入学試験の開始
あれから3日が経過した。
襲撃については詳しく聞くことが出来なかった。
サイさんから教えてもらえたのはエチゴヤに恨みを持つ貴族から暗殺者を派遣されたとのこと。
何故俺が襲われたのかは、未だに不明。
襲撃者がどうなったのかは聞いてない。
まぁある程度は予想出来るしね。
そして今日は運命の入学試験。
ヒノ魔法学園の入学試験の方法は2通り。
・筆記試験と実技試験を行う一般試験。
・一芸に秀でた魔法を披露する特別試験。
最初は一般試験を受ける予定だった。
でもエチゴヤと神殿からの推薦状のおかげで特別試験でも余裕で合格だろうとなり特別試験で受けることに。
なんか権力を振りかざしてるみたいで気が引けるんだけどね……
「それじゃあ2人とも頑張って来るんだよ!。」
「「はい!」」
俺とミレーヌさんを乗せた馬車は魔法学園へと向かった。
「流石に緊張してきました。ラグナ君は平気そうですね?」
「僕?そう言えばそうだね。最近いろいろ有りすぎたからかな?」
「そうですよね。本当にラグナ君いろいろ体験してますものね。」
確かにこの一年がいろいろと濃い日々だったなぁ。
まさかワイルドボアと一騎打ちするなんて思っても居なかったし。
それに辺境伯の私兵に連行されたこともか。
後はサリオラと契約したりマリオン様と会うことになったり……
そして暗殺者に襲撃されたりとかか……
改めて考えると一歩間違えば死んでたことが多いな……
ミレーヌさんと話をしていると馬車が停車した。
「到着いたしました。それでは、お嬢様、ラグナ様いってらっしゃいませ。」
「「行ってきます。」」
そして2人で入学試験会場と書かれた魔法学園の入り口へと向かう。
受付には多くの子供達が並んでいた。
貴族の子供と平民の子供で受付が別れている。
まぁ仕方ないよね。
入学試験前に揉め事なんて面倒だし。
「次の方どうぞ~。」
ミレーヌさんと俺は手続きを行うと番号札と案内書を渡された。
そしていよいよ魔法学園の中へ。
「一般試験の方々はどうやら筆記試験からのようですわね。」
学園の建物の入り口には一般試験会場と表示されていた。
「特別試験は何処だろう?」
手渡された案内書を確認してみる。
「特別試験会場は外にある第一魔法訓練所ってとこらしいね。」
会場までの地図が載っていたのでそれを見ながら2人で向かおうとしていた。
「お前は!あの時の平民!」
突然怒鳴り声が聞こえたので振り向く。
「君は……」
「なんでお前のような平民がここに居るんだ。帰れ!」
俺に対して怒鳴りつけてくるこいつの顔は忘れもしない。
ナルタ辺境伯の息子だ。
違うか、今はナルタ伯爵なのかな?
貴族の格好をした子供が平民の子供に対して怒鳴っているのですぐに周囲からの注目を浴びてしまった。
「どうせ平民が受かる訳ないんだ。同じ空気を吸いたくもない。はやく帰れよ!」
こいつは相変わらず言いたい放題言うな。
ちらっとミレーヌさんを見るとミレーヌさんも困惑している表情だった。
言い返そうか悩んでいると騒ぎに気がついた騎士の格好をした職員の人が駆けつけてきた。
「何かあったか?」
「い、いや……」
こいつ職員が来たら急に大人しくなったな。
チクってやろうかとも思ったけどこれ以上は揉めたくないので黙っておく。
「ではすぐに会場へと向かうように。こんなとこで立ち止まると通行の邪魔だ。」
「……わかりました。」
一瞬睨んできたけど大人しく一般試験会場へと向かって行った。
「君達も災難だったね。」
「……大丈夫です。」
「我が学園内では身分など関係ない。実力至上主義だと言うのを理解していない子供が毎年本当に多い。それじゃあ君達も試験会場に向かいなさい。」
「助けていただき、ありがとうございました。」
騎士の人に礼を伝えると2人で特別試験の会場へ。
「まさかこんなとこで出会うなんてな……」
「本当にですわ……あの方は相変わらずなのですね。」
2人でため息を吐きながら歩くとすぐに会場へと到着した。
「特別試験を受ける方は番号札を左胸に取り付けてこの場でお待ち下さい~。」
受付で手渡された番号札を手に取る。
針なんてついてないぞ、これ。
「胸に押し当てた後、魔力を流すと取り付けが完了しまーす。着かない方はこちらへどうぞ~。」
言われた通りに番号札を手に持って左胸に押し当て魔力を流す。
白かった番号札の色が金色に変わる。
「番号札はついたけど色が変わったよ?」
ミレーヌさんを見るとミレーヌさんは赤だった。
「たぶん番号札が魔道具になっていて洋服についているんだと思いますわ。色が違う理由はわかりませんけど……」
周囲を見渡すと番号札がつかないのかちらほらと職員の元へと向かう子供達がいた。
「番号札がつかない子もちらほらいるね。」
別の職員が声をあげた。
「番号札の取り付けが終わった方はこちらへ集まって下さい。」
俺達2人はその職員の元へ。
職員の元には番号札を取り付けた子供達が集まっている。
みんな番号札の色はバラバラ。
黒もいれば青も。黄色がいたり赤もちらほら。
でも俺と同じ色の子供は誰もいなかった。
しばらくすると放送が流れる。
「入学試験の受付は只今を持ちまして終了します。」
「これより試験を開始します。各係員の指示に従い開始して下さい。」
さて。試験の開始か。
どんな試験を行うのか全くわからない。
魔法でも見せればいいんだろうか?
まず番号札がつかない子供達が別の場所へと連れて行かれた。
そして俺達を集めた職員が告げる。
「特別試験、第一項目突破おめでとう。次の試験に進みたまえ。」
「「「えっ。」」」
あまりにも突然発表された内容に俺達は驚き固まってしまった。
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