閑話 聖なる夜《2》
なんとか間に合ったー!(*´꒳`*)
少し長くなってしまいましたが楽しんで頂けると幸いです!
前回で時系列が云々と言いましたが、なんか時系列で考えるとおかしくなったので、特に気にしない方向でお願いします。(剣術大会以降ということは前提に置いていただけると話が分かるかと思います)
「……さて、有益な情報も得たし、早速準備に取り掛かるとするか」
神界から戻ってきたときに転移したのは俺たちが泊まっている宿屋・ルンク宿泊所の俺が借りている一室だ。
手製の物を作るとしても作るのであれば一級以上のもの以外認めない。
用意したものは次のものだ。
・魔石(小) 四個
・赫緋龍の鱗 数十枚
・緑樹龍の角 四本
・赫緋龍の皮
・白翼龍の皮
・神鉄鉱石 適量
・魔銀 適量
・火廣金鋼 適量
・神鉱石 少量
まずは神鉱石を《破壊魔法》で軽く粉砕する。
そして、細かくした神鉱石を二つに分け、その周りにそれぞれの鉱石を【物質融合】によって魔力の通しやすい割合で調合していき、小さな合金を作る。
そして、先程作った合金をさらに魔石に融合させ、魔力伝導率を底上げする。
「……ふう、なかなかに神経を使う作業だ」
作り上げた、合金は一度置いておき、龍の部位を加工し、土台となる形を作っていく。
《創造魔法》で骨格を作り上げ、そこに既に加工した龍の部位を切り貼りしていく。
結果的に出来上がったのは彼女たちをモチーフに作った人形だが、生半可な攻撃では壊れることのない強靭な人形だ。
この人形に先程の合金を埋め込み、いくつかの魔法を付与する。
合金に【対衝撃吸収】と【魔法反射】の魔法を付与し、外部からの攻撃にのみ反応する様に術式を少し改変してから人形の中に埋め込む。
あとは持ち歩けるように、フックのようなリングを付ければ、本当に護ってくれる御守りの完成だ。
性能を試したいが、流石に贈るもので試す訳にはいかないので、同時に作っていた試作品を実験台として使うことにした。
◆
〜虚実空間〜
たかが、御守りの性能を試すだけだが、性能的に百位階程度の魔法ならば、跳ね返すことが可能だろう。
流石に街中で高火力の魔法を放ったら街が消えかねないため、虚実空間へと移動した訳だ。
性能を試すために百位階より少し強い魔法として【紅蓮千万華】の魔法陣を描いた。
前に使ったときは、師匠にいとも簡単に防がれてしまったが、《極炎魔法》の中で考えるとなかなかに火力の高い魔法であるため、実験にはもってこいだろう。
先程の実験台のお守りを木に括り付けたので、その一点に狙いを定める。
「【紅蓮千万華】!」
魔法陣から放出された巨大な火球は猛スピードで御守りに突っ込んでいくが、やがて止まり、火球が魔力を辺りに放射しながらこちらへ返ってきた。
跳ね返ってきた火球は、こちらに当たる前にヘカトンケイルを出現させ、術式ごと切り裂き、消滅させる。
「……ふむ、攻撃を防ぐ役割としては十分だが反射の瞬間に若干、付与魔法の術式に損壊が見られるな。【自動修復】の術式も付与するか」
改善点も見つけ、俺は贈りものの最終調整を始めた。
◆
〜ネネside〜
私たちは贈りものを買うべく、それぞれ場所に散ったのだが――。
「ネネさん、このコート可愛いですよ!」
「うわぁ、可愛いね! 普段使い用でもオシャレで着ても良さそう!」
「あー、分かります! 着てみたいですねぇ」
見てわかる通り、現在は前にも来たことがある洋服屋にてリリカちゃんとショッピングをしている。
リリカちゃんの手に持っているのは柳色のコートであり、もこもこしていて暖かそうだった。
元々は、私ひとりでいたのだが、途中で贈りもの探しにこの店に入って来たリリカちゃんを見つけたため、現在はこうして一緒にプレゼント探し兼買い物をしている。
「……こうして聞くのはちょっとアレかなと思うのですが、ネネさんはマスターへの贈りものは何を贈りたいと思っているんですか?」
