閑話 神と神の談話《2》
コロナのせいで学校が分散登校……友達と会いたい(´;Д;`)
オルドレアの挙げた点は以下の通りだ。
一つ、《破壊の始祖》と《創造の始祖》を使える者は相当数限られること。
一つ、《破壊の始祖》と《創造の始祖》の使い方は天王神以外に知りようがないこと。
一つ、冥界の《破壊の始祖》と《創造の始祖》の封印場に不審な者がいた場合は即座に対応出来るはずということ。
一つ、《破壊の始祖》と《創造の始祖》を使った者の魔力が圧倒的だったこと。等々。
――三つ目に関しては寝こけていたことも考えられるが……。
「……確かにお前が寝こけた可能性を除けば、筋の通る話だな」
「……眠くなるのは仕方ないだろう?ふあぁ……言ってたら眠くなってきちゃったじゃないか。続きは一眠りしてからでもいいかい?」
「良い訳ねぇだろ!眼ぇ醒ませ!!」
ゼロニスの目覚ましとしてのキツい平手が、オルドレアの左頬を捉え、スパーンと軽快な音が部屋に響く。
「……ったく、少しふざけただけじゃないか」
叩かれた頬を押さえながら、オルドレアはぼやく。
「……お前、前に地獄でも寝こけてそこの管轄の奴にしこたま怒られたの忘れたのか?」
オルドレアは冥界神として色々な場所に派遣されることがあるが、その先で寝こけてたり引き籠ったりと色々と問題を起こしていたのだそうで、様々な場所で語り草となっている。
だが、そんなことを気にした様子も無くオルドレアは笑い声を挙げた。
「……地獄ってテルドミスのところだっけ?ハハハ、確かにしこたま叱咤されたなぁ。だけど俺があの時出した政策、上手くいってるんだろう?」
自家製の机に脚をかけ、椅子にもたれかかり、一つの世界を統治している神とは思えなく、ぐでーんとなんとも情け無い格好で器用にコーヒーを啜るオルドレアに対してゼロニスは本日何回目かの溜息をついた。
――コイツ、面倒くさがりで怠け癖が目立つが、腕は立つし、実力は明らかにコイツの方が上なんだよなぁ……。
その有能さは、この城の結界なんかもそうだが、この冥界という場所は何かと面倒ごとが多く起こることで有名だ。
冥界は死した生命の概念が流れついてくる場所であり、その概念の中には荒くれ者の様な野蛮な者もいるため、抑えることは……出来ないことはないが、非常に面倒くさい。
そういうことはオルドレア自身は手を出さず配下にやらせているそうなのだが、その対策を常に考え、指示しているのはオルドレア自身なので、どれほど有能なのかが窺える。
「……お前、優秀なのになんでこんな……」
「……ん?何か言ったか?」
「……っ、なんでもねぇよ!それより、お前の話、一つは分かったがもう一つ方は何なんだよ……なんか驚くことだったか?」
オルドレアが顎に手をやり、少ししてから『……あ!』と声を挙げる。
「あぁ、そういえば言うのを忘れてたな。……あー、と言ってもただ《理外の生命》が新たに誕生したということなんだが」
「あ?《理外の生命》ていうと、俺たちを含めた上位神の奴ら殆どがそうじゃねぇか、今更何に驚くってんだ?」
オルドレアに渡されたコーヒーを飲み干したゼロニスは、疑問を投げかけるのと同時におかわりを要求し、オルドレアはそれに無言でコーヒー注ぎなおし、静かにゼロニスの疑問に答えを返す。
「俺はいつ、神が《理外の生命》になった何て言った?」
その一言にゼロニスは眼を見開いた。
「……おい、まさか上位神以外から《理外の生命》が出たってのか!?いつ振りだよ、んなこと!」
「俺だって最初は驚いたさ。種族が人間だったんだからな。だが、その者の経緯を見てみたら頷けるものがあった。その者の名はカイトと言って『神託者』だそうだ」
「神託者……神々に力を認められた者に贈られる称号だったか?そいつ、そんなに実力者なのかよ?」
神託者……文字通り神によって言葉を贈られた者につく称号なのだが、神と言っても下位神や亜神などでは称号がつくことはなく、上位神……それも、破壊神や創造神などの神々でなければ、称号を得られない。
「……てこたぁ、なんだそのカイトとかいう奴は上位神に眼をつけられてんのか?」
