《第六天魔王》
一ヶ月経ってた……(・ω・`)
失踪したわけじゃないです!これからもボチボチ書いていきますので投稿遅いですが宜しくお願いしますm(_ _)m
〜魔界・アルジェードアモン〜
「……カイトくん、ここって」
「……洞窟のようだが、バカほど広い。恐らくだが迷宮の一種だな。だが、何故こんなとこに?」
転移が完了すると、目の前に広がっていたのはどこまで続いているのかが分からないほど暗く、涼しげな洞窟だった。
俺が疑問の声をあげるとアムリスが口を開いた。
「ここは魔界・アルジェードアモンのジスザーム迷宮。魔王アルフェレア様が居城としている場所の地下に広がってるバカデカい迷宮だ。リューネのやつ、窮屈だが最適の場所を選んでいる」
「……どういうことです?」
俺の後ろにいるリリカが疑問を投げる。
「……まぁ、簡単に言えば結界の効果が及ぶかどうかだな」
「……結界ですか?」
「ああ、魔王は基本的に外敵の侵入を感知するために居城を中心に一定範囲内までデカい結界で覆っている。下手に侵入すれば即刻バレてその場で……って、訳だな。その範囲内にここは入っているだが、迷宮内では結界の効果は発揮出来ない仕組みになってんだ」
「なるほど、となるとここの出口もその結界の範囲内に入っているのだろう?」
「当たり前だ。外敵から護る結界に迷宮の出入り口は入ってなかったらそのまま攻められるからな」
「……ここに転移した理由は分かった。迷宮内に効力が及ばない理由は大方、素材の採取なんかで毎回結界の効力が発動するのが面倒とかの理由だろう。それで、肝心な出口はどこなんだ?」
俺が言うとアムリスは口角を上げる。
「……なんでもお見通しか。迷宮に効果がない理由はそれで大体正解だ。それに出口俺が案内する、然程時間はかからないから安心してくれ」
アムリスの一言は頼もしく聞こえたが、どうにもピリピリとした何とも形容しがたいこの不安は消えていない。
この会合の目的や、俺をこの場に呼んだ魔王の真理など謎として残る疑問は多々ある。
――なんとも、騒がしい集いになりそうだな。
俺はそんなことを思い浮かべ、洞窟の出口へと向かうアムリスの後を追った。
◆
〜魔王城ルーグアルトス〜
俺たちはアムリスの案内のもと、迷宮を抜けて魔王城の前に出ていた。
「……ここがアルフェレアの居城か。なかなか大きいな」
目の前に広がるのは見上げても一番上が確認できないほど大きく作られた難攻不落という言葉がよく似合いそうな城だった。
赤眼を通して、全体の魔力の流れにざっと眼を通すと、ある程度この城の罠や城に使われている素材などが分かった。
「……この城の素材、魔硝石と魔鉄鋼か。なかなか高水準な純度をしている。《創造魔法》によって創られた部分もあるが、大部分は《錬金魔法》によって合成された合金などだな」
俺は、城壁に手を触れて魔力を流し込んだ。
魔鉄鉱と魔硝石はどちらも魔力の源である魔素を原料として作られるため、素材そのものがもつ魔力に別の魔力を流し込むことで、構造精度の良し悪しを確認することが出来る。
「……ふむ、硬度は然程変わりがないようだな。やはり、良い素材を使っている」
そう呟いたのち、魔力を流すことを辞め、壁の状態を戻したときだった。
コツコツと、軽い足音が響いてきた。
音の方に眼を向けると、そこには青い髪を持った女性が静かに佇んでいた。
「……何者だ、この城の者か?」
俺が眼の前の女性に問いかける。
「対応が遅れてしまい申し訳ありません、お話は聞いております、カイト様、ネネ様、リリカ様。私はアルフェレア様の秘書兼魔族幹部をしているクレア・リーネスと申します」
「そうか、ではアンタがここから先は案内してくれる、ということか」
「……その通りで御座います。ですので、アムリス、貴方の案内はここで終わりとなるけどいいかしら?」
いきなり、目線を俺からアムリスに向けて話を振る。
それにアムリスは飄々と言葉を返した。
「元から魔王城に着いたらアンタらアルフェレア様の幹部に任せるつもりでいた。俺はこれからやることがあるのでね、主の元に戻らせてもらう。それじゃ、任せた」
アムリスはそう一言言い残し、《転移魔法》でその場を去っていった。
《転移魔法》の魔力がこの場から消えたことを確認してから、俺は髪を弄り始める。
「やはり、アムリスはアルフェレアの部下ではなかったか」
「……マスター、いつから気づいていたのですか?」
リリカが何故と言った表情でこちらを見つめていた。
その様子に俺は少し意外と感じてしまった。
「……ネネはともかく、リリカは気づいていると思ったのだが」
「……申し訳ありません。魔力の感知は優れていると思うのですが、種族の判別がどうも苦手で……」
リリカは少し俯き気味に言葉を溢す。
魔力の判別は個人差があり、鍛錬よってどうにかならない場合もあるが、リリカほどの実力があればある程度はと思っていたが、少しして、軽率な発言だったと気付かされた。
表情からしてリリカには咎めているように聞こえてしまったのかもしれない。
相変わらず、俺は言葉選びが下手だ。これは克服せねばならない目標の一つだ。
俺は慌てて訂正する。
「リリカ、誤解を招く言い方だったかもしれないが、これだけは言わせてくれ。お前にはお前なりの力がある、それを振るいたいように振ってくれ」
――何故、一言『すまなかった』と言えない!
