救済
……えー、色々と言いたいことはありますが……まだ続きますd(˙꒳˙* )
〜王都〜
「……さて、善は急げと来たはいいが……」
《転移魔法》を使い、事が起こる前になんとか対処しなくてはならないと思い来たのはいいのだが……。
「……どうしたらいいか」
眼の前に広がっていたのは闇夜を照らす灼熱の炎。王都全土までとはいかないが、中々の範囲は灼かれているようだ。
そして、極め付けは防壁の前にて轟音の咆哮をあげる竜の姿。
――思っていたよりこの国が落ちるのは早そうだ。
内心そう思ってしまったが、ここは落ちるには勿体ない国だ。
「……さて、まずは」
俺は右腕を天に翳し、《時空魔法》【範囲内時間操作】の魔法陣を展開する。
魔力を流し込んでいくと、魔法陣の回路が発光を始め、【範囲内時間操作】の魔法が発動した。
発動した瞬間、眼の前で燃え上がっていた炎も阿鼻叫喚していた住民の声も瞬間的に静まり返った。
「……さて、状況を整理すると」
まず、真っ先に眼に入った前方に佇む竜、そして北西方面からウルフの群れ、か。
まぁ、最優先はこの街の惨状を元に戻すことだろう。
「【範囲空間時間遡及】・【範囲記憶改竄】」
【範囲空間時間遡及】
によって街を元の状態に戻し、魔法の範囲を王都を中心とした場所に絞り、【範囲記憶改竄】によって傷ついた記憶などを改竄する。
負傷者がいる場合は《極癒魔法》で治せばいいし、死者がいるのなら効果範囲を広げた【完全蘇生】によって蘇生をすれば問題ない。
他にも問題はあるが、優先的にはそれくらいか。
俺は二つの《極癒魔法》を発動させ、負傷者の回復及び死者の蘇生を完了させる。
「……さて、あとは魔物の駆除と竜の排除と魔力の安定化か」
やれやれと思いながらも、重くなっていた身体に鞭を打ち、【範囲内時間操作】の効果を解除した。
◆
「ここは死ぬ気で守り抜け! 我ら王都の存亡に関わる大事な戦いだ。我らの意地と底力をあの竜にぶつけてやるぞ!!!」
『オオオオオオォォォォ!!!!』
国王直属の近衛騎士団の騎士団長であるガロード・ルベリアが騎士の者たちに喝を入れているところだった。
――あいつ、やる時はやるんだな。
俺の剣を振った剣圧程度で死んでいたあのときとは違い、統率者としての眼をしてる。
他者を率いるカリスマというものは日常的の行動などもあるが殆どは生まれつきの性格などが大きく作用してくるため、俺には出来ぬ芸当だ。
――悪いが、少々邪魔をさせてもらおう。
俺はアイテムボックスから剣術大会の時に使った仮面を取り出し、顔に被る。そして【身体変化】で背丈を調整する。
「……気合いを入れているところ悪いが、あの竜は俺に任せてくれないか?」
俺は竜の動きを《時空魔法》【対象的時空停止】によって止めてから《転移魔法》でガロードの眼の前に転移し、そう声をかけた。
「……うおっ! なんだ貴様は!」
「剣術大会準優勝のルイドだ。少々面倒なことになっているようだなので、助太刀をしようと思ってな」
まぁ、こんなことは勿論嘘だ。こいつらと共闘などする意味などないし、なんなら俺一人の方が速い。だからこいつらにはここではなく、ウルフの方に向かって欲しいと言うのが本心だ。
「ふざけるな! 我ら近衛騎士団はこの国を守る義務があるのだ! 実力はあるようだが、何も知らぬ貴様なんぞに助けられる義理などないわ!」
――ほう、国を守るねぇ。
いいことを聞き、とあることを思いついた。
「……なら、お前らは北西方面に向かえ。その方角にウルフの群れが近づいている」
「……なに?」
怪訝そうな表情をするガロードに対し、俺は淡々と告げる。
