対魔王
えー、はい。もう聞き飽きたかもしれませんが、遅れました……(・ω・;)ゴメンナサイ
今回も結構頑張って書いたので楽しんでいただけると幸いです⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
会議開始の合図とともに鐘の音が会場に響き渡る。
外界から干渉出来ぬように空間を途絶したにも関わらず、鐘の音が響いたということはあの鐘の音は物理的な鐘の音ではなく、魔法によって音が発生する一種の信号なのだろう。
そんなどうでもいいことを思い浮かべながら、最初に口を開いたアルフェレアの意見を聞いていた。
『……《第六天魔王》に数えられている貴公らには伝えているが、賓客の者たちには説明が出来ておらんので、確認をする』
「……アルフェレアの叔父貴、客人に話も通さずに連れてきたのか? しかも、名前を聞いた限り、あの英雄じゃないのか? そこの白髪」
突然、口を閉じていた魔王の一人が声を上げる。
見た目は大分若く、毛皮のローブを羽織っているが、外見から相当鍛えていることがよく分かる。
身長もなかなか高い巨躯の男だが、一番初めに眼に入ったのは額から伸びている一本の角だった。
――鬼人族、こんな種族の魔王もいるのか。
「その通りだが、何か問題でも?」
俺は眼を細め、先程の発言をした魔王に視線を送る。
勿論、その視線にも魔力が込められており、何かあれば魔力の秘匿によって隠している魔法陣を発動出来るようにしている。
「……いや、問題ということはないが、何故そのような格好をしている、我は貴様が生きていたと言われていたときに一度貴様を見ているが、どうも信用出来ん」
つまり、俺であるという証明が足りぬと言いたいわけか。
俺自身、この鬼人族の魔王に会ったことはないが、二千年前どこかで見かけたのだろう。
「先程リリアスやメアリに言ったことと同じことだが、色々あったと言ったのだ。それで十分ではないか?」
「不満を申し立てるには十分な状況だ。アルフェレアの叔父貴が連れて来たのが誰かと思えば、魔力を隠す臆病者だったと、飛んだ期待外れだ」
呆れるように頭を振る鬼人族の魔王。
正直コイツの言っている言い分は分からなくはない。
簡単に言えば戦闘に行く際に見知らぬ新人を連れて来るようなものだ。
いくら周りが実力者だと言おうと、百聞は一見にしかず、その実力をその眼で見なければ納得するはずがないだろう。
俺は《アイテムボックス》砂時計を取り出し、三十秒で砂が落ち切るように調整する。
「……いいだろう、ただし三十秒だ。それで俺が俺であることを証明しよう」
俺は視線でアルフェレアへ許可を求めると、アルフェレアは何も言わずにただ頷きを返してきた。
「了解だ、叔父貴にも了承を得たんだ、多少暴れても問題な――」
俺は鬼人族の魔王が言を終える前に顔面を鷲掴みにし、ひょいと軽く持ち上げた。
「……悪い、三十秒というのは思いのほか短くてな、早めに終わらせるぞ」
「……ぐがががっ!?」
俺は鷲掴みにしている手に魔力を込める。
勿論、魔王も逃げようと必死に抵抗するが、戦闘を始めた時点で相手を拘束する魔法【強制魔梏桎輪】の魔法を発動させ、既に動けなくしていた。
二千年前から戦闘が始まる前から戦闘を終わらせるというのは短期戦での常套手段である。
その終わらせる時間が短ければ短いほど実力者であると認められ、使った魔法や技が少ないほど美しい勝ち方だという一種の美学の概念すら生まれていた。
ならば、それに俺も興じるとしよう。
「……っ、舐めるなよ小僧ッ!!」
その瞬間、魔王が後方へ跳躍したと思ったらその空間に存在する魔力が爆ぜた。
大気の魔力が灼かれ、空間の型すらも歪めかねないほどの熱量の魔力がこの場を支配した。
勿論の事、その際に【強制魔梏桎輪】の魔法も超常的な熱量によって融かされ、魔法術式が崩壊した。
――《極炎魔法》【豪燄魔劫火滅却】か。
万物を灼き尽くす終滅の焔を造り出し、己をも巻き込む魔法の中の禁忌に含まれる禁呪だ。
それをあろうことか自身の身体に纏わせ、さらにその状況であるにも関わらず眼の前の魔王は笑いを浮かべ、こちらに狙いを定めている。
――多少、手加減しようと思っていたが、甘かったな。
流石に禁呪までも使ってくる相手に対し、手を抜いて戦うというのは一人の魔法使いとして失礼というものだ。
俺は今まで抑えていた魔力を解放し、《極醒魔法》の魔法陣を三門、《終焉魔法》を二門、合計五門の魔法陣を描き、目の前の魔王に標準を定める。
「……灰でも残ればいいが。禁呪を纏っている状態でどこまで耐えられるか、見ものだな」
溢れ出る膨大な魔力を五つの魔法陣に注ぎ込んでいき、全てを滅する光が収束していくが――。
『……小芝居はよせ、アーガルト卿』
冷ややかに響いたその言の葉によって空間を支配していた莫大な熱量と俺の描いた魔法陣は蒸発したかの如く、霧散した。
――《背反魔法》? いや、魔力で相殺したのか?
