創造神とカイトの過去
「これから会いに行くのは創造神ヴェルフェン・シェイツ・ヴァルファン。この世界の創造神だ」
ネネとディルメイドが唖然としている。
「ヴェルフェン様と言えばこの世を作り出したと言われている創造神ですよね」
ディルメイドが口を開く。
「そのとうりだ。俺が邪神の退治を依頼されたのはヴェルフェンから頼まれたことだ。全てを滅ぼすことの出来る破壊神ファルヴィスに頼んでもよかったんだが、ヴェルフェンのいる空間とは別の場所にいるから干渉が難しいということで俺に依頼されたんだ」
そのおかげでこの強さを手に入れられた。
「そういうことだ。そこにいるのは分かっている。出てこないのか?ヴェルフェン」
「「「えっ!?」」」
その言葉によって空間が歪み1人の青年が出てきた。
「久しいなヴェルフェン」
俺はやつに向かって挨拶をする。
「ふっ、お前は俺を敬ったりしないから話しやすいよ。2000年振りだなカイト」
笑みを浮かべる創造神。
「お爺ちゃん。いつからいたの?」
メアリが質問する。その質問にヴェルフェンは笑みを浮かべて優しく答えた。
「カイトがここに来てからずっといたんだよ。懐かしい魔力を感じたからな。」
メアリに話し終わるとヴェルフェンはこちらを向き話しかけてきた。
「ところでカイト、『アイツ』は大丈夫なのか?」
『アイツ』というのが、俺にはすぐにわかった。
「あぁ、一応は落ち着いている。だが、それ以上のことはできない。俺でさえな」
「分かっている。こちらには何も出来ない。俺はただお前に期待するしかないんだからな」
ここでネネが口を挟んできた。
「『アイツ』って誰ですか?」
俺は、しまったと思った。基本的に『アイツ』には触れないようにしていたんだが。
「ネネ、すまないがこれに関しては話すことは出来ない。『アイツ』を知ってはいけない」
「は、はい」
ネネが少し不満げに下を向いていている。
「人には秘密があるってもんだろ?ネネだって秘密くらい持ってるだろ?女の子なんだからさ」
するとネネが顔を赤くする。
「お、乙女の秘密は聞いてはいけないんですよ!」
顔を赤らめながら抗議してくるネネ。可愛い。
「そうだろ。だから俺にも秘‥‥」
その時、頭に激痛が走りその場に倒れた。
「え?カ、カイトくん!どうしたんですか!?」
「カイトお兄ちゃん!?大丈夫!?どうしたの?返事して!」
ネネとメアリの声が聞こえたが返事をすることが出来ない。
「不味いな。このままだと『アイツ』が‥‥」
ヴェルフェンが言うと、ネネが聞いてきた。
「創造神様!カ、カイトくんが倒れちゃって‥」
「分かっている。お主、ネネといったか、先程『アイツ』と言っていたのは誰かといっていたが今からその答えは分かる」
その時、誰かかが立ち上がった。
「カ、カイトくん!大丈夫!?」
「‥‥‥」
だが、返事はしなかった。
「カ、カイトくん?」
「‥‥‥終焉魔法 火焔・第零位階 【終焉極炎龍】」
巨大な魔法陣から極大な火炎砲が打ち出された。
巨大な砂埃が上がり、地が消滅した。
「‥‥逃げたか。まぁ良い、1万年の怨み払させてもらうぞヴェルフェン!」
何者かはそう叫び飛んで行った。
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ヴェルフェンside
〜無限廻廊〜
「っと、ここまで来れば少しは時間が稼げるだろう」
「あ、あの〜ここはどこですか?」
ネネが質問してくる。
「ここは『無限廻廊』全ての世界の空間から断絶された干渉不可能な空間だ。因みに広さは無限大だ。時間稼ぎだったらここが最適なんだ」
「時間稼ぎって、カイトくんから逃げるんですか?」
「いや、ここでカイトを迎え討つ。あいつならこの空間でさえも干渉してくるだろからな」
何せ、あいつに時空魔法を教えたのは俺自身だからな。
「あの、ヴェルフェン様。カイト様の様子がおかしいように見えたのですが‥‥」
ディルメイドが聞いてくる。俺はその質問に悠長に答えた。
「なに、簡単な話だ。あいつが本当のカイトなんだ」
「え!?どういうことですか?」
「まぁ、落ち着け。今から話す。まず、カイトはこの時代の人間ではない。2000年前から転生してきたんだ。だから今の時代から換算してやつは1万年前に生まれた存在だ」
「1万年前‥‥」
ディルメイドが少し考える仕草をしている。
「お前らが接していたカイトはアイツ‥‥本当のカイトを守るために俺が創り出した人格だ。アイツは俺に会うまで人や生物を眼中に映れば瞬間的に殺していた」