「……それだけなら良かったんだが、さっき天王神様なんじゃないかって言った少年がいただろう?実を言うと、そのカイトという者を《理外の生命》にしたのがその少年だったんだ」
「……はぁ、驚くのにももう疲れたんだが、そのことを先に言えよな。そんなこと聞いたらさっきの奴が最高神様だって納得出来たんだが……。てか、どうしてその神託者とか言うやつに最高神様が関与してんだよ?」
そうゼロニスが問うが、オルドレアは手を挙げ、首を左右に振った。
文字通りお手上げと言うことだろう。
「そんなことは俺も分からないよ。俺は諜報員なんかじゃないんでね、ただ逃げ帰る前にたまたまカイトという人物を見つけただけであって、あの人間と天王神様との関係なんて知り得ないよ」
それを聞き、ゼロニスは『それもそうか』と頷きを返した。
――そういえば、こいつは自分の興味のある物以外はからっきしだったな。
オルドレアは、昔から根城で引き籠ることで有名だったが理由としては『俺は対人関係を持つのが苦手でな』とオルドレアらしい理由だったが、何故かゼロニスとの会話には参加しており最初は他の神々を混乱させていたが、今は彼の個性として周囲には知られている。
「……んで?その神託者がいるってことと、そいつが、《理外の生命》になったことは分かったが、そんなこと知ってお前はどうするつもりなんだよ?」
その言葉にオルドレアは、『ククッ』と不敵な笑みを浮かべる。
「……さぁ、どうすると思う?」
その瞬間、ゼロニスは背に寒いもの感じ、顔を引き攣らせた。
「おい、まさかとは思うがそいつを始末しよう何て考えてるんじゃねぇんだろうな?」
元より、オルドレアは表立って何かするということはしない性格だが、自らの意思で必要だと判断すれば躊躇なく対象の破壊や、抹消などは平気でする。
ましてや、人類から《理外の生命》という規格外が発生したことにより、バランスの保たれていた世界の均衡が崩壊する可能性も容易に考えられる。
そのことを指摘させるとオルドレアは、顔を伏せ、肩を震わせ――
「プッ、アハハハハハ!クヒヒヒ、アハハハ!!」
――大爆笑し始めた。
「……は?」
「アハハハ、ゼ、ゼロニス、君ってギャグセンス高いねぇ、良いセンスしてるよ全く、ハハハ!」
「誰が、ギャグセンス高いだ!てか、おい、じゃあさっきの笑みはなんだったんだよ!?」
「……え?あぁ、ただお手合わせ願いたいと考えていただけさ。人類初の《理外の生命》がどれ程の実力か君も気になるだろう?あー、笑いすぎて疲れたぁ」
その言葉を聞き、ゼロニスは先程まで強張っていた筋肉から脱力することを感じ、脚を組み直し椅子の背もたれに背を預けた。
――そういや、コイツも敵の排除とかよりも強い奴との戦闘を好むタチだったな。
ゼロニスは元より、性格からして戦闘好きと多者に知られているが、その旧友であるオルドレアは根城に引き籠ってばかりいるので、素性を知らない者も多く、彼が戦闘狂であることを知る者はさらにごく少数となっている。
「そりゃあ、気になるけどよ。だが、お前は冥界を俺は煉獄を守り、管理する管理者なんだ。そう簡単に他の世界に影響は出せないだろ?」
「……まぁ、そうだな。下手に干渉してうっかり滅ぼしたりしたら大変だしな……』
そう口にするオルドレアの言葉は虚言ではない。彼らが世界に干渉し、《極醒魔法》の一つや二つ放とうものならたちまち、世界が一つ簡単に消え失せる。
オルドレアがボサボサの髪を手で弄びながらそう呟く。
その様子を見ていたゼロニスがいきなり『あっ!』声を挙げる。
「……なんだい?いきなり、声を挙げられると頭に響くんだが……?」
「そういや、お前に言っておきてぇことがあったんだよ」
「……言っておきたいことだって?」
「最近のお前の行動のことだよ」
「俺の行動だって?なんかおかしいことしたかい?」
首を傾げながらも、だらしない格好を取り繕おうとせずゼロニスに問いかけ返す。
