測定
テストが終わったので投稿しますー!(*'▽'*)
〜第一室内運動場〜
「ここが室内運動場か」
俺たちは指示された室内運動場という場所に来ていたが、中々の広さがあり模擬戦をするのであれば一対一で行うならば十分と言えよう。
『皆さんにはこれより魔導測定を行ってもらいます。吸魔測定水晶を用いて計測しますのでグループごとに並んでください』
アナウンスが流れ、その通りに並び終えたのち、巨大な結晶体のような塊が現れた。
――《召喚魔法》、中々面白いものだな。
《召喚魔法》――その名の通り、別の場所に魔法を繋げそこにある物や生物を召喚する魔法だ。
《転移魔法》にも似ているが物を指定するにも術式の構築に多少時間はかかるので正直、《転移魔法》を使った方が速いが、本来の術式の難易度が少し高いうえ、技術が失われているとなると仕方がないという気もしてくる。
アイテムボックスという手もあるにはあるが、あの質量の物を常時入れておくと時間を止めるために魔力が吸われ、あっという間に魔力がすっからかんになってしまう。
俺もアイテムボックスにデカイ魔物の屍はいくつか入っているが、正直魔力の減っている速度は気にならない程でしかないが、この時代の人間などに於いてはそうも行かないだろう。
「この水晶に手を触れてください。触れると魔力を自動的に吸い上げ、魔導測定値、いわゆるMPと呼ばれる数値を可視化します。これは魔法の適正値でもありますので高ければ勿論、魔法の使える幅が広がりますし、低くても上げると手段はありますので、あくまで今の目安と考えて下さい」
そう説明されて、次々と生徒の魔力測られていく。
だが、皆測定されていく数値は二千から多くて五千ほどだ。
そして、やがて俺の番となった。
「それでは、測定器に手を置いてください」
職員にそう言われたときにそこで俺はふと気になったことを聞いてみた。
「……気になったんだが、水晶って測定できる魔力数値の限界とかってあるのか?」
そう訊くと何故か職員は渋い顔を作った。
「……一応、確認として聞きますが、何故そんなことを聞いたんですか?」
「単純にどれだけの魔力数値に対応できるかが気になっただけだ。深い意味などない」
「それでしたら、この水晶は魔力数値十万までの測定出来ると言われています。尤も、未だにこの数値を超えた者はいないのでそう言われているだけですが」
――十万か、その数値ならばネネも超えているな。
しかし、十万以上の魔力を感知した場合、壊れたりしないだろうか?
弁償となったら面倒だが、いくら高価であっても白金貨は有れば十分であろう。
もし、替え効かない物だとすればこの水晶の構造は理解しているので創ればいいだけだ。
なので、俺は遠慮なく水晶に手を置く。
「……ほう」
確かに魔力を吸われる感覚を感じられる。
【呪吸魔壊刻印】を使われた側はこんな感じなのだろうか?
やがて、水晶の吸収が終わり、水晶に文字が浮かび上がった。が――
『測定結果:測定不能』
そう一言書かれていた。
やはりか、と内心納得しながらも同時に壊れなくて安心している。
だが、この状態でもこの後しっかり機能するのだろうか?
もし俺の影響で動かなくなったらそれは壊したということになる。
それは面倒極まりない。
「……これ、結果的にはどうなるんだ?」
「……」
職員に話しかけても返事は返ってこない。
ただ呆然としていて、ワナワナと震えている。
「……まさか、水晶が壊れた? そんな、そんなはずは……! 学園設立以来、エラーを示すことなどなかったはず!」
職員は震えた手で水晶に触れると、ボウと再度文字が浮かび上がる。
『測定結果:6,502』
――ふむ、どうやら壊れては無さそうだな。
測定結果の最高値を超える値を検出すると自動的に測定不能になるということか。
何はともあれ、壊れてはなさそうなので安心した。
「……驚いてるところ悪いんだが、俺の結果ってどうなるんだ?」
「……い、今まで、歴代の教師であっても十万という数値を超えることはありませんでしたが、不測の事態を考慮して魔法測定値の限界が十万以上の水晶があるので、そちらで行います」
「……ふむ、その水晶の限界値は幾つなんだ?」
そう訊ねると、職員は大きなため息をこぼした。
「……あると言われているだけで、限界値は存じません。本来、使われることのない物ですからね」
そういうと職員は床に別の魔法陣を描き、用意されていた水晶とは別のものが魔法陣から出てきた。
見た目は先程の水晶と同じだが、大きさが一回りほど大きい。
――これがそうなのか?