「……え、えっと、考えてるのがメジャーなものだから、カイトくん喜んでくれるか少し心配なんだけど……」
「どんなもの何ですか?」
リリカちゃんに尋ねられ、買い物籠に入れていたものを取り出す。
「……これは、手袋ですか?」
私が買おうと決めていたのは、毛糸で作られた手袋である。
《アイエン・リクシア》用の商品だったため、緑を主軸に一部が赤で仕上げられた物だったが、なかなか綺麗であり贈りものとしても十分ではないかということで、買うことを決めた。
――まぁ、実際はカイトくんがいつも手を寒そうにしてたから温まってもらおうと思ったんだけどね。
「マスターは、自分の心配を後回しにしがちですからね、風邪でもひかれたら大変です。ですので、その手袋で温めてあげてください! ネネさんからの贈りものですから、きっと喜びますよ!」
「……え、えへへ、そうかな、そうだと嬉しいな。ところで、リリカちゃんはカイトくんに何を買うか決めたの?」
私が聞くと、リリカちゃんは腕にぶら下げていた紙袋を揺らす。
「……ここに入っているのですが、今は内緒にしておきます。勿論、ネネさんの分も買ってあります」
「そっかぁ、じゃあ楽しみにしてるよ! それじゃ、リリカちゃんへの贈りものを探したいから、手伝ってくれる?」
「……それはいいのですが、欲しいものとなると難しいですね。あまり考えつかないと言いますか……」
顔を下げ、顎に手を当てるリリカちゃんだが、少し疑問に思った。
先程、欲しそうにしていたものがあったと言うのに何を悩んでいるのだろうか?
私は先程のコートがあったフロアへと行き、リリカちゃんが良さそうと言っていたコートを手に取る。
「リリカちゃん、これは欲しくないかな?」
コートをリリカちゃんの前に出すと、少し驚いた様子の表情でこちらを見てきた。
「……え、これってさっきのコート」
「うん、リリカちゃんが喜んでくれたらいいんだけど……」
「いいんですか? このコート少し値段が高いのですが」
「いいの、贈りものなんだから。少し高いくらいのもので使いやすいものが、いいでしょ?」
「……あ、ありがとうございます! こう言う服ってあまり持っていなかったので嬉しいです!」
そういうと、リリカちゃんは喜びに満ちた顔を見せてくれた。
うん、やっぱりリリカちゃんは笑顔が似合う可愛らしい少女だ。
「……それじゃ、二人に贈るものも決まったからお母さんとかに贈るものも決めないと」
「あ、それでしたら、私もお付き合いします。お母様や家族への贈りものを渡したいので」
そうしてお買い物は続く。
◆
〜カイトsaid〜
夕方になり、ギルドの前でネネとリリカに合流した。
どうやら二人は一緒に行動していたらしい。
「二人とも、良いものは買えたか?」
「ええ、とっておきのものが」
「私も買えたよ〜」
どうやら良いものが買えたらしく、嬉しそうな表情を浮かべる二人。
――どうやら、気分転換も出来たようだな。
この《アイエン・リクシア》と呼ばれる祭典に興じようと思ったのは事実だが、同時に日頃の疲れをとってもらうことを目的としたリラックス出来るのではとも考えていたのだ。
「……それじゃあ、早速だが贈りものの交換をするとしよう。最初に渡したい者はいるか?」
「はーい! 最初は私がやるよ!」
どうやら、最初にするのはネネのようだ。
「私からは、カイトくんには……これを受け取って欲しいな」
そう言って、ネネは買い物袋から手袋を取り出す。
「……これは、手袋か?」
渡された手袋は、緑を主軸に所々赤色に刺繍された丈夫そうな手袋だった。
ふむ、なかなか使い勝手が良さそうだ。
「うん、カイトくんいつも手が寒そうだったからこんな時期だし、手だけでも温まったらいいなって思ったんだけど……どうかな?」
「……ああ、すごく嬉しいよ。ありがとう」
