表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

メガネじゃなきゃ気づかれないほどのメガネ美少女は残念ながら俺の従妹でした。

簡単日記

ラファと出かけることになりました

喫茶店に行き腹ごしらえをして図書館に行きラファが寝てしまいました

次はラファの本当に行きたいところへ行くことになりました。


「はい、ソフトクリーム」

 俺はそう言ってベンチに座っているラファに買ってきたソフトクリームを手渡した。

「おぉ! これじゃこれ、これが食べたかったんじゃ、ありがとうの、宏直」

 ラファの要望に応えて目と鼻の先にあるコンビニで買って来たソフトクリームをベンチに先に座っていたラファに手渡すと、目を輝かせて美味しそうに一口舐める。

「……うむ、相も変わらずおいしいの」

 なんてことはないコーンに乗っている普通のバニラ味のソフトクリーム、どこのコンビニにでもあるような、それこそフランスにもありそうな平凡なソフトクリームをなんと言うか感慨深そうに味わっている。

「買ってきておいて言うのもなんだが、そんなのでよかったのか?」

 昨今のコンビニスイーツはどれも馬鹿に出来ないほど進化しているわけで、スイーツに興味のない一般男子の俺からしてももっといい物があるんじゃないかと思ってしまう。

 これが真夏なら無難なソフトクリームを選ぶ理由もわからなくはないけど、まだ少し肌寒さの残る春先の屋外で食べたいというラファの気持ちがわからない。

「『そんなの』とはなんじゃ、この変わらぬ造形と裏切らぬ味が良いのじゃろうに」

「そんなもんかね?」

「そんなもんじゃ、……ほれ、そこまで言うのなら一口食べてみるがよかろう」

 まったくこっちを見ずに先の欠けたソフトクリームを向けてくるので、お言葉に甘えて一口貰おうかと一瞬思ったが、ファミレスで鈴蘭子に注意されたことを思い出す。

「――いや、俺はいいよ。せっかくだし全部ラファが食べたほうがいいよ」

「……やはり、変わってしまったのぉ」

「え? なにが?」

「なぁに、ちょっと昔を思い出しただけじゃ、二人でお小遣いを出し合って買った一本のソフトクリームを分け合ったのを覚えておるか?」

「あー、そんなこともあったな、覚えているよ。本当は一本ずつ食べたかったけど、お金が足りなかったんだっけ? それがどうかしたか?」

「ただ思い出しただけじゃ」

 向けられたソフトクリームを引っ込めるラファの表情は少し寂しそうに見えたような気がしたけど、それでも再び美味しそうになめ始めたので安心する。

 まぁ、さっきからずっとこっちを見ずに遊具の拡がる方を見ているけど。

「そうか、それにしても意外だな、てっきりアニメとかゲームのショップに行きたいとか言うと思ったけど」

 元々日本のアニメも見ていたらしいがこっちに来てから佳奈姐の影響もあって、ゲームをしていないときは佳奈姐から借りたアニメを見る生活をしているので、そっち方面のショップにでも行きたいと言うんじゃないかと思っていたけど、ラファが行きたいと言ったのは俺の家の近所にある公園だった。