構造を赤眼で解析してみると、さっきの水晶と構造は全く同じで保有限界魔力値が百万程度あることが分かった。
さっきの水晶よりは上等な物だが、これでは先程と同じく測定不能と出て、終わりだろう。
「すまん、これでもロクに測定は出来ないだろう。測定限界値が百万とされている」
「貴方、幾らなんでも魔力数値百万は言い過ぎではないですか? 人間が百万などという馬鹿げた数値を超えられるはずがないでしょう? あとが詰まっているんです、早くしてください」
訊く耳を持たんな、コイツ。
若干、イラッと来たので二つ目の水晶に触れて魔力が吸われていることを確認したのち、こちら側から魔力を少量、流し込んだ。
するとみるみるうちに水晶が光り始め、最終的に魔力量に耐えきれずに木っ端微塵に砕け散った。
『うわあああああぁ!!』
あたりから叫び声が聞こえたが、気にすることないだろう。
「……これが、魔力を流した結果だ。こんな物では俺の力量は測れんぞ?」
そう宣言したのち、俺は《創造魔法》で手のひらサイズの小さな水晶玉を創り出した。
勿論、今俺の創ったものは目の前に砕け散っている水晶と同じものだ。
だが、体積を小さくして持ち運びがしやすくし、なおかつ測定限界値を百億に設定し、自動修復機能のついているものだ。
「これなら俺の力量を測れるかもしれんな」
「貴方、ただの学生……? それは《創造魔法》の一種、失われた古代の魔法のはず。なんでそんなものをただの子供が……!」
「……アンタが俺をどう思うかなんぞアンタの勝手だ。ただ一つ言えることは、アンタたちでは俺の力量を測れないということだ」
俺は、砕け散った水晶体を《時空間魔法》【範囲空間時間遡及】を使い、元の状態に復元し、創り出した水晶玉を職員の目の前に置いた。
「次からはこの水晶玉を使うといい、魔力数値が百万を超える者だとしても測ることが可能な水晶だ。それに、この大きさなら持ち運びもしやすいだろう。なんなら本物かどうか確認してもらっても構わない」
創り出した水晶玉を職員に手渡し、細工がないということを確認してもらった。
「……たしかに水晶の構成は同じようですね。細工もないようですしいいでしょう。特例でこの水晶での測定を許可します」
そう言って先程の水晶を俺に返し、水晶玉に手を置く。
先程と同じく魔力を吸われているような感覚があるが、やがてそれは止まり、数値が測定結果として映し出された。
『測定結果:1,023,514,605』
――ほう、十億ニ千万か。思っていた以上の結果だ。
魔力数値はステータスでは999,999,999で頭打ちになっており表示がなされていなかったがそれ以上上がっていることを示すはずの+のマークが横についていたから魔力数値は十億を超えていることを予想していたが、なかなか面白い結果だ。
まだ《理外の生命》になってから然程時間は経っておらず分からないことが多い。
――後でゼロニスのやつに色々訊いてみるか。
「……さて、これが俺の結果らしいが、どうだ?」
「……もう、いいです。貴方の結果はその数値で報告します。ですが、信憑性はかなり低いと言われるため合格したとしても後日呼び出しをされることは念頭に置いておきなさい」
半ば、諦めのような感情の籠った声でこちらを向いてそう言われてしまった。
だが、認めてもらえたというのなら良かった。
「ん、了解した。あと水晶を壊して悪かったな、直しておいたから俺の創ったものも含めて一緒に使ってくれ」
「……はぁ」
そう諦めのような落胆のようなため息が運動場に響いた。
次回はもう少しはやく投稿出来るかな?(多分ない)




