学園長
私生活の方で忙しくなり、投稿が送れました!猛省!!m(_ _)mゴメンチャイ
力を見せたことで俺の自己紹介は終わり、自身の席に戻った。
その後、クラスメイト全員の自己紹介が終わり、寮に移動の時間になるまで自由行動となった。
そして、席にて暇を潰すことを考えているとニヤニヤしながら前の席にいたアムリスがこちらに話しかけてきた。
「……いやぁ、すげえ魔法だったな。今の」
「別にどうということはない。修行をすれば百位階の魔法など誰でも使える」
実際、俺も修行をして今現在会得している【スキル】も大半が修行によるものだ。
修行ではなく、誰かの指南によって得たものは《時空間魔法》や《極醒魔法》などの魔法の常識を逸脱したものだ。
《時空間魔法》は時間軸と空間軸を操っている時間神と空間神のことを理解し、それぞれの軸に干渉する術式を魔法に組み込むことによって初めて成せる魔法であり、これは俺のいた時代に何人かやっていて《時空間魔法》を使える者は少なくはなかった。
――まぁ、技術が失われてこの世界では《時空間魔法》は愚か、百位階の魔法すら現実的ではないようだが。
と、そんなことを考えているとアムリスの声で現実に引き戻される。
「おーい、聞いてるかー?」
「……悪い、少し考え事をしていた。それでなんだ?」
「……あー、お前に聞きたいんだが、その横にいる赤髪のヤツがスゲぇ睨んで来るんだが……」
横を見ると、リリカがジトーとこちらを睨んでいた。
だが、その視線に殺意などの感情は見受けられない。大方、俺が見知らぬ者と話していたことを良く思わなかったのだろう。
「警戒を解け、リリカ。コイツは悪いヤツではなさそうだ。無闇矢鱈に警戒の眼を向けぬ方がいい、逆に警戒されるぞ」
すると、リリカはハっとしたようにこちらに頭を下げた。
「……申し訳ありません。何故か分かりませんが、この方とマスターが話しているとどうもモヤモヤして……」
モヤモヤ……? ああ、そういうことか。
俺は若干、揶揄うように口角を歪めリリカを見た。
「リリカ、妬いたのか?」
「……んな!」
そういうと、リリカは顔を真っ赤にしてしどろもどろになった。
「や、妬いてなんて、そんな……多分、従者としての警戒心が!」
「ハハ、そう真に受けるな。冗談だ」
そういうとようやく泳がされたことに気づいたのか、ポカポカとこちらを小突いてくる。
「……君たちって主従関係って解釈でいいのか? 随分と仲がいいんだな、それとそっちの白髪の子も君と一緒にいたと思ったけど?」
アムリスはペンでネネのことをさしていた。
「あ、えっと、ネネ・クライフィアと言います! カイトくんとパーティーを組んでるんだ〜。よろしくね!」
「よろしく頼む。あのカイトと一緒にいるんだから君たちも強いんだろ? ちょっと手合わせでもしてみたいな」
アムリスは突然そんな提案をしてきた。
ほう、なかなか面白い提案だな。だが、手合わせをする相手に俺が入っていないようだが何故だ?
「私は手合わせでしたら、全然構いませんよ? 力を使っていいのでしたら」
「私もいいよ〜。最近鍛えているから、結構強くなってると思うんだよね」
「おお! ノリがいいな。それじゃ、今度手合わせをしてもらおうかな?」
なんか勝手に進んでいるので俺はアムリスの肩を掴み、話しかける。
「……二人がいいのなら手合わせの話はいいのだが、アムリス、何故俺とは闘ろうとしない?」
「……あ、あー、いや、さっきのあんなの見せられたら勝てる気がしなくてな」
「何を言っている。ネネは修行始めたばかりでまだだが、リリカはあのくらいの魔法朝飯前だぞ?」
すると、サァーという音が聞こえてきそうにアムリスは顔を青ざめさせた。
「や、やっぱり辞めておこうかな? 始まったらすぐにやられそうで怖いな」
「まぁ、そう謙遜するな。お前の力もなかなか強い、直ぐに百位階くらいならば使えるようになるだろうな」
実際、アムリスの魔力は先程の教師の魔力よりも多い。
精霊の力を使っている者よりも魔力が多いというのは必ず、ある程度の鍛錬が必要なはずだ。
アムリスもネネと同じく磨けば光る期待の原石といえよう。
「……さて、指定の時間まで時間がある。ネネ、リリカ、お前たちは何をしたい? 時間までなら自由行動らしいからお前たちの好きにしていいぞ」
「それはありがたいのですが、マスターはどこへ?」
「ああ、何やら先程の教師から呼び出しをされてな。少し面倒だが行ってくる、後々何か言われても面倒だからな」
「……さっきの魔法のことじゃね?」