「それはまた今度にするのじゃ、今はこの公園で懐かしのソフトクリームを食べながら思い出に浸りたいのじゃ」

「思い出?」

「宏直に連れられて、ここでよく遊んだではないか、覚えておらぬのか?」

「それぐらいは覚えているけど」

 思い出と言うほどの出来事があったかというと正直思い出せない、そんな特別なことは無かったはずだけど。

「あの頃がわちにとっては一番楽しかったのじゃ」

「そんな楽しかったか?」

「なんじゃ? 宏直は楽しくなかったのか?」

「いや、俺は楽しかったけど、ラファは昔から体力なくていつも『もう走れない』とか泣き言ばっかり言っていたからさ、今思えば楽しくなかったんじゃないかと思って」

「むぅ、余計なことばかり覚えておって、肝心なことは一切覚えておらぬくせに」

「肝心なこと?」

「わちと再会した時、なぜすぐにわちだと気がつかなかったんじゃ!」

 あの下校中に出会った金髪碧眼の色白美少女がラファだとすぐに気づかなかったことにどうやら怒っているらしい。

「いや、それはラファがこんなところに居るわけないと思っていたからで、それに――」

「それに、なんじゃ?」

「昔と随分イメージが違ったからな、昔はメガネを掛けていかにも内気な女の子って感じだったから」

 自信がなさそうに俯きがちで、何をするにも俺の後をついて来るような、それこそ年は一緒だけど妹みたいな、そんなラファへのイメージが俺の中にはずっと残っている。

「それは宏直が……、まぁ、よい、それより今のわちと昔のわちはどっちが宏直的には、その――いいと思うのじゃ?」

「そう言われてもな、そもそも俺にそんなこと聞いてもなんの参考にもならないと思うぞ?」

 何度でも言うがファッションセンスや見た目の良し悪しを判断出来るような目を持っていない自信があるからな。

「いいから! 答えるのじゃ」

「う~ん、どっちもいいけど、強いて言うなら性格的には今のほうがいいよ」

「そ、そうか! ……いや、待つのじゃ、その言い方だと見た目は昔のほうがいいと言うのか!? 宏直はロリコンじゃったんじゃな!」

「誰がロリコンだ! つーか、見た目は大して変わってないだろ?」

「わちとて少しぐらい成長しとるわ! まぁ、良い、大して変わっておらぬと言うのなら、なにが気に食わないんじゃ?」

「気に食わないわけじゃないけど、洗面所で震えながらコンタクトを目に入れているのを見たから――」

「なに!? 見られておったのか? 全然気づかなかったぞ、さては忍びの者じゃな?」

 そんな無茶振りと共に期待の眼差しをされても困るんだが。

「俺は影分身の術とか出来ないからな。俺が言いたいのは無理して見た目を変えなくてもいいんじゃないか、ってことだよ」

「……本当にそう思うか?」

「あぁ、だってラファはメガネをしてなくても、していても、か――ごほっ、ごほっ」

「だ、大丈夫か?」

 危ない、危ない、思わず可愛いって言ってしまうところだったけど、なんとか慌てて咳をしたお陰で誤魔化せたようだ。

「あ、あぁ、大丈夫だ」

「そうか、大丈夫ならよいのじゃ、そうじゃな、宏直がそこまで言うならコンタクトを止めてもよいかの、怖いし」

「最後にボソッと本音が漏れているぞ」

「し、仕方ないじゃろ、慣れると言うがアレは中々に慣れぬのじゃ、しかし困ったのぉ、メガネはフランスに置いてきてしまったからのぉ」

「……それじゃあ、今度は俺が行きたいところについて来てもらおうかな?」

「宏直の行きたいところ? どこか行きたい場所があるのか?」

「まぁな、それよりラファ、ソフトクリームが大分溶けてきているぞ」

「ぬぁ!? ほ、本当じゃ! 急いで食べねば」

 ラファは慌ててソフトクリームを食べきったのはよかったのだが、焦って食べたせいか口の周りがクリームだらけになっている。

