遊戯
お、遅くなりました……。色々と用事があったりと執筆が進みませんでした……(>人<;)
あと、先に言っておきますが次回の投稿は来月になるかと思われます!
「……ほう?」
俺は胸ぐらを掴んできた生徒をほんの少し眼に魔力を込め、睨む。
「……ひっ!」
その瞬間、怯えたような間抜けな声を放ちすぐさま俺の胸ぐらから手を離した。
――少し、威嚇しただけなのだがなぁ?
正直、貴族の取り巻きといえど魔力を少し当てられた程度でビビっていては護衛など出来もしないのだろう。
それに俺が当てた魔力は、前に倒したマデルライガーという魔物の放っている魔力と同レベルだ。
所詮は虚仮威し、まともにやり合う気など無いようだ。
「……貴様のような愚民はここで排除しておくべきだ。立場の差というものをその身に刻んでやろう」
いかにも小物が言いそうなテンプレートの言葉を発してくる自称公爵家の子息。
鈍い動きで抜剣をして、剣先をこちらに向けて来るが、その剣も粗悪品という他ないほど可哀想な剣だった。
――公爵家というからにはもう少しまともな物を期待していたが、何故粗悪品などを持ち歩いているんだ?
加工の技術も拙いうえに、魔力の流れ的に剣身に魔銀すらも含まれていないように見える。それなのに、持ち手の方には魔銀が嵌め込まれているようで、持ちにくそうな装飾がなされている。
「おおっ! ついに出るのか、リーオル様のレイネス家直伝の『剣聖乱舞』が!」
先程の取り巻きがなんかほざいてるが、別にどうでもいいことだ。
「この技を受けた者で立っていられた者はいないと言われた伝説の剣技だ。先程のことはこの剣技を受け切ったら不敬罪は無しにしてやる、最も死んでしまうかもしれんがな」
剣の持ち方から成っていない相手の剣撃を交わすことなどそれこそ子供でも出来るというのに、ここまで大言を吐くとは中々肝の据わったもの小僧だ。
俺は面倒臭さ半分に呆れ半分で、もうなんと言ったら良いのか分からず困惑していた。
「……はっ! 怖気づいたか!? だったらもう遅い、冥府で自身の行いを悔やむがよい!」
剣をこちらに向け――なんと言ったか?『剣聖乱舞』だったか?――をこちらに繰り出してきたので流石に面倒になり、ある魔法陣を一つ自身の胸の前に描いた。
そして、目測通り奴は俺の描いた魔法陣に剣を突き刺してきた。
やったという勝者の笑みを浮かべた次の瞬間には奴の表情は苦渋と絶望の表情に変わった。
「……がはっ! ごはぁっ!」
盛大に血を吐き出し、その場に蹲った。
まぁそうだろうな、と俺はニヤリと笑みを浮かべた。
なにせ、俺の方向に突き出した剣が自身の胸を貫いていたんだからな。
俺の展開した魔法陣は《背反魔法》の【悖反動意】という術者に対する他者からの攻撃、伝達、干渉の全てをその行動をした者に対象を切り替える魔法だ。
なので、リーオルは自身の繰り出した攻撃によって自分の胸を貫いたのだ。
この魔法の面白いところは魔法の餌食になる対象がこちらに多くの怒りや、憎悪を抱いている場合、その効力が最大限に発揮され、こちらを殺すつもりで繰り出した攻撃がそのまま自身に返って来るのだから、致命傷は免れない。
だが多少、調子に乗っている子供には良い薬であろう。
そして当のリーオルはというと血を吐きながら、こちらを睨みつけ、蚊の鳴くような声で呟く。
「……き、貴……様、何を……」
「何、単なる簡単な遊戯だ。その程度の実力では俺がほんの少し触れたらお前の存在が消えかねんからな。こうして遊戯に興じてやっただけだ」
俺はリーオルの剣を地面に転移させてから《極癒魔法》第一位階【魔導治癒】を発動させ、傷を全て治してやった。
「……っ! き、傷が……!」
この程度で何を驚いているのやら。
《極癒魔法》の中でも最下位階の魔法であり治癒範囲のあまり広くない【魔導治癒】を使っただけだというのに。
「実力の差など分かっただろう?」
「……貴様、一体何者だ」
警戒の念を込めた声で話しかけて来るリーオル。
その言葉に敵意は感じられず、純粋な疑問だけだった。
「別に、単なる平民だ。少し力を持っているだけのな。分かったなら今後ちょっかいを出して来ないでくれ、まぁ、またやって来たなら……分かってるな?」
多少、言葉に魔力を込め、圧を奴らに伝えるとガタガタとだらしなく震えながらリーオルとその取り巻きはそそくさと逃げていった。
――無駄に時間を浪費してしまったな。
貴族の者たちというのは二千年前のときからあまり良い印象がないのだ。
無論、全員が悪いというわけでは無いのだが、訳の分からんプライドで他者に迷惑行為を働いたり、貴族間での争い・犯罪の揉み消し、平民への差別など碌なことしている奴がいなかったため、良い印象を持てなかったのだ。
そして、そんな碌でもないことをする貴族が地位の高い者になると余計に厄介だ。
何かあっても、他者に責任をなすりつけ証拠を隠匿、又は抹消し自身の地位を維持しながら、他者を蹴落とすというなんとも悪どいやり方をしたりするのだ。
まぁ、それに関しては貴族に関係なく人類に共通のする問題でもあるが……。
そこで、あることに気づく。
『……』
周りの視線が俺へと集まっている。
眼を向けると、奥の方にネネとリリカの二人の姿を確認することが出来るが、周りの様子を見てこちらには来ていないようだ。
まぁ、腐っても公爵家の子息を相手にして軽い致命傷を与えたのだ。貴族関連のことで何かしら面倒な問題をぶつけて来る者もいるのではないだろうか?