「なぜですか?」
ネネが聞いてきた。
「自分のいた集落の人全員に裏切られたんだ。」
「裏切られた‥‥」
「カイトは集落の中で1番強い青年だった。だが、ある日その集落が魔物の襲撃を受けた。もちろんカイトは集落を守るために戦った。だが、カイトがあまりにも強すぎて1人でほとんどの魔物を殲滅してしまった。そのことが原因で、集落の者から毎日、殺されかけた」
「そんな‥‥ひどいじゃないですか!」
「集落でその力を振るわれたら壊滅しかねない存在をそのままにすることは出来なかった。それ故の行動だったのだろう。だが、集落はカイトを殺すことは出来なかった。それどころか殺されかけた怒りで集落をカイトが滅ぼしてしまったんだ。それ以降、カイトは人を信じなくなり怒りと憎しみしか持たない者となった」
「「「……」」」
ネネたちは何も言えなかった。
だが、みんな少し小刻みに震えていた。
「もはや、意思疎通すらも出来なくなったカイトに俺は声をかけた。だが、俺の話を聞こうとせずに攻撃してきたから人としての心を取り戻すまで俺はヤツを封印することを考え、そのものの人格を心に封印した。だか、そうすると人としても生きられなくなってしまうので俺は監視者として、もう1人のカイトとしての人の感情を持った心を創り、カイトの中に埋め込んだ。それが今までお前さんたちが話してきたカイトだ」
「そんな‥‥」
ネネは相当なショックだったらしい。だが、当たり前のことだ。今まで仲間だった者が創り物だと知らされれば。だが、その時声が響いた。
「話は済んだのか?ヴェルフェン」
空間に聞き覚えのある声が響いた。声の主は分かっていた。今さっきまで話の中心になっていた青年だった。
「もう来たのか、流石『神の申し子』というだけはある」
「ふん、その名はお前らが勝手につけた名だろうが。俺は神になったつもりはないぞ!」
カイトはそのまま、こちらに突っ込んで来た。
だが‥‥俺の前で止まり、こちらを見ている。
「ずっと聞きたかったことがある。何故俺を封印して俺を創りだした?」
ネネはその言葉をぎゅっと噛み締めながら聞いていた。
「それは、お前が人としての心を取り戻すまでの応急処置として創り出したんだ。分かってくれ」
だが、その言葉に怒りを覚えたカイトは言葉を返した。
「分かってくれだと?分かる訳がないだろう!?俺の苦しみがお前に分かるのか!?なんで集落を守った俺がみんなから裏切られなくちゃいけないんだ!俺が何か悪いことをしたのか?酷い事をしたのか?何もしてないだろ!俺はただ集落を‥‥故郷を守りたかっただけなのに‥‥何で蔑まれなくてはいけないんだ!仲良くしていた友からも裏切られ、挙げ句の果てには家族にまで捨てられた!もう、俺に残るものなんてなかった!」
空間に悲痛な叫びが響く。
「守るために力を手に入れた。父さんにも『大切なものを守るために力はあるんだ』と教えられた!だけどいざ、力を使ってみたらどうだ?確かに集落は守ることが出来たかもしれない……だが、俺は失うものしかなかった!じゃあ、どうすればいいんだ!どうすることも出来ないんだよ!ここまでされた俺の気持ちがお前に分かるのかぁっ!?」
大粒の涙を流しながら悲しみと怒りの感情を曝け出し心の想いを吐き出した。
「俺にはそこまでは分からない」
「だったらーー」
「だが、その後、お前が行ったことは本当に正しいことだったのか?」
冷静に落ち着いた様子で問い返す。
「ーーっ、」
カイトの顔が歪んだ。当たり前だろう。怒りを覚えるのは良く分かる。だが、仲の良かった友や信用していた親を殺したのは紛れもなく自分なのだから。
「集落がお前を殺そうとしたことは変わらない。だが同時にお前が集落の人間を殺したことも変わらないだろう?」
その言葉がとどめとなったのか、カイトはその場に膝をつき泣き崩れた。
「ゔああああああぁぁぁっっ!!」
泣き叫ぶ声が空間に響き渡り、その姿を直視することができた者はいなかった。
「安心しろ、また何度でもやり直せる」
「え?」
その声に顔を上げるカイト。
「お前は見る世界が狭すぎたんだ。世界にはお前を認めてくれる者がたくさんいる。だから、もう一度やり直してみないか?俺と一緒にさ」
そうして、カイトは涙を拭い、決意を決めたような顔で頷いた。
「よし、それでこそ俺が認めた者だ!」
その高笑いは空間に響き渡った。
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