日頃から身体は鍛えているので、手が冷えるということを気にしたことはなかったが、言われてみれば、確かに手先が冷たくなっている。
ならば、ありがたく使わせてもらうとしよう。
「……着けてみても良いだろうか?」
「うん! 私も使ってくれると嬉しいな」
赦しも得たため、早速手袋をつけてみると……なるほど、なかなか温かいものだな。
「ちょうど、手が冷たかったんだ。ありがたく使わせて頂くとしよう」
そういうと、ネネは少し顔を赤くしながらも笑顔を作った。
「……そういえば、ネネ、リリカの贈りものは何を選んだんだ?」
「私はこのコートを頂きました。すごく気に入っています!」
くるりとその場で一回転して見せる。
リリカの着ているものに眼をやると、見慣れない可愛らしいコートを着ていた。
「それでは次は私が渡したいと思います。と言っても選んだものは一緒ですので同時に渡しますね!」
そういうとリリカはネネと俺に装飾された袋を差し出してきた。
袋を開けてみると、何やら箱のようなものが入っており、その箱も開けてみると、透明な球体のようなものが入っていた。
取り出してみると、球体の中に記憶に新しい雪のようなものと俺たち三人のミニチュアが遊んでいる様子が映し出されていた。
「……これは、なかなか面白いものだな」
ネネの方も同じものを色々な角度からこの球体を眺めていた。
「……雪原の球体というそうです。元々はその中に入っているツリーと家だけだったのですが、少し改良して私たちを入れてみたんです。どうでしょうか?」
「すっごい可愛いよ! 大切にするね!」
「ああ、このような装飾品はあまり見たことがないからな。だいぶ、新鮮味があって面白い。ありがとう、大切にするよ」
名残惜しくも《アイテムボックス》に雪原の球体をしまい、最後に俺の番となった。
「……最後は俺の番だな。俺のものは手作りで贈りものの装飾などはしていないが、御守りを作ってみた」
いざ渡す側となると多少気恥ずかしくなるが、気にしていたら意味もないので、彼女たちに作った御守りを見せることにした。
「わぁ、これって私たち?」
「……これ、ただの布ではないようですが原料は何でしょうか?」
「ああ、龍の部位を基本的に加工して作っている。中には魔力を通しやすく加工した魔石を埋め込んで、防御系統の魔法を付与している、本当に護ってもらえる御守りだ」
そう説明すると、なぜか二人ともポカンとした表情をしていた。
ん、どうしたんだ? 出来が悪かったのだろうか?
「……どうした二人とも、そこまで出来の悪いものだったか?」
確かに手作りというなれないことはしたため見た目があまり華やかなわけではないが、彼女たちそれぞれの特徴を捉えれていると思うが……?
「……な、なんか、カイトくんのプレゼントが予想以上過ぎて……龍の素材なんてどこにも売ってないよこんな凄いもの……ぬ、盗まれたりしないかな?」
「仕方ありませんよ、マスターがお作りになったものですので。それに、野盗などからも護ってくれるのでしょうから、盗まれることもないと思いますよ。流石、マスターです」
ふむ、どうやら喜ばれていないというわけでは無さそうなのでよかった。
「……これでみんな交換は終わったが、祭典ではこの後何かすることとかあるのか?」
「あ、えっと、あとはみんなで食事を囲んで、乾杯をしたりするのかな」
「……鳥のお肉の料理や、ケーキなどを食べたりするんですよね」
なるほど、そうやって祭典を盛り上げるということか。
「……なら、それもするとしよう。折角ギルドにいるんだ。食事をしていくとしよう」
「さんせーい!」
「ふふっ、今夜は賑やかになりそうですね」
そうして、上機嫌で俺たちはギルドに入って行った。
二日でこの量を書くのめっちゃ大変でした!同時に楽しかったです!
年内の投稿に関しては今回が最後となります!今年もお読み頂きありがとうございましたー!良いお年をー!( ^ω^ )




