第0話:とある兵士の手記
――あいつらは人形だ。
パラケラススが作った人形は高い戦闘能力を持っているというのは聞いたことがある。
見た目は可憐な少女なのに、いざ戦場に出れば誰よりも功績を挙げて帰ってくる。
奴らは感情なんてものを持ち合わせていない。
命令のままに行動して、敵を見つければ即トリガーを引く。
あんなにも恐ろしいと感じたのは未だかつてなかった。モンスターだってまだ感情があるっていうのに。
それがここ最近になって、あいつらへの評価が自分の中で変わった。
今までは表情一つ変えなかったのに、コロコロと面白いぐらい感情を表すようになった。
アイツらが笑っている姿は、その、不謹慎かもしれないが可愛いと思った。
だからつい声を掛けてしまった。今まで俺とアイツらとの接点は一切なかったし、これを機に仲良くなれたらいいな、なんて考えていた俺が甘かったと気付かされる。
あいつらは、たった一人を除いては人形のままだ。
受け答えはしてくれるものの、無表情のままで俺を見てきやがった。心なしか、話し掛けてくるなと言っているような目をしていた。
あいつらに感情を与えたあの人間……異世界からやってきたという。
見た目は普通だが、射撃の腕前は味方の俺でさえも戦慄するほどの腕前だから驚く。
そいつが、あいつらに感情を与えた。
きっとこれから先、人形達はあいつにしか笑顔を見せないだろう。なんとなく、そんな感じがした。
だが、俺は恐ろしいものを見てしまった。
独占欲っていうのは人間ならば誰だってある。
それが人形にもあるだなんて、誰も思わないだろう。俺だってそうだった。
だが、やはり人形なのか。人間にはある道徳心ってものが奴らにはない。
この前、例の男に話し掛けた女兵士が人形らに連行されているのを見かけた。
奴ら、寄ってたかって女兵士を―――
……日記はここで終わっている。