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従妹じゃなきゃ可愛いと言ってしまうほどの何でも似合う美少女は残念ながら俺の従妹でした。

簡単日記

ラファに上市たちとファミレスに行っていたことを問い詰められました。

ラファも遊びに連れて行くことになりました。

約束の時間にはまだ早いのにラファが起こしに来ました。


「いったい何をしているのかな、ラファ?」

 あれこれ考えている間にも俺に顔を近づけてきたので、とっさにラファの鼻をつまみ少し怒った口調で聞いてみるとラファは顔が今までで一番真っ赤になる。

「ち、違うのじゃ! こ、これはその、師匠が……」

 鼻をつままれたまま喋ったので鼻声のまま言い訳を始めるラファの声が聞こえたのか、電話越しに佳奈姐の声が聞こえてくる。

「え~、私のせいじゃないよ~、だって『早くデートに行きたいから宏直を起こす、いい方法を教えてほしい』って電話を――」

 それ以上は言わせねえよと言わんばかりの勢いで佳奈姐の言葉を遮るように運動神経皆無のラファにしては力強い投てきで壁にスマホを叩き付ける。

 湯気が出ているんじゃないかと思うぐらい真っ赤な顔をしたラファは全力を使い切ったと言わんばかりに肩で息をしたまま部屋の壁にぶつかり床に落ちるスマホに視線を落としていた。

「お、おい、ラファ? 大丈夫か?」

「き、気にするな、さっき、師匠が、言ったことは、全部、嘘じゃ!」

「いや、まぁ、佳奈姐がからかって言っているぐらいわかるけど、いいのかそれ、絶対壊れているぞ?」

 息を切らしながら話すラファを心配しながらも俺は床に落ちているスマホを指差す、昨今のスマホの進化は著しいとは言え、さすがに今のは耐えられないだろう、画面割れているし。

「い、いいんじゃ、随分と古い機種じゃから、ちょうど切り替えようと思っておったところじゃし」

 息は整ったようだが、少し震えるような声で画面が無残にも割れたスマホをチラチラと見ている様子からしても、どう見ても咄嗟の行動にラファが後悔しているのは見え見えだった。

 まぁ、佳奈姐の嫌がらせや、からかいは時に冷静な判断力を奪う程苛つくから仕方ないか、ちなみにだが幼い頃から色々と鍛えられている俺は今みたいに冷静さを失うことは無いけど。

「と、とにかくじゃ、早く起きて、わちの朝ご飯を作ってほしいんじゃが?」

「朝ご飯って、いつもは食べないんじゃないか?」

「今日はお腹が空いたのじゃ」

 いつもは朝が弱くこんな時間に起きていること自体珍しいので俺はおかしいと思い、お腹に手を当てているラファのことをよく見てみると、目の下のクマを見つけた。

「あ~、なるほど、ラファお前寝てないな?」

「な、なんのことじゃ?」

 ラファの体がビクッと反応し目を泳ぐ、ここまでわかりやすいとなんと言うか可愛げがあるように感じてしまう。

「別に隠さなくても、素直に言えばいいだろ?」

「い、言えるわけなかろうが! こんな子供みたいなこと……」

「ったく、そう思うんなら、夜中にゲームするのを止めればいいだろ?」

「ん? ……ゲーム?」

「あれ? ゲームに熱中しすぎて、徹夜したんじゃないのか?」

「そ、そう、ゲーム! ゲームじゃ! 徹夜でゲームをしたのじゃ、さ、さすがは宏直じゃな」

「はぁ、やっぱりか、こんなに朝早くにラファが起きているなんておかしいと思ったんだよ」

 俺は部屋に置いてある時計を見て、現在午前七時を少し過ぎたところであることを確認する。

「と、とにかく朝ご飯を、わちの朝ご飯」

「わかったって、今作るから居間で待ってろ」

「うむ、わかった」

 俺のジャージの袖をラファはせがむように引っ張りながら朝食を作るように言って来たので仕方なく了解すると嬉しそうに満足そうな笑顔を浮かべ勢いよく俺の部屋を出て行き、その勢いのまま階段を降りて行った。

