魔王会議
さてと、またまた時間が空きましたが、投稿の時間です(*´꒳`*) 遅くなり誠にすいません。久しぶりの投稿ですが楽しんでいただけると幸いです
《転移魔法》が発動し、視界が一瞬真っ白に染まり、次の瞬間、視界に入ってきたものは何かの飛び道具だった。
「――ッ!」
俺は、瞬間的に《時空間魔法》の【極遅延】を発動し、なんとか飛んできたものとの接触は免れたが、前を行っていたアルフェレアには当たったようで頬のあたりから血と思わしき液体が滴っていた。
『……貴公ら、僕の城で暴れ出すでない。こちらには客人もいるのだ、静かにすることをいい加減覚えて貰えると有難いのだが?』
だが、そんなことを気にした様子もなく呆れた口調でものを言うアルフェレア。
見れば、先程傷のあった場所は既に治っており滴っていた血も消えていた。
魔族と称される種族は大概、人類よりも多くの魔力を保持しており、傷なども大気中の魔力を使い、瞬間的に修復することの出来る。そのため、例え腕が吹き飛んだとしても苦痛を味わうことになるが、放っておけば勝手に治る。
凄まじい回復力と生命力を持っているのはその通りだが、当然、その能力も万能ではない。腕が吹き飛んだのなら相応の時間がかかるため、《治癒魔法》などは魔族の間でも使用されている。
「……悪いな、クレードル卿。文句があるならコイツに言ってくれ」
そう言って恐らく《第六天魔王》であろう男の魔族は、喧嘩でもしていたのか分からないが、もう一人の女の魔族を指差してしている。恐らく、こちらも《第六天魔王》の一人だろう。
「はぁ? アンタが先に言い出したんでしょうが! というかクレードル卿、さっき投げたナイフ、当たってない?」
ナイフ……さっき飛んできたやつか。
アルフェレアには思いっきり当たっていたし、俺たちの方にも飛んできていたので俺なら、全く問題ないが、ネネやリリカであれば傷の一つでも負っていたかもしれないのだ。
なんとも気をつけて欲しいものだ。
俺は若干、落胆しながらも足元に落ちている精緻な魔法回路の描かれたナイフを拾い上げる。
「アンタがこれの持ち主か? コレは見たところ相当な業物だ、不用意に投げたりしないことだな」
俺は周りを気にせず、持ち主であろう魔族の前にまで歩いていき、ナイフを手渡す。
「……ああ、ありがと。ん、アンタたちがクレードル卿の客人って者たちかい?」
「……まぁ、一応な。気づいているかもしれないが念のため言っておく。俺たちは魔族ではない。魔王アルフェレアに呼ばれてここにきた者だ」
「……魔族じゃないってことくらい、この部屋に入ってきたときから分かっていたさ。だが、アンタ、魔王でも魔族でもない人間が、なんでコイツのナイフを止められたんだ?」
唐突に、先程眼の前の女魔族と言い争っていた男の魔族が口を挟んできた。
「別にどうということではない、反射的に《時空間魔法》を使い、一定効果領域内の時間を一時的に遅くしたんだ」
そして男の魔族はひゅうと口笛を鳴らす。
「クレードル卿の客人とは珍しいとは思っていたが、中々凄えのが来たな! 手合わせしてえくらいだ!」
「アンタ、バッカじゃないの!? さっき、クレードル卿から言われたこと忘れたの!?」
「へぇへぇ、わーったよ。久しぶりに面白え相手だってのによぉ」
男の方はつまらなそうに自身の席であろう場所に戻り、女の方は落胆しながらため息を溢していた。
『……グレア卿、ルミレス卿、痴話喧嘩をするのは勝手だが、自分らの城でやってくれないか?』
後ろからなんとも呆れた口調でそう溢すアルフェレア。
『……アルフェレア、奴らは?』
俺は他人に聞こえぬように念話を使い、アルフェレアに問いかける。
すると、気を読んでくれたのか、アルフェレアの方も先程の肉声とは違い、頭に直接話しかけて来るような念話での返答が返ってきた。