「竜もそうだが、そちらも対処しなくては国は守れんぞ? 竜一匹ならなんとか俺でもなるが同時は流石にキツい。だから協力して欲しい」
「……貴様、何がしたい? 何か見返りを求めているような感じがする」
こいつ、本当にあのガロードか? 前にあったときとは打って変わってだいぶ頼もしくなっている。
「何、単純なことだ。この国の防衛面を強化することを国王に伝えたいというだけだ」
「……防衛面の強化だと? 現状ではこの防壁があるではないか!」
「……貴様の眼の前で止まっている竜を見て何も思わんのか?」
俺は間髪を入れずに返答すると、ガロードは苦虫を噛み潰したような渋面を作る。
まぁ、今の今まで大事のなかった国がいきなり滅びる危険があると言われれば国を守ることを使命としている近衛騎士団からすれば屈辱的なことなのだろう。
「今は俺がコイツを止めているが、コイツが動き出せばたちまちこの街は焦土となるぞ」
現に先程までこの国は焦土となっていたが、それを言ったらわざわざ記憶の改竄をした意味がないので辞めておく。
そして、ようやく気持ちの整理がついたのかガロードは重い口を開いた。
「……分かった。近衛騎士団団長として貴殿の要求を国王陛下に伝えよう。だが、それはこの眼の前のデカブツをどうにか出来たことが確認されればの話だ」
「あぁ、約束しよう。それと、国王に伝えるのなら出来るだけ早いとありがたい。具体的には日が昇るより前がいい。こちらもあまり時間がないのでな」
「ゼネラとアヌはここでこのルイドの戦果を報告しろ。我らは北西方面へ向かう、良い報告を待っている」
ガロードはこちらを振り向きそう告げると足速に馬を走らせていった。
「……全く、素直じゃありませんね。ガロード騎士団長は」
先程アヌと呼ばれていた女騎士はガロードが見えなくなった時点でボソッとそう呟く。
「……随分と辛辣だな。どこの誰とも分からぬ俺のいうことを信じて持ち場を離れたんだ。アイツは大分お人好しというやつではないのか?」
「そうは言っていますが、貴方はあのデカブツをどうにかしようとしている。その事実は揺るぎません」
「それがお人好しというのだ。俺がお前たちを騙していたらどうする? このまま俺が逃げたらどうする? こう言っては悪いがお前たちにアレを倒すだけの実力があるとは思えん」
俺はだいぶ厳しい言葉を連ねるが、アヌの反応は予想とは反対に笑みを洩らしていた。
「相手を騙す人は騙す想定を相手に話したりしませんよ。それに貴方はいい人です、視れば分かります。これでも人を視る眼があると言われて育ちましたので」
人を視る眼ときたか――こう言われてはなんと返したら良いかわからんな。
それにしても俺がいい人か、あの時代に俺がしてきたことをコイツが知ったらいい人なんて言えなくなるだろうが。
人は見かけによらない――この言葉は本当に的を得ている。
普段誰にでも優しい紳士が実は犯罪に加担していたり、教会などの組織的に民衆から金を不当に徴収したりと、後ろめたいことはあるものなのだ。
そして俺もそれに含まれている。
「……そう判断したのなら俺は何も言わぬ。俺が何者であろうとそれはアンタの判断だ。後悔はするなよ?」
「後悔なんてしませんよ。ね、ゼネラもそう思うでしょ?」
アヌは先程アヌと一緒に待機を命じられたゼネラという者に声をかける。
「…………うん、私はアヌの判断を……信じる」
そうボソッと小さく呟くゼネラと呼ばれた少女。どうやら騎士団の一員らしいが、その手には剣ではなく短刀が握られていた。
「あはは、ゼネラは人と話すのが苦手なんです。悪い娘じゃないから許してくださいね?」
「案ずるな、気にしていない。それより、そろそろ竜と話してたいので動かしたいのだが」