 なんと言うか、少しエ――いや、何でもない。

「少し、じっとしていろよ」

 俺は心の中で邪念を振り払い、咳払いをして落ち着かせるとそう言ってポケットからポケットティッシュを出して、ラファの口の周りを拭く。

「……ありがとう、なのじゃ」

 ラファは少し恥ずかしそうに目を逸らす、こんな風に世話の焼ける感じは昔と変わらないな。

「それじゃあ、行くとするか」

「それで、どこに行きたいんじゃ?」

「それは、着いてみれば分かるよ」

 別に隠すような事でもないんだけどな、それでもラファは不思議そうに頭を傾げつつも俺の後に付いて来てくれたのだった。


「ここだな」

「ここはメガネショップか?」

 店の看板を見上げながらラファは首を傾げそう言うと俺はラファを連れて店の中に入った。

「じゃが、なんでこんなところにきたのじゃ? 宏直は目がいいじゃろ?」

「俺のじゃないよ、ラファのメガネを買おうと思ってね」

「なっ! わちのか!?」

「メガネがないって言っていただろ、だったら買えばいいかなと思ってさ、好きなのを選びなよ、買ってあげるから」

「買ってくれるのか!」

「久しぶりにラファと外に出て遊んだからな、その記念だ」

「宏直……、ありがとうなのじゃ」

「ほら、早く見て来いよ、俺はここで待っているから」

「何を言う、ほれ、一緒に見て回るのじゃ」

 近くの椅子にでも座って待っていようかと思っていたんだけど、ラファが楽しそうな笑顔のまま袖を引っ張ってくる。

 まぁ、下着売り場を見て回るわけじゃないし、こんな顔されたら断れないので一緒に見て回ることにした。

「どうじゃ宏直、似合うか?」

 10分ほど見て回り気に入った物を見つけたようで、ラファの小顔にしては少し大きめのレンズで黒縁のメガネを掛けながらそう聞いてくる。

 少し大きめのレンズはラファの可愛らしさによく似合っていて、黒縁も碧眼によく似合っていた。

「あぁ、バッチリだ」

「うむ、そうか、それならこれにするのじゃ」

「えっ、もう決めるのか? 相変わらず即断即決だな。それじゃあ、ちょっと見せてもらうぞ」

 相変わらず買い物に時間を掛けないラファに少し驚きながらも、何でも好きなものを買ってやるとは言ったが、お財布事情が厳しい俺としては一応値札を確認したいのでラファからメガネを取って値札を確認する。

「2000円かぁ」

 メガネの相場はわからないがこんなものかと思って眺めていると、このメガネが伊達メガネであることに気づいた。

「おいラファ、これ伊達メガネだぞ?」

「わかっておる。……いいんじゃ、わちはこれが気に入ったのじゃ」

「でも、ラファは視力が悪いんだから、伊達メガネじゃダメだろ」

「今みたいにコンタクトをしながら使えば大丈夫じゃ」

 そう言ってラファはニコッと笑う。

 どうやら折れる気は無いらしい。コンタクトレンズをつけるのが辛そうに見えるから眼鏡をプレゼントしたかったわけで、当初の目的とはズレてしまうけど、嬉しそうに笑うラファを見て無理強いするのもどうかと思う。

「……分かったよ、それじゃあこれを買ってくるから出入り口辺りで待っていてくれ」

「うむ!」

 運動音痴の癖にスキップ(出来ているか怪しい)をしながら出入口の方へ向かっていくラファを見て、来てよかったと思う反面。

「変に気を使わせたかな」

 そう呟いてしまう。

 俺の財布事情が厳しいことを知っているラファが伊達メガネを選んだのは、きっと俺の財布を気遣ってくれたのだろう。好きなものを買っていいとは言ったが普段メガネとは縁遠い俺はこんなにメガネが高い物だと思わなかったわけで、度が入っているメガネなんて選ばれていたらとてもじゃないけど買えなかっただろうしな。