先程目標を再度確認したばかりだというのに何故か口から出ていた言葉は思っていたこととは違うものだった。
これは、克服までは時間がかかるかもしれない、それも千年ほどの時間だ。
俺は心の中で自身の不甲斐なさに懊悩していたが、リリカの表情は優しく、柔らかい笑みだった。
「はい! マスター、これからもマスターのお役に立てるように精進していきます!」
「……ああ、期待しているぞ。勿論、ネネもな」
いきなり、自分に話を振られたことで少し困惑した表情を作るネネだったが、すぐに頷きを返してくれた。
「……と、話が逸れてしまったが、いつから気づいていたかという話だったな。そうだな、気づいたのはリューネに会ってから、アムリスが魔族であると聞かされたあたりだな」
確証はなかったのだが、幹部仲間という彼女の言い回しとアムリス自身が魔王幹部に広く顔を見せていたことから推測したうえ、アムリスから感じた魔力にリューネの魔力が含まれていなかったことが挙げられる。
吸血鬼の吸血行動は友情の証のため、無闇矢鱈に吸血するということはあまり聞いたことのない話だ。
これもまた推測だが、アムリスはメアリの配下であり、魔王幹部同士の証にディルメイドの血を吸わせたのではないかと考えていた。
そのため、アムリスはアルフェレアの幹部の線は低いのではないかと思ったのだ。
「魔力には思っているより多くの情報が見てとることが出来る。その波長などから推測して種族を割り出し、可能性の範疇だったが、ある程度の仮説を立てたと言うわけだ」
実際、ネネとリリカがリューネと会ったのは俺が二人に今回の件を説明した後なので少し考えるには時間がなかったこともあるのでそう考えると先程の言葉にさらに罪悪感を憶えるが、今はそれどころではない。
「クレア、まだ時間はあるか?」
そういうと、クレアは【魔導機構時計】の魔法を発動させて現在時刻を確認する。
「会合の開始時刻まで残り三刻といったところですが、会合の前にアルフェレア様より皆さまを謁見の間に通すように命を受けています」
「……謁見の間、そこで今回の要件を話すということか」
「恐らくはその通りかと」
ここまで回りくどい呼び寄せをしたんだ。
賓客が時間に間に合わないというのも失礼な話だからな。
「……ということだ。話はまた後でするから、今はそっちに向かおう」
「そうだね。今更ながら、緊張してきちゃった」
「ネネさん、安心して下さい。もしネネさんやマスターの身に何かあったその時は……ふふっ」
リリカの眼が笑っていない笑顔にこの場の全員が顔を青くしていたが、リリカが頼もしいのは確かなので良しとした。
二人とも準備が出来ていることが確認出来たので、俺はクレアに目線を向けた。
「それでは、魔王アルフェレア様の下へご案内させていただきます」
そうして、俺たちは魔王の城へと足を踏み入れた。
◆
〜魔王城ルーグアルトス・謁見の間〜
魔王城に足を踏み入れて、迷路のような城の中をぐるぐると色んな場所を周り続けて半刻が過ぎたくらいで俺たちは目的の場所へと辿り着いた。
「……ほう」
眼の前に佇むのは巨人族ですら余裕を持って入れるであろう巨大で豪奢な扉だった。
扉の素材は城壁と同じように魔硝石と魔鉄鉱によって作られているが、その他に《背反魔法》の魔法陣が組み込まれた結界が二枚重ねで張られている。
やはり謁見というだけはあり、防御面でいえば文句のつけようが無いだろう。
少なくとも属性魔法の百位階程度ではびくともしないだろうな。
「……これ、まともに押したところで開きそうにないが、どうするんだ?」
「ご心配ありません、カイト様。アルフェレア様へ、カイト様方がいらっしゃったことをお伝えしてきますので、ご迷惑をお掛けしますが、ここでお待ちいただけると幸いです」
「……分かった。とにかく待っていよう」
「それでは、少々失礼します」
クレアがそう一言いうと、彼女の身体は砂のように塵になっていき、完全な塵となったのちに扉の極小な隙間に入っていった。
そして言われた通り扉の前で待っているとネネが、肘で俺を優しく小突いてきた。
「ねぇカイトくん。さっきの人って魔族さんなんだよね? あの人の種族ってなんなのかな、あんな霧みたいに……」
どうやらネネは彼女の種族というもの知らないようだな。
まぁ、知らなければ種族ごとの能力というのは自分たちからすれば異能であり、恐怖の象徴だ。
「……怯えなくても平気だ。あの力は《散塵化》という固有能力で、この能力を使えるのは不死者という種族だ」
不死者、その名の通り肉体が破壊されたとしても魔法を介さずとも身体の蘇生が可能な人智を超えた力をもつ種族である。
だが、不死といっても肉体を生成する魔力の概念ごと破壊してしまえば、流石に再生されることはないが不死者を神と祀っている魔族や人間もいるため、あまり関わりたく無いというのが本音だ。
「不死者は魔力も高く、耐久性もずば抜けて優秀だが、何もしなければ基本的に無害だ」
「……へぇ〜、少し怖いけど仲良く出来るかな?」
「見たところ、人類に対しての憎悪などの感情を持っているようには感じられなかった。後で話しかけてみたらどうだ?」
「そ、そうしてみようかな!」
と、そんなことを話していると、扉の向こうからクレアの声が聞こえてきた。
『カイト様、ネネ様、リリカ様、お待たせ致しました。防壁の扉の開く準備が出来ました』
その瞬間に、城が揺れているかのような揺れと共に眼前の扉が少しずつ開かれていき、部屋の中が徐々にみえてくる。
やがて、玉座に座っている一人の魔族が見えてくる。
周りには誰もおらず、玉座の魔族だけが部屋の中央に座っているように見えた。
恐らく、クレアはこの場にいるのだろうが《散塵化》の影響によって見えていないのだろう。
俺はその魔族を見据えた。
「……アンタが、《第六天魔王》第一席アルフェレア=メジア=クレードルか」
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