『あの者たちは両者とも《第六天魔王》だ。先程のナイフの持ち主は第四席ミレア=トフェル=ルミレス。もう一人は第二席ファドラ=二ゼル=グレア。両者ともに腕の立つ、魔界で知らぬ者はいない人格者だ』
人格者……アレでか。
まぁ、俺が話しかけたところで敵意を見せることはしなかったので間違ってはいないと思うが、人格者ならば普通、他人の家で暴れたりしないと思うのだが……。
――魔族なりの礼儀正しさというのもあるのかもしれないが。
『あとは、最近になっては恋仲という関係ともなったようだ』
『……ああ、それで痴話喧嘩か』
見たところ、彼らは種族が違うようだが、二千年前でも異種族での契りはよくあったことなのであまり気にならない。
聞きたいことは聞けたので、念話を切ると会場にいた一人が声をあげた。
「もぉ〜! ミレアお姉ちゃんもファドラお兄ちゃんもここはアルお兄ちゃんのお城なんだよ? 仲良くしなきゃダメ!」
可愛らしい聞き慣れた声が響いて来たので思わず俺は微笑を浮かべてしまった。
メアリだ。
「……メアリ、久しぶりだな。前にあったのはあの時の騒動があった時だったな」
俺は、メアリの座っている方へと足を運び話しかけるが、当のメアリは何故か不安気な表情を浮かべていた。
「え、えっと、貴方は……?」
その反応に俺は一瞬固まってしまったが、直ぐに姿が変わっていたことを思い出し、慌てて言葉を返す。
「メアリ、俺だ。カイト・ルイークだ」
そういうと、メアリが眼を数回パチパチさせ、口に手を当て驚いた表情を作る。
「……え、お、お兄ちゃんなの? でもその姿……って女の子の見た目だよね?」
「……ま、まぁ、色々あったんだが、訳あってこの姿から変われなくなってな」
この姿になったところで力の制御などに於いて魔力操作によって不便などはないが、いく先々で女と間違われるのは何かと面倒だ。
そんなどうでもいいことに思考していると会場の中でクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「……お主、あのカイトなんかい? ククク、いやぁ、面白くなっておるのぉ。じゃが、お主の魔力はあのときの者に似ておる。よう分からんが、そうなんじゃろうな」
笑っている者の方に眼を向けると、金色の尻尾が最初に目に入った。そして、頭の両側にはピョコピョコと動く三角の耳が動いていた。
そして、その尻尾は一本だけではなく複数もの本数に分かれていた。
見た目こそ獣人族のようだが、纏っている存在感と魔力の質はこの場にいる魔王たちと遜色がないほどに強かった。
「……お前、リリアスか。久しいな、前に会ったのはいつだったか?」
リリアス=セフィラ=カーフェルド、《第六天魔王》の第五席に席を置く、二千年前に俺が交友のあった魔王であり、幻魔族の統率者である。
魔族と獣人族の血を受け継ぐ、言わば混血の種である幻魔族。
戦闘能力や洞察力などは純粋な魔族と比べたら多少劣るが、彼らはその特殊な発生条件故、独自の能力を生まれ持って有しており、その能力は通称《幻妖術》と呼ばれている。
生まれ持って有しているというと、固有能力のように思われがちだが、《幻妖術》は個人に発現するものではなく、幻魔族全体に発現しているらしい。
幻魔族自体の個体数は他種族に比べ、だいぶ少ないため、その名ゆえに幻であり本当は存在しないのでは、と考える者もいたが、現に存在しており絶滅もしていないようだ。
「そうじゃのう。お主が姿を消してから何年が経ったかのう? よう覚えておらんが、あの怪物どもを屠るために共闘したところまでは覚えておるな」
「覚えているのは俺も同じくらいだな。変わりないようで何よりだ」
「それは褒めておるのかのう?」
鋭い視線を向けて来るリリアスだったが、俺はその視線が揶揄いの眼差しだということを知っていたので特に気にしていなかったが、気づいた次の瞬間には眼の前に艶やかなリリアスの顔があった。
