試験
新年遅れて投稿します!猛省m(_ _)m
俺たちは役員に連れられて教室という部屋に来ていた。
室内には木製の机と椅子が均等の間隔に並べられている。
どうやら机などには魔法は付与されておらず、恐らく俺が拳を軽く入れれば瞬く間に粉々に砕けるだろう。
――この部屋にある机と椅子にだけ、【物質硬化】と【衝撃耐性】を付与しておくか。
そして教室内にいた試験官に指示を受け、それぞれの場所に座っていく。
どうやら俺は一番後ろの席になったようだな。
俺は指示された席に座り、勝手に部屋全体の椅子と机に付与魔法をかけてゆっくりと座った。
――座り心地がいいとは言えないな。
魔法をかける前から分かっていたが椅子は硬く、あまり座り心地が良いとは思えなかった。
とはいえ、悪い気分ではなかったのでそのままにしておいた。
ー数分後ー
試験が開始され、周りの者たちは黙々とペンを走らせている。
最初の試験はどうやら歴史のようでここ数百年あたりの事象や出来事に関することが出題されているが、この前雑貨屋にて買った歴史書のおかげである程度の問題は解くことが出来た。
――流石に『種族大戦』に関する情報は出ていないか。
『種族大戦』――その名の通り多くの種族が血で血を洗う凄惨な世界を作り出した大戦争だ。
元々の発端は俺が転生する九千年ほど前に魔族領の者たちが人類に領土問題を提言したことらしく、そのことに人類が領土侵害ということで魔族に宣戦布告をし、そこから小さな争いが次第に多種族にも影響を及ぼしていき結果、大戦となってしまった負の歴史だ。
まぁ、途中で邪神どもが姿を現し、戦争どころではなくなり大戦は終結したがその後邪神によって更に世界は焦土と化した。
邪神の多くは俺や魔王たち、精霊王などの力によって殲滅されたが、何処かにまだ生き残りがいる可能性は大いにある。
《理外の生命》はそういう場合であっても対応出来るため、師匠の偉大さを改めて感じた。
そんなことを考えていながら問題と向き合っていると、いつの間にか最終問題の回答欄に筆を走らせようとしていた。
そこであることに気づく。
問い:大昔、大戦と呼ばれる大きな戦いあった。その大戦は神話にて描かれており、一人の賢者がこの戦いを終結させた。この賢者の名を答えよ。
ほう、大戦の名は神話として書かれているのか。実際、大戦を終結させた者など存在しない。
邪神の侵略をきっかけに戦争を辞めざるを得なかったというのが本来の話だ。
――この名は何を書けばいいんだ?
実際、ネネにあったばかりの頃神話の賢者について少し言っていたような気もするが、はっきりとその後言及していなかったためこの知識がない。その上、歴史書にも神話自体は載っていたが賢者の名は書かれていなかった。
だがそうなっては歴史書の意味があまりないような気もしないでもないが……。
まぁこうなっては仕方がない。この問いだけは空欄にしておくか。
そうして、歴史に関する試験は終了し、その後、もう一つの筆記試験である魔法理論に関する試験を受けることになった。
『それでは、魔法理論試験。開始してください!』
試験官の合図と共に、俺は配られていた裏返しの紙をひっくり返し一通り問題文に眼を通した……のだが――。
――やはり、理論として登場しているのは基本五属性の五十位階までの魔法だけだな。
基本五属性というのは『炎・水・自然・白光・黒闇』の五つの属性であり、これ以外は副属性魔法という括りにされており、位階というものがあるのもこの基本五属性だけであり百位階までの魔法が存在している。
ここで五十一位階から百位階の魔法が明記されていないのは敵対種族が大戦によって少なくなったことが原因だろうな。
例えば、《火炎魔法》百位階【滅究燐炎王火焔砲】であれば、俺が放てばあのウラルーク大森林であっても焼き払うことも出来るほど強力だが、《終焉魔法》や《極醒魔法》と比べてしまうと幾分、質も威力も落ちてしまうため、ドラゴンなどと戦うにはいいが、神々や魔王などの者たちと渡り合うことは出来ない。
なので、俺は使えることは使えるが、実戦で使うことはあまりない。
――っと、問題を解き終わってしまったか。
時間の確認と周りを少し見渡す。
時計は試験開始から三十分を指しており、他の者たちは黙々とペンを走らせている。
制限時間は五十分なので二十分ほど余っている。