「ったく、しょうがないな」

 あまりいい寝起きではなかったが朝食を作らないとこれ以上の睡眠は望めないので観念するように俺はそう呟いてベッドから起きようとすると、スマホに着信が来た。

「ん? 佳奈姐か」

 大方、急にラファのスマホに繋がらなくなったから、どうなったか、確認するために俺にかけてきたってところだろうと思いながら渋々着信をとる。

「もしもし?」

「あ~、宏君、おはよう~」

「おはよう、でっ、なにか用か?」

「えっと、ラファちゃんとの電話が突然切れちゃって、それから繋がらないだけど」

「それなら佳奈姐が変な冗談言うからラファが怒って、スマホを壁に投げつけてぶっ壊したぞ」

「えっ? 壁をスマホでぶっ壊したの? すごいね」

「……確かにそう聞こえなくもないけど、この話の流れ的にどう考えても壊れたのはスマホのほうだろ」

「だよね~、言ってみただけ」

「はぁ、俺は佳奈姐の冗談に付き合うのは慣れているけど、あまりラファをからかわないでやってくれよ、案外怒りっぽいんだから」

「う~ん、別にさっき言ったのは冗談じゃなかったんだけどな~」

「あんな起こし方をラファにやらせたのが冗談じゃないと言うなら、俺は佳奈姐に説教をしないといけなくなるんだが?」

「あ~、そっちか……、さすがに疎いね、まっ、それでこそ宏君だけど」

「俺が何に疎いんだよ?」

「いいんだよ~、そんなことはどうでもね、それより私の冗談は楽しんでくれたかな? 幼馴染が起こして来てくれるシチュエーション、男の子なら一度は憧れるはずでしょ?」

 やっぱり佳奈姐が原因じゃねぇか、ったく、ラファもいちいち佳奈姐の冗談に乗らなくてもいいのに。

「お~い、宏く~ん、どうしたの~黙り込んじゃって、もしかしてラファちゃんに起こされたときのこと思い出してニヤけてるの~?」

「ニヤけられないよ、なんせ俺はアンチ幼馴染だからな」

「あれっ? そうだっけ? 正統派ヒロイン枠の幼馴染が嫌いな男の子いるんだ~、参考までに嫌いな理由聞かせてよ」

「……なんで俺がアンチ幼馴染か、わからないのか?」

「わからないから聞いているんだよ~」

「(自覚無しか、それならいいだろう)俺にはそれはもう可愛い、可愛い、年上の幼馴染がいるんだが――」

「おや? なんで、そんな皮肉めいた喋り方を?」

「その可愛い、可愛い、幼馴染は二次元の幼馴染のように毎日健気に起こしてくれるわけでもなく、ただ気まぐれに朝、俺の部屋に突然出現し――」

「突然出現するなんて、宏君の幼馴染さんは幽霊さんか何かなのかな~?」

 なんともわかりやすく、とぼけた感じで佳奈姐はそう言ってきたので、それならもっとわかりやすく言ってやることにする。

「その可愛い、可愛い、幼馴染は俺の部屋に出現すると決まって『ふっふっふ、ついに我が力を覚醒させる時が来たようね、さぁ、精霊アレクト(俺)よ、我が力に共鳴せよ』とかなんとか言って、無理やり起こされてはミニコントに付き合わされる、という過酷な日々が中学卒業まで続いていれば誰だってアンチ幼馴染になるとは思わないか?」

「は、ははは、それはずいぶんと大変な幼馴染を持ったようで……、ははは、すみません」

「いいよ、別にもう昔のことだし、それより、もう用が無いなら切るぞ?」

「あっ、待って、最後に一つだけ、宏君は明日楽しみで寝られないことって、ある?」

「唐突だな、小学生の頃は遠足の前の日とか寝られなかったこととかあったけど最近は無いな、それがどうかしたのか?」

「いや、特に意味はないんだけど~、私も楽しみにしているアニメイベントとかの前の日は寝れないことあるからさ~、聞いてみただけだよ~」

「佳奈姐はもう20歳なんだから、そういう子供じみたこと言わないほうがいいと思うよ」

「私は永遠の17歳だからいいんだよ~」

「あっそ、じゃあな」

 一浪している癖に何を言っているんだかと思いながら俺は佳奈姐のそのしょうもない冗談に大人気なく少しイラッとしてしまい、スマホを投げることは流石にしなかったがすぐに電話を切りラファの朝食を作るべく一階に降りて台所へ向かった。

