魔王第一席
はーい投稿のお時間です。まず、こんだけ期間が空いてしまい申し訳ありませんでした……! 例のウイルスにやられました……!ヾ(⌒(_×ω×)_バタンキュー
まぁ、頑張って書いたので楽しんでいただければ幸いです〜(*≧∀≦*)
「……アンタが、《第六天魔王》第一席アルフェレア=メジア=クレードルか」
俺は、眼の前に座っている魔族に魔力を乗せた言葉を放つ。
威嚇とも捉えられるような行動だが、呼び出したのはそっちなのだ、警戒しない方がおかしい。
言葉に乗せた魔力は普通の龍であれば逃げ出すほどの量をぶつけたのだが眼の間の玉座に座っている魔族は微動だにしていない。
無論、ネネやリリカに影響がないようにこの城に入る前から《背反魔法》の【受動影響阻害】を彼女たちにかけているため気づいていないようだが、眼の前の魔族はそんなものを発動している様子は見られないため、直にこの魔力を受けているはずなのだ。
――やはり、魔王の名は伊達ではないということか。
『……貴殿が冷酷な神殺しか。まずはこのような呼びつけをしてしまい申し訳ないない』
「……ほう」
眼の前の魔族――魔王アルフェレアの声は予想よりも若い声をしていて少し驚いた。
魔王の顔をよく見るとその顔には複雑な魔法陣のような模様が刻まれた仮面によって覆われていた。
仮面に何かしらの仕掛けがないか赤眼で解析をするが、特にこれといった特徴は無い。
「……本来、他人の容姿など口出しはせぬ質だが、あえて言わせてもらうと、賓客の前で素顔を晒すことをしないというのは一国の王としてどうなのだ?」
来て早々に容姿について言われるとは思っていなかったのか若干狼狽えた様子をする魔王だったが、すぐに納得したように答えを返してきた。
『……それはすまぬ。僕は元より肉体を持たぬ体質でな、顔と言えるものが存在しないためこうして面を顔として使っているのだ』
肉体を持たぬ種というのは、この世界であれど稀である。
魔物には腐食種や亡霊、スケルトンなどのアンデット族は大概肉体を持たないが、生を持つ種族で肉体を持たぬのは魔力の祖である精霊くらいだ。
だが、眼の前の不審感漂う仮面の魔王はどう見ても精霊には見えないうえにどうもアンデットである可能性も低そうだ。
一応、気になったため奴に向けて【鑑定】を発動させたが、次の瞬間に異変に気づいた。
『【鑑定】の効果が阻害されました』
眼の前に普段ステータスにて確認してきたこの世界の意思と思える文字が表示されていた。
――《背反魔法》を発動した様子はない。ということは影響阻害などの固有能力か。
となると、先程の魔力をぶつけたときの余裕もヤツの固有能力の可能性がある。敵にするとだいぶ厄介だな。
だが、今のところ奴に敵意は感じられない。取り敢えず、本題を聞き出すとするか。
「……仮面の理由はわかった。俺が、アンタの特性を理解していなかったのが原因だ、会って早々に失礼だった」
俺は奴に頭を下げる。先程のやりとりは完全にこちらの不手際だったからだ。
『いや、構わん。こちらとしてはわざわざ貴殿を呼びつけたことを失礼に感じていないか心配なほどだ』
「別にこの程度はなんとも思っていない。それより、俺をここに呼び出した理由……教えてもらうぞ?」
『……そうだな。まずはこれを見てほしい』
その瞬間、空間の中に一枚の巨大な地図が映し出された。
どうやら、ここ数百年の間に書かれたものらしく、知らぬ地形が多々あった。
『……この中心にあるのが、この僕らが統治している六大魔界だ。そして、問題としているのはここから北東の位置に存在するローズニア帝国という国だ』
帝国、その言葉に俺は反応した。
「……俺の知っている帝国とは名が違うが、一度あの国は滅んだ筈だ。また誰かが建国したのか?」
種族大戦の中期、七つの人類国家が手を組み他種族との争いに参加したが、邪神が顕れてからは人類国家は三つの国が滅ぶこととなった。
その三つの中で二番目に滅びたとされるのが帝国という国だった。
なんでも、帝が戦や争いの知識が乏しかったらしく軍備もままなっていなかったため、混乱によって自然と滅びたというなんとも馬鹿馬鹿しい話だった。
――まさか、再建しているとは思っていなかった。
俺も何度か足を運んだことがあったが、あまり気分の良い場所ではなかったことが印象として強い。
果たして、今の帝国はどう変わっているか、見ものだ。
『……左様、ここ数百年ほど前に作られた国だ。位置としてはこの国の隣国にあたる場所故に、交流を持たずとも情勢を知ることは悪くないと感じ、先日使いを送った』
「ほう、それで何を精査させたんだ? 恐らく、適正な手順など踏まずに潜入させたんだろう?」
先程の言葉が嘘に思えた訳ではないが、元より魔族は他種族との関係を持つことを嫌うため、他国の情報を手にするということは間者を相手国に送り、状況を探らせるというのは常套手段だった。
『……そう言われると耳が痛いが、その通りだ。僕は其国の帝に関する情報を主に精査させたのだが、その途にて厄介があったようでな』
「……厄介だと? 送ったのは貴様の配下だろう、腕が立たぬとは思えないが?」
