帰還
いきなりの投稿ですいません(>人<;)
〜虚実空間〜
結論から言おう。
やはり、俺は人間を辞めたらしい。
俺は、《理外の生命》になったということで、その魔力を身体に順応させようとして、大体一か月が経過していた。
そのおかげか、だいぶ《理外の生命》にも身体が慣れてきた。それは言いのだが――。
「――フッ!」
俺は目の前に広がる森林に向かってヘカトンケイルを振り、剣撃を飛ばす。
――轟音。
剣撃が地面に着弾した瞬間に、巨大な粉塵が舞い上がり、爆音と共に目の前に広がっていた森林を跡形もなく消し飛んでいた。
最初の頃より、魔力の操作が慣れてきたのでコントロールも良くなっている。
最初は狙いが定まらず、周囲のものを根こそぎ吹き飛ばしていたが、今はしっかり狙ったものだけを吹き飛ばせている。
視線を剣を握っていた左手に眼を向け、数回握って開いてを繰り返したが、特に痺れたりもしていない。だが――
「……力が強くなりすぎているな。少し加減を考えるとするか」
《理外の生命》になる前でも、大木の幹を片手で握りつぶすことくらいは簡単だったが、今は眼力を込めるだけで眼の前のものが爆ぜるようになっていた。
――力を加減を考えれば日常生活に支障はないが、戦闘に於いて周りのものを余計に破壊してしまう恐れがあると、それはそれで面倒だからな。
魔力の流れをコントロールし、身体に纏っている魔力を身体の内側に抑え込む。
「……ふむ、そろそろ向こうの世界に戻った方がいいかもな」
ここに来てからどのくらいの時間が眠っていたかが分からない以上、ネネやリリカに心配をかけている可能性があるからな。
実際、転生する1000年ほど前にリリカは、
異世界に行くと、説明をしておいたはずが数ヶ月の間、俺を探し回っていたという事件が発生したこともあった。
リリカは冷静そうな性格をしていそうだが、なにかと心配性であり、感情を隠すことも大分苦手としている。
――まぁ、それもリリカの個性だと思うが。
俺は、ふぅと息をこぼす。
「……あいつらにまた、迷惑をかけてしまったな」
前にルイとの一件の時にもネネなどに心配をかけてしまったし、何かと心配されることが多いというのは、俺の欠点とも言えるな。
と、そんなことを考えながら、破壊した土地を修復し、魔法陣を描き、現実世界に転移した。
◆
〜現実世界〜
魔法陣をルマイドの街の路地裏に繋ぎ、そこに転移した。
「……と、【転移魔法】の精度も十分だな」
【転移魔法】の精度は転移する場所によって決まる。
同じ空間での転移と、別空間での転移では魔力の制御が全く異なり別空間への空間転移は【転移魔法】の基礎を知っているだけでは出来ず、転移出来たとしても魔力の流し方によっては無の空間である空間の狭間に転移してしまうこともある。
――1ヶ月の間、修練した甲斐があったな。
「……まぁ、こちらでは数時間と経っていない筈だ。早く探さないとな」
そう呟き、【魔力感知】を発動させ、歩き出した。
そして数分後、2人の魔力の感じた場所へと足を運んだのだが――
「……ここは……」
2人の魔力を感じた場所に向かってみると、そこは見慣れた場所だった。
若干、煤けた木の柱に入り口に綺麗な装飾がなされている。
そこは、俺たちが寝泊まりしていた宿だった。
――ふむ、見つけやすいという理由でここに留まってくれていたのだろうか?それはありがたい。
内心、彼女らに感謝しながら宿の中に入っていった。
〜宿・ルンク宿泊所〜
「……2人はニ階か」
宿に入り、客室のある二階へと続く階段を登ろうとしたときに後ろから声がかかる。
「……あ、あのお客様」
「ん?なんだ?」
声をかけてきた宿の人はこの宿のロゴマークが刻まれたハットをかぶっており、職場の雰囲気に合った格好をしている。
「……お客様、失礼ですがご予約をなさりましたでしょうか?」
……む?
「一ヶ月間分の代金を既に払って部屋借りているはずだが?」
そう言うと、宿の者は首を傾げる。
「お手数をおかけするのですが、身分証明の出来るものをお持ちでしょうか?持っているのでしたら、こちらのお客様リストと照合してみます」
そう言われたので、仕方なく俺はギルドカードを渡し、照合出来たのかギルドカードを持ってこちらに戻ってくると同時に頭を下げられた。
「カイト様でしたか。申し訳ありません、何分お姿が変わっていたので、他のお客様かと勘違いしてしまいました。お仲間の方々が二階の方でご心配なさってましたよ」
「分かった。まぁ、姿に関しては色々あったんだ。気にしないでくれ」
「は、はぁ……」
疑問の様子を見せる宿の者を他所に、二階の方へ上がって行く。
――やはり、2人に心配をかけてしまったか。
前のかくれんぼでの一件もあったからな。今度、彼女たちに何が欲しいか聞いてみるか。
2人の魔力を感じた、リリカの借りている部屋の前に立ち、木製のドアを数回ノックする。
「……おーい。2人とも、戻った――」
「カイトくーーーん!!」
「マスターーーー!!」
「なん――わぷっ!」
ドアをノックした瞬間に2人が部屋から飛び出し、俺に飛びかかってきた。
俺の至る場所に彼女たちの柔らかいものが当たり、緊張と同時に顔が赤くなるのが分かった。
「……お、お前ら、分かったから退いてくれ。動けないぞ」
「あっ!ごめんね」
「す、すみません、マスター!……しかし、マスター……なんですよね?その姿は……?」
「……あぁ、そのことについて話すから、とりあえず部屋に入れてくれないか?」
そう言って俺は、部屋に入り、事の顛末を語った。
◆
「……《理外の生命》、ですか?」
俺の話を聞き、信じられないと言う眼差しでこちらを覗き込んでくるリリカに俺は、頭の後ろを掻きながら、答えた。
「……あぁ、俺は《理外の生命》と言うものになった。正確には師匠の権力を使ってだがな」
《理外の生命》の力は普通の生物の限界を優に超えており、箍が外れた様に魔力の量も増え、身体能力の大幅な向上も見られた。
そのおかげで、数回ほど虚実空間を破壊してしまい、修復することになったが……。
「……この姿は《理外の生命》になったことで順応出来る身体に創り変えた結果らしい」
眼あたりまで伸びている白髪を弄りながら説明する。
この髪は、前にヘカトンケイルで切り、短くしたのだが直ぐに伸びて来たので諦めて纏めて、このまま放置している。
同じときに発現した赤眼に関しては、魔力循環の補佐機能が付いているようで、《理外の生命》の魔力に慣れるのに結構、役に立った。
「……う〜ん。なんかこういうこと言っちゃうと失礼かもだけど、カイトくん、完全に女の子の見た目なんだよねぇ」
ネネが何やらとんでもないことを言い始めた。
「あっ!それ分かります!完全に女の子ですよね!可愛いです!」
そして、何故かリリカもそれに賛成している。
――辞めてくれ!何というか、それは色々と男として思うことがあるから!
内心そう叫ぶが、実際に見た目は変わっているので、黙っていた。