その時リリカとネネが視界に映ったが、二人とも解き終わっているようで見直しをしていた。
――間違っていそうな箇所はないな。
解答が終わって、見直しもしたが特に間違っていそうな問題もない。
このまま、もう一度見直しても時間は余るはずだ。だとすれば――。
俺はペンを手に取り、最終問題の解答欄の端っこにペンで複数の魔法陣を描く。
大きく描いた二つの魔法は《終焉魔法》と《極醒魔法》の魔法陣だ。
そして、小さく描いた三つめの魔法陣は《融合術式》の魔法陣だ。
――《理外の生命》ならば俺の保有している魔法の中で最大火力の魔法同士を融合させることも可能性な筈だ。
転生前にも《終焉魔法》と《極醒魔法》の《融合術式》は理論としては確立していたが融合する互いの術式の魔力量が多すぎるため、転生前では理論を作るだけで精一杯だった。
だが、今は《理外の生命》の力がある。
《理外の生命》は言葉の通り、理から外れた存在だ。
《極醒魔法》と《終焉魔法》の融合も出来ることだろう。
――あとで、虚実空間の方で試してみるか。
そう考えついたところで試験終了の鐘が鳴った。
試験官が全員の試験用紙を集め、次の試験をする会場へと指示をしている。
ネネとリリカのいる方へと俺は歩いて行き彼女らに話しかける。
「二人とも、筆記試験はどうだった?」
「私は二つとも出来たかなぁ?」
「……私は、歴史の問題に不満がありました」
ネネは上機嫌のようだが、リリカは何やら、むすっと不服そうにしていた。
「……私の知っている歴史と全く違うんです! 人類の戦争についても色々と脚色されていました」
「……まぁ、歴史はいいように改変されるものだ。誰も、実際にその歴史を見ている者がいるとは思わないだろうからな」
そういうと何故か、じーっとこちらを見つめるネネの視線があった。
「……ネネ、どうかしたのか?」
「……いや、何でもないよ! 遅れる前に次の試験に行こっ!」
いきなり、俺とリリカの腕を引っ張り強引に次の会場へとつれていくネネ。
困惑する俺の様子を見て横にいるリリカはクスクスと笑っていた。
〜運動場〜
指示された生徒は運動場へと案内され、先程とは別の試験官が【拡張音声】を使い試験についての説明をしていた。
『それでは、次に行う試験は実技試験です。皆さんには実技試験官と一対一で戦ってもらいます。なお、使用する武具や魔法に関しては指定はありませんので思う存分力を発揮してください!』
そう説明が終わると周りからガヤガヤと話し声が大量に響いてきた。
――さて、ここにゼロニスとやらはいるかどうか。
【魔力感知】を使い、極端に魔力が高いか、もしくはほぼ魔力を感じない者を探す。
ゼロニスという者は上位神である可能性が高い。ということは通常の生物とはかけ離れた魔力量をしているため魔力が極端に多いか、実力を隠し、魔力を感じられぬようにしている可能性が高い。
そして、この会場の中に一人だけリリカ以上に魔力を有している者を見つける。
眼をそちらに向けると背が高くローブとペンダントを身につけている男が立っていた。
――あいつか。
「……リリカ、恐らくゼロニスという神を見つけた。あそこに立っている男だと思うんだが、違うか?」
俺の後ろについてきていたリリカは一瞬ゼロニスとやらのいる方に眼を向けると眼を丸くし、頷いた。
「……間違いないですね。ゼロニス様です」
「……やはり、俺の力量を測るためにここに来たか」
「……カ、カイトくん、大丈夫なの? 神様と戦うなんて……私出来る気がしないよ」
「奴の狙いは俺だけだ。リリカは知り合いらしいが、恐らく本気は出さないだろうな。出すとすれば俺だけだ」
わざわざ、俺と戦う前に力を見せて戦略を練られるようにするほど馬鹿ではないだろう。
一対一で戦うことはどれだけ相手に手を読ませないかが重要であり、行動や攻撃を予測されればそれは愚策でしかない。
正直そうなってはそんな勝負不戦勝に近い。
戦いが性分であることの多い神々がそんなことをするとは考えづらい。
「……まぁ、本気ではないとはいえ、もしゼロニスと戦うとなったら、全力でいけ」
「……はい!」
「……了解です!」
そう二人の答えを聴き、試験のために俺たちは歩を進めた。
課題などで投稿遅れましたが、楽しんで頂けたのでしたら幸いです。それではまた次回!(╹◡╹)