『無論、僕の陣営に与する配下の上位五本の指に入る内の一人を送った。中でも偵察や暗殺に長けた霊魂種送り込んだが……どうやら始末されたようだ』
魔族の中でも魔王の配下ともなれば、人類にとっては、かつて亜龍と同位に君臨するほど恐怖とされていた。
二千年前の常識と今とではだいぶ違うのだろうが、《第六天魔王》の名が変わった様子は今のところ無いように思える。
一番の証明となっているのが目の前にいるアルフェレアだ。
アルフェレアという名は二千年前の時代であろうと、人類、魔族の間で知らぬ者はいないとまで言われた重要人物とされている。
そのアルフェレアが、もし人類のように魔族も戦闘力が下がっていたとしてもそこら辺にいる魔族を配下に加えることは少ないだろう。
というか魔族は長命なため、配下が変わるということは、基本的に何者かに殺されるか、寿命や病などで倒れた場合だ。
後者は基本的、強靭な肉体や《回復魔法》を有する魔族にとっては無縁なことであり、殆どの場合前者に該当する。
そんな魔王の配下が人類国家に乗り込んだ程度で消息を断つとは普通であれば考えづらい。
となると、考え得る可能性は絞られてくる。
俺は一本、指をを立て可能性を指摘する。
「……考えられる可能性は二つ。一つは帝国に、魔族を殺すための秘策……それも、霊魂種すらも見つけることのできる技術があるということ」
二つ目と二本目の指を立て可能性を説明する。
「……二つ目は帝国がの背後に何者かが存在していること」
俺がそう言うと、ふむとアルフェレアは声を洩らす。
『やはり、貴殿もそう感じているか』
まあ、魔王直属の配下を送り込んで始末されたとなれば、精査の目的としていた帝の背後にその何者かが存在していると考えるのが普通だ。
だが、霊魂種を始末出来るとなるとやはり並大抵の相手ではないな。
元より霊魂種は生命と亡者の間に位置しているような存在であり、一応目には見えるが魔族が有している魔眼を使うことでその存在を視認出来るらしい。
霊魂種と亡霊は同じ存在だと思われがちだが、霊魂種は不可視の肉体を有しているが、亡霊は肉体を保有せず憑依によって物体を動かす。
魔物と魔族の差はハッキリとしているようで、霊魂種は亡霊と同じに扱われるのは気に食わないらしい。
『……ふむ、どうやら急いだ方がよいようだな』
いきなりそう口にするアルフェレア。その声には焦りのような感情がこもっているようだった。
「……何かあったのか? こちらとしては聞きたいことが多くあるのだが?」
こちらとしては問題の内容は分かったが、根本的にここに呼ばれた理由が明確になっていないので、説明が欲しいのだが目の前の魔王の様子を見る限り、余裕があるとは言えなさそうだ。
『……すまぬ。先程、こちらから帝国へ再度送った使いの魔力が途絶えた。霊魂種のやつと同じように始末されたようだ』
「……なるほど」
俺は小さく呟き、内心で舌打ちをする。
ことは思いの外速く進行しているらしい。
再度送った使いも柔な者ではないはずだ。
そんな奴らが悉く返り討ちにされるとなると考えられるとしたらそれは……。
「……もしかすると堕討神と呼ばれていた方たちでしょうか?」
リリカが唐突に口を開いた。
「……堕討神だと? なんだそいつらは」
「…えっと、こちらの世界では邪神と呼ばれていた神々ですね。何か原因があって下界へ堕とされたとお母様から教えられました」
邪神……その言葉に引っ掛かりを覚えた。
邪神はこの世界の負の感情、理念、現象などの負の概念によって地上で生まれた存在だとヴェルフェンの奴から聞かされていた。
だが、堕討神と呼ばれる神々が邪神どもと同じ存在なのだとしたら、話が食い違う。
――なんだ、何か根本的な勘違いをしているような……。
そう考え込んでいると、何処からか音色のよい鐘のような音が聞こえてきた。
『……時間のようだ。すまぬが、要件や細かな情報は《議定の場》にて話すこととする。貴殿らには迷惑をかけてばかりだが、平に赦してほしい』
謝ってばかりだなこの魔王。
流石にここまで言われるとこちらとしても悪いように思えるが、元からこのような性格なのだろうか?
一人称からしても控えめな様子はあるため素の性格の可能性が高い。
王としてのしての威厳は確かに有しているが、なんとも調子が狂う。
などとどうでもいいことを考えていたら、いきなり床が揺れだした。
何かと見れば、アルフェレアの座っていた椅子が動いたようで、その後ろには人が三から四人入れるような小部屋が出現し、その部屋の中心には精錬され緻密な《転移魔法》の魔法陣が描かれていた。
『これを使い、《議定の場》へと向かう。僕のあとをついてきて欲しい』
「……了解だ。二人も準備はいいか?」
「……う、うん! やっぱり緊張するけど、覚悟はしてきたからね!」
「私も準備出来ています。何やら、面倒なことが起こっているようですが、速く終わらせて学園へ戻ることにしましょう」
「そうだな、せっかくの学園に入ったんだ。少しも無駄にはしたくはないからな、速く戻ることにしよう」
俺はそういい、アルフェレアの後を追い、《転移魔法》の魔法陣に足を踏み入れた。
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