横からアムリスがクスクスと笑いながら、口を覆っている。
――コイツ、他人事だと思って。
まぁ、腹は立ちはするが、アムリスは面白そうにしていたので別に放って置いていいだろうな。
「……それじゃ、少し行ってくる」
そう言い残して俺は教室を出ていき、呼び出された場所とやらに向かった。
◆
「……それで、こんな大勢で一体俺になんのようだ?」
俺が呼び出されたのは一種の応接間のような部屋で十人ほどの教師が並んでおり、真ん中の椅子に俺は座り、その目の前にもう一つ椅子があり、そこには学園長と書かれたプレートが装飾された服を着た女が座っていた。
「……おー、学園長に初対面で結構な態度だねえ。君、愛想が悪いって言われないかい?」
いきなり、目の前の女がそんなことを言ってきたが、俺は特に気にせず脚を組んだ。
「俺を呼んだ理由はそんなつまらんことを言う為か? それなら俺は教室に戻りたいのだが、入学したてで気になることがあるのでな」
「ま、まぁ、待て。まず、私はこの学園の学園長リューネ・ジュネスという。君を呼んだのは試験の時の魔力測定のことだ」
魔力測定……ああ、あの水晶が脆くて壊れたやつか。
正直、あの水晶はこの世界の人間を対象に作られたもののようだったからな、俺が使ったところでまともな結果が出なかったのは当然と言えば当然だろう。
「結果を聞かされたときは耳を疑ったよ。十億なんて魔力量を持ってる人間がいるなんて思わないだろう?」
「だが、実際にこの学園にあった吸魔測定水晶に俺が魔力を流したら壊れたんだ。それが証拠にはならんのか?」
「ああ、聞いているよ。まさか、魔力数値百万用の吸魔測定水晶まで壊されてしまったとね。だが、どうもそれでは信じられる要素が少なくてね」
なるほど、つまるところここに呼び出した理由は、魔力数値を十億であるということをどうにかしてこの場で納得できるように証明しろということか。
そういうことなら簡単だ。
俺は椅子から立ち上がり、一つある提案をした。
「魔力の数値が気に入らないというのなら、証明してやる。だが、リューネ学園長、アンタにはその証拠を見せてもいい。他の教師の者たちには少し退出してもらいたい」
「ほう、その理由を訊いてもいいかい?」
「もう気づいていると思うが、俺は少し普通とは違う。その普通ではないことの一端を見せるんだ。このことはあまり他者に知られたくないのでな」
「そういうことならいいだろう。君たち、彼の言う通りにしたまえ。これは学園長命令だ」
「……で、ですが!」
教員の一人がリューネの言葉に突っかかるが、リューネが少し眼を細め睨むと、すぐに諦めたようにすごすごとこの部屋から退出していった。
やがて、この部屋には俺とリューネだけとなった。
そしてリューネはニコリと微笑みながら脚を組み直していた。
「さて、これでいいんだろう?」
「ああ、これでお互い話しやすくなっただろうしな。それじゃあ、まず――」
俺はステータスの一部だけを展開してリューネに見せた。
俺が見せたステータスはレベルとスキル以外の能力類だ。
種族などの《理外の生命》の意味するステータス表記を見せると色々と面倒なことになりそうなので、一応伏せて見せたのだ。
リューネはそのステータスをみて一瞬眼を丸くしたが、すぐに顔を手で抑えて笑い始めた。
「……クハハ、やはり、私の眼に間違いはなかった。やはり、貴方様だったのですね。我らが英雄カイト・ルイーク様」
「……その反応、お前、やはり人間ではないだろう? わざわざこんな他国の地になんのようだ、魔族リューネよ」
そうだ。眼の前の人間のようにみえるリューネは魔族なのだ。
もとより魔族の魔力など見慣れているので最初から分かっていたが、魔族は他種族との関係を持つことを極めて嫌っている。
そのことから他種族の地を踏むことも嫌い、固有の領土から離れることをしようとしない。
そんな堅物な魔族がわざわざ人間に変装してまでこの場所に来た理由は何なのか。
「……実は貴方様に折り入って頼みがあるのです」
「魔族が人間の俺に頼みだと?」
「はい、元よりこの学園に学園長として就いた理由は人種の観察及び監視ですが、直近である命令を受けたのです。そして本題ですが――」
リューネは真剣な眼差しで一息でその目的を告げた。
「――単刀直入に言います。貴方様には魔界にきて欲しいのです」
テストが近いので次回は少し時間が空くかもしれませんが、まぁ元からの投稿が亀さんなので支障はないかもですが、気長に待っていただけると幸いです!




