とある朝
三章本編です〜。変な時間の投稿ですが許してください〜( ̄∇ ̄)
〜王都・宿・ルンク宿泊所〜
ふと、意識が覚醒していく。
そこには、見慣れない木の天井が映っていた。
――あぁ、そういえば戻って来ていたんだったな。
ひと月ほど虚実空間で修行をしていたため、一瞬天井が眼に入り多少驚いたが、すぐに自分の泊まっている宿の部屋であることに気づいた。
因みにネネやリリカは二人で別の一部屋を借りている。
流石に、男女同じ部屋というのは抵抗があったらしく、別の部屋に寝泊まりをしている。
――そろそろ起きるか、ネネやリリカを待たせていては悪いしな。
「……っ?」
そう思い、身体を起こそうとしたが、何故か身体が上がらない。
身体が怠いということはないし、疲れがあるわけでもない。
むしろ、今は体調は良くすぐにでも動ける程度には体力も回復している。
何事かと、重さのかかっている両腕を方向を交互にみると――
「……えへへ、カイトくん、ぎゅってしてあげるからね〜。むにゃむにゃ……」
「……マスター、抱っこ……抱っこしてください……すぅ……」
何故か、寝間着姿の二人が俺の腕にしがみついた状態で寝ていた。
そして、何やらものすごく可愛らしい寝言を言っている。
――な、何故、二人が俺の部屋に!?
一瞬にして自身の心臓が飛び上がった。
《理外の生命》になったとはいえ、記憶などは一緒のためこういうことは未だに慣れることはない、というか慣れない。
ほんの少し力を使えば、簡単に振り解くことは出来るのだが、流石に寝ているところをわざわざ起こすのも気が引けるため、なんとか試行錯誤した結果、《転移魔法》での脱出を試みて、魔法を発動させようとするが、何故か発動せずに魔法陣が消えてしまう。
――そういえば、侵入者対策で結界を張っていたな。
内心、舌打ちをする。
侵入者の場合にのみ発動し、魔法発動を阻害する結界を張っていたことを今更になって思い出す。
単に、武具などで寝首をかきに来たのなら大抵の武具で俺に傷一つ負わせることは出来ないので対策は必要としていなかったが、魔法に関しては、《精神魔法》などもあるため、対策していたことが仇となった。
さらに、結界を維持するための魔石は自身の荷物の中で解除も出来ず、八方塞がりだった。
「……はぁ……」
ため息を吐き、結局のところそのまま二人が起きるのを待つことにした。
〜数十分後〜
「……それで、なんで二人が俺の部屋に?」
二人が起きたタイミングで俺はベッドから抜け出し、二人を問い詰めていた。
二人は何故か顔を真っ赤に染めながら口を開けたり、閉じたりしている。
そして、その長い沈黙を破ったのはリリカだった。
「……え、えっと、マスター。その……怒っていらっしゃいますか?」
突然、リリカはそんなことを言ってきた。
俺はその質問の意図が分からず、質問で返した。
「……俺が怒っているように見えるのか?」
「い、いえ、その、私とネネさんが勝手にマスターのベッドに入ってしまっていたので……」
「……別にそのことについて、怒ったりはしていない。そうなった経緯を説明して欲しいだけだ」
可愛らしい寝言も聞けてなんなら寝顔を見てしまったのだ。これを役得と言わずしてなんというのか。
だが、その経緯が全くもって分からない。俺は確かにベッドに入ったときには一人だったはずで、二人が入ったのはそのあとということになる。
そして、その問いに答えたのはネネだった。
「……そ、その、カイトくんがお師匠様との戦いから帰ってくれたから、疲れてないかなってリリカちゃんと話してカイトくんに、もしものことがあったらということで仲間として守ろうとしてたんだけど……途中で私たち二人とも眠くなっちゃって、カイトくんのベッドに……えへへ」
苦笑いを浮かべながらも顔を赤くして説明するネネ。
横でリリカも熟れたリンゴのように真っ赤になりながらコクコクと頷いているのでそうなのだろう。
「……なるほど、そういうことか」
いわば、見張りをしていてくれたようだ。
俺はベッドから立ち上がり、二人の頭に手を乗せた。
「……ありがとうな。二人とも」
そういうと、二人は更に顔を赤くしてしまった。
――ふむ、緊張したのだろうか?
理由は分からないが、二人が可愛かったのでそのまま頭を数分撫でていた。
〜ギルド〜
「……だいぶ賑わっているな」
宿での出来事の後、俺たちはギルドへと脚を運んでいた。
ひと月の間、虚実空間の中で修行していたので、だいぶ久しく来たのだが、こちらの世界では一週という間も空いていないようで一応、失言をしないように気をつけねばならないな。
とそんなことを考えながら、ギルドに入ったのだが、いつもとは明らかに違うことがあった。
それは来ている多くの冒険者の見た目が若かったのだ。
若いと言っているが、二十代や三十代とも違い、ネネと同い年くらいの少年少女の冒険者が多く見られた。
「……やけに童子が多いな」
「あっ!」
そう呟くと、横でいきなりネネが声を上げた。
「ネネ、何か知っているのか?」
「うん、前に《メルゾート魔剣学園》の教師を探してるっていうことあったよね?今度は試験を受けるための受験登録を王都の子供たちがギルドでしてもらってるんだ〜」
「……なるほど、どうりで……」
そういえば、少し前にそのようなことを話した記憶がある。
あのときは他の用で頭がいっぱいだったのであまり気に留めていなかったが、《メルゾート魔剣学園》というのは響きが新鮮だったので覚えていた。
そういえば、ネネは学園に行くかどうか迷っていたな。
「……聞いていいことかは分からないが、ネネは学園に行くのか?」
その質問にネネがピクリと反応したのを俺は見逃さなかった。
そしてネネは重い口を開いた。
「……本当は、私はこのままカイトくんやリリカちゃんと冒険者をしたいって思ってたんだけど……私、パーティーにいて邪魔なんじゃないかなって思うときがあるんだ」
そう告げるネネの瞳には涙が浮かんでいた。
「……私って、カイトくんみたいな超人的な力もなければ、リリカちゃんみたいな神さまみたいな力もなくて……二人のおかげで昔よりもずっと強くなれたけど、今の私じゃ釣り合わないんじゃないかって……だから、もっと学園に行って魔法とかのことを勉強していつか、二人に並べるくらいに強くなりたいって思ってるんだ」
その言葉を聴いて俺はなんと反応したら良いのか迷った。
勿論だが、ネネの意見を尊重したいとは思っている、しかしネネがパーティーから離れられるのは俺だけでなくリリカも嫌なはずだ。
期間はどうであれ、一緒になってパーティーを組んだ仲間だ。
どう返したらいいかと悩んでいるとその答えを返したのは――
「……ネネさん、一つ思ったのですが、いいですか?」
俺のそばで一緒に話を聞いていたリリカだった。
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