。


「ここは王都の軍機密病院だ。詳しい場所は言えんがね。」


だから換気用の小さな窓がちょこんとあるだけなのか。


室内からは外がほとんど全く見えない。


「軍の病院ですか……ちなみにあれからどれくらい時間が経過したのですか?」


「あの事件からは3日が経過しておる。それじゃあ私は戻るからな。魔力回路がボロボロなのだ。魔法は絶対に使ってはならんぞ。」


「わかりました。ゆっくり休みます。」


部屋を退出する前に更に念を押して魔法禁止を通達された。


……


何かしたわけじゃないけど……


なんか気まずい。


いろいろ聞きたいんだけど、聞いてもいいのかどうか……


チラッと先生?らしき人を見ると目が合う。


「あー、なんだ。なんか飲むか?」


確かに喉乾いたしお腹も空いてきたかも。


「出来ればお水が欲しいです。」


そう言うと先生は病室内にあったピッチャーを手に取るとコップに水を注ぐ。


「ほら、飲め。」


コップを手渡そうとしてくる……


「ごめんなさい、全く動けなくて……」


コップを受け取ることすら出来ない……


あれ……?


これもしかして……


もしかしなくてもヤバい。


治るまでどう生活すればいいんだ!?


「仕方ない。飲ませてやるから口開けろ。」


口を開けて水を飲ませてもらう。


「どうかしたか?なんか顔色が悪いが……体調でも悪くなってきたか?」


心配そうに顔を覗いてくる。


「い、いや。何でもないです。」


「何でもないわけあるか!ちゃんと正直に言え。言っておくが遠慮なんてしたら許さんからな。」


身体が小さくなっても先生は先生だった。


「いや、治るまで自分で水を飲むこともご飯食べることも出来ないって思っちゃって……」


ふふっと先生は笑う。


「そんなこといちいち気にするな。私が介助するから安心しろ。」


えっ……?


「何を驚いているんだ?当たり前だろ。お、お前がこうなったのは、私をま、守ろうとして無理したからだろ。遠慮するな!」


おおぅ。


顔を真っ赤にしながら話をする子供の姿の先生……


可愛いな!


「でも……なんで私を助けたんだ?一歩間違えばお前も死んでたんだぞ?」


「何でと言われても……このままだと先生が殺されるって思ったら身体が勝手に動いちゃったんで……」


「そ、そうか……」


フィオナはフィオナで恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。


『あんな状況下で身体が勝手に動いたからって助けてくれたのか。誰かに守られるってのも……悪くないな。それに、こんな身体になったのも何かの縁なんだろう。これからどうなるかは全く分からんが、私は決めたぞ。』


フィオナはラグナの知らぬうちに何やら覚悟を決めていた。


コンコン。


「失礼するよ。」


見たこともない軍服の男性の数人がが部屋に入ってきた。


するとフィオナ先生がビシッと敬礼している。


「フィオナ君はもう軍属では無いんだ、そこまでしなくてもいいよ。」


「了解しました、『閣下』。」


えっ!?


閣下!?


「ラグナ君は初めましてだね。目を覚ましたと報告が来たから直ぐに来てみたけど。体調はどうかな?」


閣下と呼ばれた男性に質問されたので答えようとした時。


ゴンゴン。


「入るぞ。」


力強いノックと共に頭には包帯、他にも怪我をしているのか松葉杖をつきながらガタイのいい男性が部屋に入ってくる。


「君たちは下がってていいよ。」


最初に部屋に入ってきた男性の護衛?の人達が部屋から退出していく。


フィオナ先生がガチガチに緊張してるけど……


この2人はいったい誰だ?


でもこの声はどこかで聞いたことがある気がする。


「悪いな、急に来て。先ずは娘が世話になった。お前が動かなかったら殺されていた可能性もあったらしいからな。」


娘?


誰のこと?


「それは私達自身もですよ。彼が動かなければどこまで被害が広がっていたか……考えるとゾッとしますよ。」


「い、いや。身体が勝手に動いたので……」


その前に明らかにこの偉そうな2人はいったい……


「閣下、ラグナはお二方が誰だかわかっていないご様子で。」


フィオナ先生が俺の気持ちを代弁してくれた。


「あぁ、それはそうだよね。失礼した。私はこの国で戦略魔法大臣の職に就いているビリー・アブリックだ。後は君のクラスメイトであるルーとテオの父親でもある。よろしくね。」


どこかで聞いたことがある声と思っていたら貴賓室にいた人だ。


ってルーとテオのお父さんは大臣!?


「俺は軍務大臣のマルク・ラヴァンだ。セシルの父でもある。」


嘘だろ……


セシルのお父さんも大臣だったのかよ……


先生に肘で突かれたのでハッとする。


「ラグナです。この様な体勢で申し訳ありません。」


全く身体が動かないんです。


「そこまで緊張しなくて大丈夫だよ。医師からは全く身体が動かせないと聞いているからね。」


「気にしなくていい。本来であれば表彰されるべき行いの結果だったのだからな。」


大臣の2人から事件について説明を受けることになった。



今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

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