 ラファから「早く、お腹空いたのじゃ~」と催促されながらもトーストを焼き、その上にカリカリに焼いたベーコンを乗せ、タルタルマヨネーズをかけて最後に半熟の目玉焼きをその上に乗せる、時間がないときの朝食は大抵これだ。

 まぁ、そんなどうでもいい情報はさておき、ラファは俺が作った朝食に目を輝かせながら食べきると「ご馳走様なのじゃ」と言って手を合わせたので、俺は空いた皿を持って台所に向かい皿を洗っていると、ラファが台所まで付いてくる。

「む? 宏直は朝ごはんはいらないのか?」

「俺はいいよ、まだ眠いから」

「まさか、二度寝をするつもりではあるまいな?」

「ふわぁ、するに決まっているだろ」

 少なくともあと3時間は寝られていたのにこうして起こされてしまったのだから欠伸も出る。

「ダメじゃ、せっかく起こしたのに寝てはならぬ」

「じゃあ聞くけど、なんで早く起こしたんだよ?」

「それは……、お腹がすいたから」

「だったら、もう目的は達しているだろ?」

「えっと、それじゃあ……、宏直が今日の約束に遅刻しないように――」

「遊びに行く約束は11時からだろ、日本人は時間に厳格だけど4時間前行動はない」

「でも、佳奈姐はイベントとか行くときは最低5時間前行動って言っておったぞ」

「あれは例外だから、とにかく起こしてくれるならせめて30分前にしてくれ」

 俺は頼むようにそう言うと蛇口から出ている水を止め、洗い終えた皿を拭くと自分の部屋に向かって歩き始める。

「宏直ぁ」

「おやすみ~」

 お菓子をねだる子供のような声で引き留めようとして来たが、さすがに眠気には勝てず俺はそう言い残すと居間を出て階段を上がる。

 途中、居間から「大ばか者めー」と声が聞こえたが、俺はそれをスルーしてベッドに横になり瞬く間に眠りについた……。


「起きてください、ご主人様」

 爽やかで優しい春の風のような声に起こされた俺は瞼を擦りながら時計に目をやると10時半を過ぎたところだったので、もうこんな時間かと思い目を開ける。

「ラファ……、なにしているんだ?」

 一瞬寝ぼけているせいかと思ったがどうやら目の前にいるのはラファで夢の中でもなさそうなので、一応確認のため俺は少し困惑気味に尋ねた。

 なぜ目の前のラファを見て困惑しているかと言えば、何故だかわからないけど可愛いフリフリのメイドコスプレをラファがしていたからだ。

「暇つぶしにゲームをしていたんじゃが『メイドさんに朝起こしてもらうのは男の夢だ』とゲームの主人公が力説しておったから、やってみようと思っての」

「(ラファが段々ギャルゲーに侵食されている)と言うか、そんな服どこにあったんだ?」

「少し前に師匠から貰ったのじゃ、可愛い服じゃから着てみたいとは思っておったんじゃが、中々に着る機会が無くてのぉ、ちょうど良かったのじゃ」

 佳奈姐がラファを心配して女子物の服を差し入れていたのは知っていたけど、こんなコスプレまで渡していたとはな、俺は少し心配になりながらもとりあえずベッドから起きる上がる。

「ほ、ほれ、宏直よ何か感想はないのか?」

「(感想って言われても)」

 俺は寝ぼけ眼を擦り改めてメイドコスプレをしているラファをよく見てみた。

 この手の服の知識は皆無なんだけど、なんて言うか佳奈姐のチョイスの割にはモノクロカラーでシンプルと言うか清楚と言うか、スカートの丈もそんなに短くないし、そもそも露出が少なく好印象と言うか、色白で金髪碧眼のラファと相まってまるで等身大フィギュアのような完成度の高さを感じる。