一瞬にして、この空間内に存在していた魔力を《背反魔法》によって消すことは理論上可能だが、超莫大な魔力を使うため現実的ではない、となると最適と思われる可能性はやはり《固有能力》の存在。
魔力に特定の波長の魔力をぶつけることで相殺し、魔力を消すことが出来るというのは周知の事実であり、その原理を応用したのが、《背反魔法》だ。
だが、《背反魔法》自体万能であるか、と問われれば答えは否、相殺出来る魔力にも術者の保有魔力に依存し、無限ではない。
そう考えると、アルフェレアが《背反魔法》で相殺したかと言われると、これもまた否、先程の空間に存在していた魔力を個人で消すというのは俺も無理だと断言できる。
アルフェレアの実力がそれほどと考えることも出来るが、神でもない存在にソレができるかといえば、望み薄だろう。
「……小芝居? なんのことだ、アルフェレアの叔父貴。我が人間相手に手を抜いていたとでも?」
『抜かせ、その逆だろうに。貴公は、初撃の時点で手を抜くことを辞めた。大方、品定めから、模擬戦へ移行した。違うか?』
「……っ」
図星を突かれたとでも言いたげに鬼人族の魔王――姓をアーガルトというようだが――は顔を顰めるが、アルフェレアは構わず続ける。
『たかが品定めに禁呪まで使っておきながら、よもや気づかぬとでも?』
「……チッ、まだ三十秒経ってなかっただろうが、せめて最後まで闘るくらいいいじゃねえか」
『ここは遊技場ではない。それと、王を名乗るならば、賓客への態度を改めることだ』
「へぇへぇ、わーったよ」
くるりと踵を返す鬼人族の魔王だったが、席に戻る前にこちらを向き口を動かす。
『逃げれると思うなよ。大英雄』
読唇術で口の動きを読むとそう言っているように思えた。
分かっていたことだが、魔族の奴らは大抵素直ではない。先程、アルフェレアが鬼人族の魔王に注意していたが、アレもそうだ。
《極炎魔法》【豪燄魔劫火滅却】は術者すら焼き滅ぼすため、その危険性から禁忌とされたものであり、魔王の身体といえど、そんな代物を長時間使っていては肉体が破壊され、最悪は蘇生が必要となる。
アルフェレアはそれを危惧して、わざと戦闘を中止した。
元より好戦的な魔族がわざわざ戦闘を止めるというのは余程の理由がない限り、考えづらい。
さっきの忠告も建前なのだろうが、まったく面倒というかなんというか。
――まぁ、俺の言えた立場ではないのだが……。
俺は椅子に再度座り直し、横に疲れた様子で座っているリリカとネネに念話で話しかけた。
『……二人とも、さっき俺が戦ったやつの名前とかって知ってるか?』
『わっ! 頭に声が……って、アレ? 声を出してないのになんでカイトくんの言ったことがわかるの?』
『……念話ですか、この感覚久しぶりですね』
『……ネネ、これは念話という魔力を媒体として他者に聞こえないように相手と会話する方法だ。脳に直接響くが、その分普通の会話よりスムーズだ』
念話は通常の大気を媒体とする会話よりも魔力によって伝達する方が圧倒的に早く、先程のやりとりでも十秒とかかっていない。
『……と、それより、先程の質問ですね。あの方は《第六天魔王》第三席、ゼレン=ニグス=アーガルドという方でして、唯一現存している鬼人帝王の個体です』
その言葉を聞いた瞬間、一瞬理解が追いつかなかった。
『……鬼人帝王だと?』
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