「メガネ買ってくれたのか?」

「ほら、ラファのメガネだ」

 会計を済まし出入口に向かうと駆け寄って来たラファにそう言ってメガネを手渡すと、ラファはすぐにメガネを掛けてくれる。

「うむ、やはりいい物じゃ、これからはこのメガネを愛用するとしよう」

「喜んでくれてよかったよ、あれ? メガネしまうのか?」

 ケースから取り出し掛けたメガネを何故かすぐにケースに戻してしまう。

「うむ、これは外では付けぬ。なにせこのメガネはブルーライトをカットしてくれる奴らしいしの、ゲームをするときに使うのじゃ」

「ああ、なるほど」

「それに――外でも付けておったら失くしたり壊れたりするかもしれぬじゃろ? 少しでも可能性は下げねばな」

「まぁ、ラファは運動音痴だしコケるかもしれないしな」

「む、意地の悪い奴め、しかし否定も出来ぬが」

 そんなことを言い合って軽く笑いながら店の外に出ると日も落ち始めていた。

 そろそろ帰らないといけないなとか思っていると、こっちを向けと言わんばかりにラファが俺の袖を引っ張ってくる。

「ん? なんだラファ?」

「いや、言い忘れておったからの。……ありがとうの、メガネ大事にするのじゃ」

 眼鏡ケースを抱えるようにしながら、そんなド直球な感謝を伝えられるとさすがに照れてしまう。

「あ、ああ。――さぁ、そろそろ帰ろうか?」

 照れくさくてなんて言えばいいかわからず、そんな情けない返事をしつつもそう誤魔化す。

「うむ、わちもさすがに疲れてきたからのぉ、帰るとしよう」

 家までの帰り道もラファと色々話し楽しかったのだが、家が近づくに連れてラファの顔は段々曇っていった。

「どうしたんだ、ラファ? 急に元気がなくなったみたいだけど」

「……大したことではない、宏直の家に来た、この一週間を思い出して少し感慨に耽っておっただけじゃ」

「感慨って、大げさな」

「大げさではない! わちにとってこの一週間はわちの人生で一番楽しかったのじゃ、師匠や宏直とゲームをしたりこうして宏直と出かけたり、まるで夢のようじゃった」

「夢って、それを言うなら俺だって、まさかフランスに居るはずのラファが家出をしに俺の家まで泊まりに来るなんて夢にも思わなかったよ」

「……ずっと、このまま日本ここに居られたらよいのに」

「ずっと家出をし続けるなんてラファの両親も心配するだろうし、許さないだろ」

「それは……、わかっておる」

「まぁ、それでも俺がラファを追い出すことはないから、少しでもゆっくりしていくといいよ……佳奈姐も喜ぶと思うし」

「……うむ」

 少ししんみりとした雰囲気の中、歩きながらそんな話をしている間に家へと着いてしまった。

 俺は家の鍵を開けようと鍵穴に鍵を入れて回したが戸は開かなかった。

「(鍵は閉めていったはず)また佳奈姐か」

 いつものように予備用の鍵を使って俺の家に侵入し、戸の鍵を掛けずにゲームでもしているのだろう、俺はそう思いもう一度鍵を回して、戸を開けて家の中に入った。

「わちはシャワーを浴びたいんじゃが?」

「あぁ、それじゃあ、その間に俺は夕食を作っておくよ」

「うむ、わかったのじゃ」

 俺に続いて家に入って来たラファはそう言って脱衣所に向かう。

「さてと、佳奈姐また勝手に――あれ?」

 居間にいるはずの佳奈姐に小言を言いながら居間に入ったがそこには佳奈姐の姿はなかった。

「トイレにでも行っているのか?」

 そうは言うものの佳奈姐が居間にいた形跡はない。もしかして鍵をかけ忘れたか、いや、そんなはずないと思うんだけど。

 そんなことを思いながら首を傾げていると、脱衣所のほうからラファの叫び声が聞こえた。

 この状況的にまさか泥棒でも入って来たんじゃないかと思った俺は急いでラファのもとへ駆けつけると、ラファは驚いたような表情で脱衣所の前にペタッと力が抜けたように座っていた。

「ラファ、大丈夫か!」

「ひ、宏直」

 俺はしゃがんでラファの様子を見たが、どうやら怪我とかはないみたいだった。

 脱衣所の戸は開いていて、中からはシャワーの流れる音が聞こえていた。

「いったいなにが……」

 俺はそう言って脱衣所のほうに目を移すと同時に風呂場の戸が開く、そこには色白でスタイル抜群な金髪碧眼の美女が全裸で、こちらを見ていたのだった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

少し投稿が遅くなってしまい申し訳ございません。

まだ年末年始の気持ちが抜けてないようなので気を引き締めて頑張りますので

応援のほど引き続きよろしくお願いいたします。

面白ければブクマや高評価、感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