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神の実力

 試験が始まり、複数の場所で試験官と生徒の試験が始まっているなか、俺たちのCという組の担当者はどういう訳かゼロニスだった。


 まぁ、前から決まっていたとしてもいなかったとしても煉獄を統治している神だ。未来の改変くらいなら朝飯前だろう。


 そして、少し経ったときやっと俺の番となった。


『受験番号C-24番、前に出てください』


 俺は言われた通りに運動場で一部的に結界に囲われた場所に足を踏み入れる。


 そして俺と対峙しているのは巨躯な肉体を持ち、ローブを羽織っている神――ゼロニスだ。


(初めまして、というべきか?煉獄の神よ)


 俺は他者には聞こえないように《念話》を使い奴に語りかける。


 すると、多少驚いた素振りを見せ、奴もまた《念話》で言葉を返してきた。


(あぁ、ファルヴィスの姉御(あねご)の眷属から話くらい聞いてんだろ? 我らが王の勅命だ。初めての俺たち以外の《理外の生命(なかま)》だからな、まずは()()()をさせてもらうぞ)


 品定めとは、中々面白いことを言うな。だが、つまらぬ試験の余興としてはいいだろう。


「……まぁいい、品定めというのならそれ相応の対応を見せて貰うとするぞ」


 俺は、アイテムボックスからヘカトンケイルを取り出し、柄を握る。


 その瞬間、周りから動揺の感情からなのかざわつき始めた。


 ――いきなり大剣を取り出したからか?


 だが、大剣を使ってはいけないというルールもないはずなので、まぁ気にすることもないだろう。


「……それで、そちらの準備はいいのか?」


 ゼロニスの方に眼を向けると奴は先程まで使っていた剣とは別の槍と剣を合成したような武具を手にしていた。


 柄は剣とは違い握り込むような形をしており、刀身も切るというよりかは突きや刺すことに特化したように見える。


「それがアンタの神器か。中々見ない形状をしているな」


「はっ、お前も良いもん持ってんじゃねえか。なら、全力を持って俺に向かって来い」


「――なら、遠慮なく」


 俺は脚に魔力を込め、魔力を込めた余波によって瞬間的に地面を抉り取る。


 ゼロニスとの距離を一気に縮め、空間に複数の魔法陣を描いた。


 描いた魔法陣は三つ、一つは武器の無力化のための【固型腐蝕溶鏽(アドゥメズデウド)】、二つ目は動きを鈍らせるため【重力増幅(アズヘン)】、そして三つ目は相手の魔力循環を崩壊させる【魔導瓦解心覇怪(アーズ・ドメレイド)】。


 この三つはほんの挨拶がわりだ。


 なんなら【固型腐蝕溶鏽(アドゥメズデウド)】以外の二つは更なる改良を施した上級魔法も存在している。


 やがて魔法の効果がやつに発動したことを確認したのち、大剣を片手で振り下ろし肉体の中心を狙ったが、ゼロニスは飄々とした動きで自慢の神器でその攻撃を許さなかった。


「――ほう、中々の腕だな。下位神などではこの一撃で吹き飛んでいたぞ?だが――」


 ゼロニスの丸太のような腕は俺の鳩尾(みぞおち)を深々と抉った。


「がはっ! ……クッ!」


  反射的に後方へ跳躍し、目の前の神を睨んだ。


 魔法と同時に振り下ろしたヘカトンケイルの一撃は《破神撃》も乗せていたのだが揺るぐことなく余裕そうに笑みを浮かべていた。


 その上【固型腐蝕溶鏽(アドゥメズデウド)】をかけた神器も何故か形状を失わず、傷一つついていなかった。


 ――《背反魔法》、それもかなり高度なものだ。

 

 【固型腐蝕溶鏽(アドゥメズデウド)】を無効化することは出来ないことはないが非常に困難を究める。


 あの概念剣が異常(イレギュラー)なのであり、本来は逃れることは出来ない。


 無効にするには魔法自体の発動を無かったことにする《時間魔法》を使うか、《背反魔法》によって魔法自体の効力を打ち消すか。


 だがどちらも瞬間的に発動するには困難を極める。


「……来ないのなら、こちらから行くぞ!」


 そうゼロニスが叫んだ瞬間には眼の前に神の姿があった。


 ――速い!


 武具による突きを繰り出してくるが、寸でのところで上空へ跳躍をした。


 ある程度は予測出来ていたが、今の速さは尋常では無かった。

 《転移魔法》を使った素振りは見えなかった……ということは身体能力だけであれだけの速さを生み出したということだ。


「……神の辞書には待つという(ことば)はないのか?」


「……残念ながらそんなものは存在しない…なっ!」


 瞬間的にこちらに迫って来たゼロニスに俺はヘカトンケイルを振るい、空気振動によって斬撃を飛ばす。

 ……が、飛ばした斬撃はゼロニスの武具に当たり、弾けてしまった。


 だが、俺はそんなことは気にせずに更なる追撃を加えていく。


「……おおぉ! いいじゃねえか!」


 ゼロニスは俺の連撃を受けながらそう感想を溢し、余裕のある表情を見せる。


 ――奴には余裕がある。ならそんな余裕無くしてやる!