一応、オルドレアも冥界の管理者であり、ある程度の権限を最高神より与えられているため、こんな格好をしていたら配下の者たちに何を言われるか分からないが、残念ながらこの場にそのことを咎める者はいなかった。
ゼロニスは、先程より警戒の色を瞳に込め、オルドレアを見据えた。
「……お前、最近どこをほっつき歩いてんだ?」
「……ほっつき歩いているというと?」
その一言にオルドレアは眼を細め、ギィと椅子を軋ませながら体制を変える。
「お前の配下どもが、お前が冥界を徘徊してるから何かあったんじゃねぇかって、煉獄の領域にまで来るようになったんだ。お前は気づいたら根城の何処かに行っちまって連絡が取れねぇって、配下どもが愚痴ってたぞ」
実際、冥界だけでなく数多の世界では、その世界に役割を持つ神の配下――天使や悪魔が別の世界に赴くとこは殆どない……というより、本来、別世界に赴く必要がないのだ。
それほど、管理者には強い権限が与えられており、大概のことであればその世界の管理者が権能を使うことでなんとかなるので、別世界に助力を求める必要が無い。
だが、オルドレアに関しては例外であり普段、根城に引き籠もり、配下への命令は【念話】を使用し指示を出している。
そのため、直接顔を合わせた配下が皆無に近い上、根城にしているこの城にも、結界によって近づくことが難しいために場所として近い、煉獄を支配しているゼロニスに助けを求めたというなんとも言い難い理由で、ゼロニスは頭を抱えていた。
「……ああ、ただずっと城に引き籠ったりしてると身体が鈍ったりしたらいけないからね、少し運動がてら冥界を廻って歩いていたんだ。それに、冥界神の俺が管轄内の様子も分かってないなんて問題だろう?」
「……むぅ、確かにそうだな。だが、疑問が残るな」
椅子に腰掛けながら、ゼロニスは脚を組み直す。
「……お前が、いきなり自分の管轄の様子を気にするなんてお前らしくねぇ」
「……君は俺のことを、ヒキニートとでも思っているのかい?」
「? 当たり前だろ?」
ゼロニスがキッパリと言い切る。
その様子に何か言いたそうにオルドレアは口を数回開閉し、その後諦めたようで大きなため息をこぼした。
「う〜ん、自身の行いを省みても仕事はしているとは思うんだけどな」
「ハハハッ、まぁ、さっきのことは冗談として、もう一つ、お前に言っておきたい……というか聞いておきてぇことがあんだよ」
「? 聞いておきたいことだって?」
「ああ、これなんだけどよ」
ゼロニスは懐からあるものを取り出す。
それは、一通の手紙だった。見た目もシンプルであり、装飾も施されておらず、さらには差出人の名すらも書かれていなかった。
その手紙を見た瞬間、オルドレアは眼を丸くした。
「……それ、どこで手に入れたんだい?」
「あ?……確か、昨日、いきなり俺の部屋に魔法陣が現れてそこから、この手紙が出てきたんだったな」
「それってもしかしてこれと同じかい?」
オルドレアも同じような手紙を取り出す。
「俺のところにも同じような手順で、この手紙が届いた。恐らく内容も一緒だろう……俺の手紙には『近々、そちらに伺う』と短い文章が書かれていた」
「そうだな、俺のにもそう書かれていた。となると差出人も同じか」
「恐らくな」
そして、2人が手紙を見直そうとしたときにそれは起こった。
「――ッ!」
「お、おい!なんだこれは!」
ゼロニスとオルドレア、両者が驚きの表情を作る。
そして、眩い閃光が広がり手紙が青白い焔をあげ、燃え始めた。
一応補足しておきますと、この二人は十万ある次元をそれぞれ管理している創造神及び、破壊神と同じ位で総じて原初主神と呼びます。
単一の世界を管理している創造神もいますが、その神たちより一応地位が高いです。
最高神→原初主神→世界ごとの神々→下位神→ 天使及び悪魔のような配下たち
とこのような階級となっています。神界などにヒエラルキーが一応あるようですね(^ω^)
分かりづらいかと思ったので補足させて頂きました(分かりやすく書けよ!)
長くなりましたが、この作品がいいと思ったり、続きが見たい!と思ったら、評価やブクマ、感想をしてくださるとありがたいです!それではまたッ!




