今更後悔してももう遅い。不遇スキル「友達登録」が実は最強のチートスキルだったので、人類にちょっとだけ復讐をする
雑魚スキルと思ったらチートスキルだった。
後悔してももう遅い。
系の読み切り短編です。
かなり短いです(。。
俺はロロイーズ。10歳で神殿から与えられたスキルは「友達登録」という良く分からないものだった。数ある魔王の領域を解放して英雄になりたかった俺は、その瞬間に崖から落とされた様な絶望感を感じた。それでも昔からの鍛錬を一層厳しくして、15歳の時に冒険者ギルド登録をした。
「友達登録」は双方の合意があれば「フレンド」として登録される。「フレンド」になったからと言って特に変わったことはない。「フレンド召喚」とか「フレンドポイント」とかよくわからないサブスキルが幾つかついているだけだ。だから俺は荷物持ちや緊急時のおとりとしてだけ活用された。
そして、今。寝込みを襲われた後、裸同然で魔王の領域に取り残された。犯人はパーティを組んでいたメンバーだ。
「お前みたいな雑魚に報酬の一割でもくれてやるのが嫌になった。殺さないでおいてやるからとっとと失せろ」
勝手な言い草だ。俺を殺すとギルド認証に殺人履歴がつくから殺さないだけだろう。何で俺のため、だなんてわかりやすい嘘をつくんだ。バカバカしい。心底冷ややかな目をぶつけられても、俺の心は全く揺れなかった。なぜなら、俺はもう一人で生きていける目途がついていたからだ。
「友達登録」について分かっていることが、実は一つある。いや、正確には何時か誰にも言っていない事が有る。「友達登録」をすると、「フレンド」には危害を加えることが出来なくなるのだ。だから彼らのやり方は、俺を排除するには最適に近い方法と言える。俺には指一本触れずに、装備品その他もろもろを勝手に持って行っただけなんだから。だけど、彼らが今日、行動に出ることは知っていた。
なぜなら、俺はスキル保有者として様々な「フレンド」の情報を閲覧できた。友好度が0になった後、敵対度に代わった。これが100になったら行動に出るだろうと思っていた。思ったより早いタイミングで行動に出たからちょっと焦ったけどね、
彼らが「フレンドリスト」から消えたのを確認すると、俺は「フレンド召喚」を実行する。予想通り、道中で「フレンド」にしたモンスターが現れた。俺は自分だけの戦力が欲しくて、様々なモンスターをこっそり「フレンド」にしていた。モンスターの好物を上げると、案外簡単に「フレンド」になってくれた。現金な奴らだが、わかりやすくていい。
「とりあえず、拠点を探さないといけないなぁ」
それからしばらくして。俺は魔王の一人に出会った。今まで出会ってきたモンスターの中でも格が違う。けれど怯えることはない。彼らとは友好な関係を結べるように動いてきた。後は、魔王本人と会話をして友好度を上げるだけだ。
「人間風情が。この俺に首を垂れず、武器も構えず、正面から目を向けるか」
「敵対するわけじゃないならそうだろう」
「ふん。生意気な小僧。頭が高いぞ」
彼は、なんというか。立派な玉座に座っているが、本人が小柄なのでどうしても見下ろす形になってしまう。というか、子供だ。先代が討伐されたという話は聞いているから、避難していた息子だったんだろう。
「俺はロロイーズ。お前の名前は何だ?」
「俺に名を問うか? 俺の配下を恭順させたならば、既に知っていようが」
居丈高な言葉とは裏腹に、少年魔王は少し泣きそうな顔をしている。それもそうか。本来なら魔王の傍に使えるはずの側近が、俺の両隣にいるんだから。俺は何度も、魔王の近くにいた方が良いんじゃないかと言ったんだが、今の立ち位置になっている。
「本人から聞きたい。お前の名前は何だ?」
「……サタン。サタン=ブルーローズだ」
「そうか。お前が良ければ、俺の友達になってくれるか?」
そういって手を差し出す。俺の両隣の魔王側近は、何やらワクワクドキドキとか呟いているのが実にうるさい。ほら、少年魔王も睨んでいるだろう。
「……仕方ない。なってやろう。友達とやらに!」
何故か気合の入った声を出した少年魔王は、勢いそのままに手をつないできた。これで「フレンド」成立だ。おいこら側近ども。拍手するな。少年魔王が顔を真っ赤にして怒っているだろう。
またまたしばらくして。俺は幾つもの魔王領を巡り巡った。勇者と呼ばれる英雄のパーティが次から次へと魔王を討伐していくので、魔王の世代交代が頻発していた。魔王領の混乱が起きる前に、あるいは起こった後で俺がやってきて、問題解決して、魔王たちと「フレンド」になっていった。
新世代の魔王たちの大半が若い少女だったり、実は少年魔王と思っていたサタンが女の子だったりと、色々なことがあった。小さい子供の頃に思い描いていた英雄としての人生とは真逆だけど、俺は今の人生がそう悪い物じゃないと思っている。困っている人が居たら助けたい。悲しい出来事をなくしたい。だから俺は英雄を目指していた。決して、魔王を討伐したかったわけじゃない。
「やっぱり嫌か? 人間の国を攻めるのは」
雨粒一つ落とす様にサタンが小さくつぶやいた。その問いかけに頭を振る。
「いいや。俺は人間を滅ぼしたい訳じゃない。単に、モンスターと魔族は違うんだってわかってもらうだけだ」
「その演出のために黒穴から出てきたモンスターをけしかけるなんて、ほんっと悪だよなぁ!」
燃えるように赤い髪を逆立てた幼女が牙を見せるように笑う。これで現魔王最強なんだから、魔族って本当に見た目詐欺が多い。
「魔族をモンスター扱いにして奴隷にしている事こそ、悪だろう。だから、お互い様なんだよ」
「ちったぁ悪びれろよ! この小悪党!」
「悪いとは思っているよ。やめないけどね」
軽い言葉遊びで場を温めると、「フレンドチャット」で合図を出す。それに遅れること数分。モンスターの群れが、眼下の町へと土煙を挙げて襲い掛かっていく。国はすぐに対応できないだろう。何故なら、他数か所の町でも同じことが起きているんだから。
「人類は、ちょっとばかり反省をしないといけない。悪いことをしたらお仕置きされるってのは、当たり前だろう」
ああ、そうそう。先日、俺を切り捨てたパーティメンバーが「フレンド」になりたいと泣きついてきたっけ。まぁ、もう遅いんだけど。俺は人類相手に「友達登録」を使う事はもうないだろうから。あっさり切り捨てたけど、今頃は首都の教会で復活して居る頃かな。これからは人類にとって厳しい時代になるだろうけど、まぁ頑張ってね。
「もう遅い」系にちょっとだけ便乗しました(。。