そう考えていると、職員と思われる男がこちらに近づいて来た。
「なんだ? 言っておくがさっきのは正当防衛だ。傷も全て治した、何か問題で――」
「君! ありがとう!」
いきなり、出てきた男に頭を下げられた。
「……は?」
「いやぁ、公爵家の子息の素行の悪さは前々から噂されていたんだ。でも公爵家ともなると手が出せなくてね、困っていたんだよ!」
「……はあ」
いきなり現れた男は、食い気味にそのようなことを熱弁してきた。
「……だが、君は勇気があるな。もし、先程のことが公爵家の耳にでも入ってみろ、良くて牢獄へぶち込まれるか、最悪、不敬罪で処刑されてしまう可能性だってあるんだ! そんな危険を犯してまであの公爵家の子息に一泡吹かせることが出来た……感謝している!」
そう男が言い終わると、周りからは小さく俺に声援を送って来る者がいた。
だが、まあ、不敬罪にはしないと言っていたし、仮に処刑されるとしてもそんじょそこらの道具ではかすり傷一つつかないだろう。
仮に殺せたとしても蘇生での蘇生は構成概念の消滅が開始される三時間以内であれば自身の蘇生も可能なため蘇ることが出来る。
いくら殺しても意味など無いのだ。
「……頭なんて下げないでいい。俺は少し減らず口を叩く子供にお灸を据えただけだ。他意はない」
子供といえど死の間際というのは経験として根強い印象を残す。
一度死の淵に追い込まれれば、二度とそこには行かないようにしようと行動出来る最善を取れる可能性が高い。
死を恐れぬ者はいない。
子供の頃から死に近いものを体験出来たというのは未来の役に立つ。
そして、眼の前の男から再度頭を下げられ、若干、周りの眼を気にしながら、俺はネネとリリカのいる場所へと向かった。
「お疲れさまです、マスター」
彼女らのところに戻ると早々にリリカに頭を下げられた。
「いや、遊戯に興じただけだ。こちらこそそちらの試験の様子を見れなかったからな、すまなかった」
「カイトくんが謝る必要ないよ〜」
「そうですね。元はといえばあのガキ……いえ、公爵家の子息でしたか、が悪いので、マスターが頭を下げるということはおかしいことです」
リリカに関しては少し本音が出ていた気もするが、今はどうでもいいことだろう。
「そうか。それじゃあ、次の会場は――」
――リーンリーン……。
いきなり、先程の集合場所での鐘の音とは違い優しい音色の音が響いてきた。
『――筆記試験、実技試験、双方を受験した者は魔導測定を行います。Aの者から他の試験が終わり次第、室内運動場にお集まりください』
ほう。魔導測定とやらをするのか、聞いたことはないが、何やら面白そうな響きだ。
「魔導測定……あぁ、アレですか」
ぽそりとリリカがそう呟く。
「知っているのか?」
「はい、簡単に言えばその者がどれほどの魔力数値を誇っているかを確かめる測定のことです」
「ふむ、魔力数値というと個体生成保有魔力のことか?」
個体生成保有魔力というのは個人が概念によって生成されてから持っている魔力にレベルの加算分を加えた個人が保有している魔力全体を指す言葉である。
ステータスにもMPという欄があり、それが個体生成保有魔力を表している。
「その通りです。個体生成保有魔力を【吸魔測定水晶】と呼ばれる魔道具で少し吸い取り、その魔力の密度から逆算して対象の保有量を測定する検査のことです」
「へえ〜、リリカちゃんってやっぱり物知りだね!」
ネネからの純粋な褒め言葉にリリカは若干顔を赤くしていた。
「な、長い間、色々勉強してきましたのである程度のことであれば応えられると思います」
「そっかぁ、じゃあ、今度分からないことがあったら教えて!」
「えぇ、そのくらいでしたらお安い御用ですよ」
二人が仲良くしていたのを見て、俺は口角を少し上にあげた。
学年末試験で勉強をしないといけないため、終わるまで次回の投稿が出来なくなります!m(_ _)mペコリ