「あ、あまりジロジロ見られると恥ずかしいのじゃが」

「(恥ずかしいならやらなければいいのに)」

「でっ、どうなのじゃ、似合っておらぬか?」

「服の知識がないから詳しいことは言えないから月並みな言葉しか言えないけど普通に似合っているよ。それこそ、そこらへんの二次元美少女じゃ相手にならないくらいに」

 いつも余計なことばかりする佳奈姐だがこれに関してはいい仕事をしたと言わざるを得ないほどマッチしていた。本当にお世辞抜きで可愛いと思える、それこそ従妹じゃなければ自分の感情を抑えきれないんじゃないかと思ってしまう程だ。

「ほ、本当か! そんなに似合っておるのか、そ、そうか……うむ、ならばこの格好のまま遊びに行くとしよう」

「それは勘弁してください」

「なんでじゃ! 似合っているのじゃろ?」

「ラファがメイドコスプレして町を歩くのは百歩譲って許されても、その隣に俺がいるのは絵的に許されないよ」

 想像すればすぐわかることだが身長140センチぐらいのメイド服を着た少女の隣に170センチくらいの男が一緒にいたらどう思うだろうか、ここが都会でそれこそコスプレをしている人がよく街にいるとかならまだマシだろうがこんな片田舎でそんな目立つ格好をしているとまず職質は避けられないだろうし、警察への誤解が解けたとしても確実に周りからは冷たい目線で見られる。

 メイドコスプレをしているラファの隣を歩けるほどの勇気は俺にはない、想像しただけで気恥ずかしさに足が震える。

「なんでじゃ、なんでダメなんじゃ!?」

「とにかく駄目だ。早く着替えないと遊びに連れて行ってやらないからな」

「む~、宏直はイジワルじゃ」

 むくれながらもなんとか折れてくれたようで、ラファは渋々といった様子で部屋を出て行く。まぁ、あの姿のラファを周りに見せびらかしたいと思わなくもないが、さすがに悪目立ちが過ぎるのでわかってもらえたことに安堵しながら俺も服を着替え始めた。

 俺は着替え(シンプルにパーカーとジーンズ)を済ませ玄関でラファを待っていると軽快な足音で階段を降りてくる音が聞こえて来る。

「待たせたの」

 降りてきたラファの服装は少し大きめの白いカーディガンに膝が隠れるくらいの長さの淡い青色のフワッとしたスカートをはいていた。

 いつも家に居るときや近所に買い物へ行くときなんかは佳奈姐の影響もあってか、スウェットやジャージなどのラフな格好の服をよく着ているから俺にとってこのラファの私服は新鮮だった。

「ん? なにをボーっと見ておるのじゃ?」

「えっ、いや、ちょっと新鮮だな~、と思ってさ」

 さすがに従妹の私服に見惚れていたとは言えずに咄嗟にそう誤魔化す。

「わちとて、やるときはやるのじゃ、そ、それより他に感想はないのか?」

「似合っているな」

 もっと具体的に褒めてあげたかったぐらい可愛いのだが、残念なことに再三言っているが俺にはファッションについてほとんど知識がない、本当にこういう時に自分の駄目さ加減が嫌になるが、俺にはそう言うしかなかった。

「そうか、それならよいのじゃ」

 俺の何の捻りも無ければつまらない褒め言葉でもラファは嬉しそうにそう言って嬉しそうに笑ってくれる。

 なんと言うか気まずいような、恥ずかしいような、なんとも言えないこの雰囲気に俺は耐えられなくなり「ほ、ほら、早く行くぞ」そう言って先に家を出てしまう。

「う、うむ、そうじゃの」

 ラファも少し気恥ずかしかったのか全く目線を合わせないまま一緒に外へと出てしっかりと鍵を閉め、いつものところに鍵を隠す。

 こうして俺たちは久しぶりに二人で遊びに出かけたのだった。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

なんとか今週二本目投稿出来ました(ギリギリでしたが)

年末年始の投稿ですが、アクセス数などを見て状況に応じて投稿出来ればと思っています

(冬休み等でアクセス数が増えれば投稿頻度を上げるといった感じです)

逆に投降間隔が空くかもしれませんがちゃんと投稿しますので引き続きご愛読ください

面白ければブクマや高評価、感想お待ちしています。

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