 俺はヘカトンケイルに魔力を込め、魔力回路を紅く染め上げていく。


 《理外の生命》になったことによりヘカトンケイルに魔力を込めても魔力不足になることはなくなり、それどころか内から湧き上がる魔力が外に溢れ出し魔力による結界を身体の周りに纏った。


 そして先程とは比べ物にも出来ないほどの瞬間的速度で奴との距離を詰め、反応すら追いつかない神速で奴の頭を鷲掴みにした。


「なにっ!?」


 初めて奴から動揺の(うかが)える声が発せられ、俺はこれ見よがしの叫んだ。


「――堕ちろっ!」


 奴の頭を鷲掴みにした頭をそのまま地面へと降下し叩きつけた。


「ぐああああぁあ!!」


 堕ちた衝撃によって、着地点を中心に衝撃が伝わり綺麗なクレーターが形成され、連動するかのように地響きによってバキバキィと音を立てながら地割れが現れていた。


 そこで、俺は魔力を一層高め、()に魔力を込め臨戦体制に入った。


「……さて、次はどう来る?」


 相手は恐らく《理外の生命》の域に達している神のはずだ。到底この程度のことでは(たお)せるということはないだろうが、品定めという時点で殺し合いをするとは思えないので挑発的な言葉をかける。


 呼びかけるとゼロニスは予想通りというか何ともなかったかの様に立ち上がり、こちらに向けて両手を上げた。


「……フハハハ!久々にここまで動いたな。感謝するぞ新人よ!」


「……降参という意と捉えていいか?」


「あぁ、品定めは終わりだ。お前の実力は分かった、歓迎するぞ、《理外の生命(こちらがわ)》の存在よ」


「……いや俺は強さを求めただけだ。歓迎されることはありがたいが神になるつもりはないぞ?」


 俺はそう返し、周りをみると何故か皆が避けて通っている。


「お、おい、あいつ剣術大会の決勝に出てた奴じゃねえのか!?」


「バカいえ、背丈が全然違うだろ。あの身のこなしはバケモンとしか思えねえが」


「……だけどあの剣、決勝のルイドってやつが使ってた剣……だよな?」


 どうやら、ヘカトンケイルをみて決勝の選手が俺だと勘づいている者もいるな。


 まぁ、背丈と顔を変えていた影響でバレるという心配もなさそうだが。


 他の生徒をよそに俺はネネとリリカのいる場所に向かった。


「よう二人とも、少し遊んでいたら遅くなった」


 冗談半分で彼女らにそう伝えると何故か冷ややかな視線でこちらを見ている。


「……マスター、ゼロニス様と戦えて嬉しかったというのは分かりますが、校庭の一部にクレーターが出来ていますし、職員の方々も困惑していますよ」


「……カイトくんはもう少し力を抑えて行動しようね。じゃないと周りがどうなるか分からないんだもん」


 ふむ、そう言われてしまっては面目が立たんな。


 まぁ、クレーターに関してはゼロニスが恐らく《時間操作》によって瞬間的に直していたのであまり気にすることはないと思うが、後で礼を言っておくか。


 すると、ネネが次の番号として呼ばれてその見物としてリリカも一緒についていった。


 ――二人とも仲が深まっているようで何よりだ。


 そう感じながら、俺は先程の戦いについて考えていた。


 ……戦っていくつかあのゼロニスという神について分かった点がある。

 まぁ、具体的にいうならば《理外の生命》についての状態に関してだが。


 恐らく、というか確実にあのゼロニスという神は《理外の生命》の領域に達しているだろう。

 そして、戦っていたときに気になったのは魔力の流れが不自然なほど外から感じることが出来なかったのだ。

 

 《理外の生命》でなくとも魔力の流れを秘匿する術は幾つか存在するが、どれも効率的とは言いづらく、正直戦闘技術を考えた方が効率は幾分か良い。

 

 だが、気付かれずに相手に一発喰らわせられるというのは戦闘においてどれほど優位に立てるかは明白である。


 そのため、魔力の完全秘匿は魔法使いのなかでは中々興味深い技術の一種であろう。

 それが《理外の生命》となった今、魔力操作がスムーズに行えるのならば、是非とも教えてもらいものだ。


 そう考え事をしていると俺の周りに複数の男子が囲んできた。


「……なんだ、お前ら? 俺に何か用か?」


 そう尋ねると、男子の中で一際目立つ装飾の施された衣服を着ている金髪の男子が前に出てきた。


「……貴様、平民の分際でこの俺の晴れ姿を曇らせたな?」


 ……は?


「……いきなり、なんだお前は? というか誰だ?」


 服装からしてどこかの貴族ではあるのだろうが、正直身分の差などどうでもいいと思っているので別に頭を下げる気など無い。


 するといきなり、(恐らく)貴族の取り巻きの一人が叫んだ。


「貴様! この方がどういう方が存じてないのか! 公爵家の御子息、リーオル・レイネス様であるぞ! 覚えておけ、愚民が!」


 なるほど、公爵家か。


 また面倒なところに絡まれた、と内心苦笑し、周りの取り巻きとリーオルというやつに言葉を返す。


「それは悪いことをしたな。だが、貴様は晴れ姿と言っていたが、一体いつ試験を受けたんだ? 魔力が小さすぎてな、試験をしていたのかすら分からなかったぞ?」


 ――さて、こんな分かりやすい挑発に乗るか否か。


 本当にコイツが戦っていたことに気づかなかったのでどれほどの腕か試したい。


 しかも、コイツは公爵家の者だということは、魔法だけでなく剣術などもそれならに学んでいるはずだ。


 その答えを待っていると堪忍袋の緒が切れたのか、先程の取り巻きが俺の胸ぐらを掴んできた。

前回の百位階の魔法名称を少し変更しました(どうでもいい)

あと更新遅れてすいませんでしたm(_ _)m


 じ、次回はもう少し早く更新するぞ〜(震え声)

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