「そういうお主はだいぶ変わっておるのう? 容姿は勿論のことじゃが、魔力の質が原型があるから分かるものの、一瞬誰だか分からんかったぞ?」
俺の額に指を置き、そう告げるリリアス。
《転移魔法》ではない、魔法を発動するまでの予備動作を見せた様子が全くなかった。となると――
俺に察知すらさせないほどまでに高速で移動しているということだ。
――《幻妖術》か。
「いいのか? こんなところで隠し玉を使ってしまっても」
「カカカっ、元よりこんな子供騙しの通用するような相手はこの場におらんからのう。少々、能力を見せたところで問題なかろう」
笑い声を挙げるリリアスにアルフェレアが、疲れたように問いかける。
『再開を祝うのはよいことだが、カーフェルド卿、会議が始められぬ、あとにしてほしいのだが?』
「私だってそれくらい分かっておるわ。じゃが、何をそんなに急いでおるのじゃ? 人類国家の一つや二つ、我ら《第六天魔王》にかかればすぐに滅ぼせよう?」
冗談混じりにそんな言葉を溢すリリアスに対し、今までとは明らかに違う雰囲気の言葉をアルフェレアは言う。
『……それでは駄目なのだ。あの方との誓約に抵触する……いや、失言だった。今は関係ないことだ』
何やら、意味ありげな言葉を溢すが俺にはその意味は理解出来なかった。
まぁ、アルフェレアという存在がどれほどの時間を生きてきたのか分からないが、少なくとも俺がその自我を持ったときから二百年ほどが経ったときの記憶の中ではアルフェレアという存在の名はあったように思える。
そう考えると少なくとも一万年以上の時をこの魔王は過ごしていることになる。
その気が遠くなる程の時間の中で誰かしらとの誓約を交わしていたとしても不思議ではない。
そして、アルフェレアは空いていた椅子に腰をかけ、こちらに視線を向けて来る。
と言っても、仮面なのでそう思えただけだが。
『貴公らの椅子も用意しよう。そのまま立ち続けるというのも些か辛いだろう?』
「それはこちらとしては助かるが、配下の者たちはいいのか?」
会場を見渡すと、椅子に腰をかけている六人の魔王とその配下であろう者たちがその横に立っている状態だった。
『……この程度で、疲弊する者などは魔王の配下にはおらんのでな。無論、休息は必要だが、この状況に不満を申し立てる者はおらんだろう。だが、貴公らは僕が呼びつけた賓客だ、その者たちに無礼を働く訳にはいかんだろう』
そう言った次の瞬間には、俺、ネネ、リリカの三人分の椅子が創り出され、俺たちは言われた通りそれぞれ、席についた。
『それでは出席者及び来賓の方々に空席は無しということで魔王会議を始めさせて頂きます』
恐らく、進行役を務めているのであろうアルフェレアの配下が手を挙げると魔法陣が展開され、会場全体の空間が歪んだことが分かった。
――外界からの干渉を完全に遮断したか。
いよいよ始まるという合図がされたのだ。
面倒なことは眼に見えているが、それ以上に未だに不安のような緊張感が抜けることはなかった。
この作品を書いていて思ったことがあります。毎日投稿している方とか書き溜めしてるにしてもすごい執筆速度だと思います!(というか書き溜めしてなかったらすごすぎる) まじでスランプのときとか全く書けないので投稿が遅れたりするのですが、展開を考えるのって難しい!改めて小説家の方はすごいと思い知らされました……_( _´ω`)_ まだ素人も素人ですがボチボチ頑張っていきます⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
この作品がいいなぁと感じたら評価とブクマをポチポチっとしてくださるとこちらも作成意欲が爆上がりしますので何卒宜しくお願いします〜。それでは、また次回!( `・ω・‘)ノシ
長くなってごめんなさい……!((。 ・ω・)。´_ _))ペコリン