そういうと、何故かアヌとゼネラはあんぐりと口を開け、驚いたような表情を作った。
「……あの竜……話せる……の?」
ゼネラがポツリと呟く。
「ああ、アイツは魔物の龍とは違う。竜人という姿を取ることの出来る竜種だ。魔物ではないから意思疎通も可能だ」
「……竜と話すなんて言ったら世迷い言ということで酒場では笑い者になるだろうな」
アヌの言葉からは若干の呆れを感じるが、今はそれどころではない。
「……まぁいい。では行ってくるが、しっかり見ててくれよ?」
「……ん」
「ああ、任された」
二人からの返事を確認した後、俺は飛翔し竜にかけた【対象的時空停止】を解除した。
◆
【……さて、おい、お前。言葉は通じるか?】
そう竜族の使っていた言語で話しかけると先程まで目の前の王都に眼を向けていた竜はこちら側に眼を向ける。
【古代竜王言語とは……懐かしき言語を使うのか、なかなか異なる存在よ】
とりあえず伝わったらしいが、この言語は懐かしいのか。まぁ、使われていたのが二千年も昔だからな、言語が変わろうと不思議ではあるまい。
【そうは言いながら言葉は通じるのだな?】
【無論、我々の古語にあたる言語知らぬは竜族の恥よ。して、何用か異なる存在よ】
【ああ、突然で悪いが質問に答えて欲しいんだ】
本当に突然だったため、そう返すと竜も戸惑いの表情を作る。
【我は、人族の国に対して用がある。異なる者、汝の要求は答えられぬ】
【それは、この国から受けた攻撃に対する報復か?】
これだけ図体がデカければ王都の者たちは嫌でも気づくだろうし、見た目からして竜のため警戒せずにはいられずに近衛騎士団などが攻撃を仕掛けたと言った感じだろう。
【左様、魔力が変質したのち、この地の上空を飛翔したらこのザマだ。少々煩い蝿がいたものでな。排除することに躊躇などのあるまい】
【怒りを覚えることに否定はしないが、ここを壊されると色々と困るのでな。ここは見逃してくれぬか?】
【我に指図するか羽虫、邪魔をするというのなら容赦はせぬぞ!】
どうやら通じなかったようだ。
まぁコイツからしてみればいきなり攻撃されたことに怒ったのにそれを止められたのだ。当たり前だが怒りの矛先はこちらに向くだろう。
竜は、俺が喰われればひとたまりもないであろう大きさの口を開け、全てを灼き尽くすであろうと火球を作り出す。
【昔から思っていたが貴様ら竜は何故にそこまで魔力の使い方下手なんだ? その程度では俺に火傷一つ負わせることは出来んぞ?】
俺はそう呟き、竜から火球が射出される前に発動を阻害する魔法【外妨阻礙】によって発動を抑えた。
【……は?】
止めた瞬間に竜から漏れた困惑の声が黎明の空に響いた。
本当に投稿が遅れてしまい、申し訳ありません((。 ・ω・)。´_ _))ペコリン
実際、家の都合やテスト期間やらが被ってしまい執筆の時間が取れなかったこともありますが、ただ怠惰であったことも認めます!申し訳ありませんでした(>人<;)
ただ、今後もあまり学校などのスケジュールが分からないので次回の投稿がいつになるか、見当がついておりません(・∀・;)スイマセン
それでも私の作品を楽しみにしていただいてる読者の方々に感謝しながら執筆を進めている次第でございます!本当に感謝し切れません( ;∀;)ありがとうございます!((。 ・ω・)。´_ _))ペコリン 長くなりましたが、最後にいつものフレーズで締めさせていただきます!d(˙꒳˙* )
この作品がいいなぁと感じたら評価とブクマをポチポチっとしてくださるとこちらも作成意欲が爆上がりしますので何卒宜しくお願いします〜。それでは、また次回!( `・ω・‘)ノシ




