《理外の生命》
テストの影響で更新が遅れました!申し訳ないです!(´;Д;`)
「あがっ!があああ!!あああぁぁああああああぁぁ!!!!!!」
流れ込んで来た魔力の濁流に身体を蝕まれていき、内側から壊されていく感覚が走り、皮膚が灼かれるような錯覚を覚える。
腕を切り落とされても、痛みを感じない強力な【痛覚耐性】を常時発動しているが、そんなものは元からなかったかのように、激痛が襲いかかる。
――師匠の言っていた後悔というのはこれのことか!
身体が造り変えられていくということが直に分かり、脳が沸騰しそうに身体が熱い。
かと思ったら、凍えるような悪寒が走り、その場に蹲る。
「がはっ!……はぁ、はぁ、……はぁっ……」
思い切り血反吐を吐き、やっとまともに息を吸うことが出来、痛みに悶えながらも息を整える。
――クッソ、息が出来るまでに痛みは回復したが、まだ身体の至る場所が灼けるように熱い!
この状況に効果があるか分からなかったが、どうにかこの熱さと痛みを消そうと【絶対癒効果】を発動させようとするが、発動させるために動かした腕を何者かに掴まれる。
「……まだ、《理外の生命》になってすぐは魔力の質に順応出来てないからね。まだ使っちゃ駄目だ」
声の主である師匠は、尋常ではない力で腕を掴んでいる手とは別の手で、【絶対癒効果】と同じような魔法を発動させ、俺の身体中の熱さや痛みが冷水で冷やされたかのように消えていく。
だが、直ぐには身体に力が入らず、その場に倒れ込み空を仰ぐ。
「……はぁ、はぁ、師匠、なんですかこれは……?」
「……何って、君の存在を《理外の生命》に造り変えただけさ。《理外の生命》である僕の魔力を持ってすれば、存在を造り替えることは造作もないよ。それより、調子はどうだい?痛む場所とかがあれば治癒するけど?」
「……いや、痛みなんかはさっきの魔法で無くなったんですが、精神的に疲れ――ッ?」
起きあがろうとしたときに、身体のある違和感に気づいた。
正確にいうならば髪だ。
瞬間的に目の前に入って来たのは真っ白に染まった長い白髪。
透き通るという表現がしっくりくるというほど美麗でサラサラな髪だが、その髪が自身のものだということに気付くのに数秒の時間を要した。
「な、な、なんじゃこりゃああああ!」
身体の奥底からの絶叫。
――なんだ?なんなんだ、これは!
何度確認しても、以前の短髪の黒髪と対照的な長髪の白髪へと髪に変化していた。
これは、《理外の生命》に存在を造り変えたことによる影響なのだろうか?
「し、師匠、この姿は一体……?」
「あー、実をいうと《理外の生命》になると、存在が造り変えられた影響で、姿が変わることは結構あることなんだ。それに変わったのは髪だけじゃないよ、眼の色も右目が赤く変わってるよ」
――え??マジ?
そう思い、まだ慣れない魔力を使い簡易的な鏡を作り、覗き込む。
そこには、ぱっと見、少女のようにも見える赤眼と長白髪を持つ俺の姿が映し出されていた。
眼の色が変わったのはあまり気にならないが、髪がここまで長いと流石に邪魔に思える。
――よし、切るか。
そう即決し、《自然魔法》の【旋風】で丁度いい長さに髪を切ろうとしたが――
バチンっと音立て、魔法が消え去り、髪は無傷のまま何事もなかったかのように揺れていた。
「……は?」
思わず、素っ頓狂な声を挙げてしまった。
それもそのはず、【旋風】は通常、攻撃用の魔法であり、威力は弱いものの岩程度ならば容易く切断することの出来るもので人間の髪が切れないはずがないのだ。
そう考えると、この髪は岩よりも硬度が高いということになる。
「ハハハッ、そんな魔法じゃ無理だよ。なりたてとはいえ、《理外の生命》になったんだから、身体の一部も物凄く強靭になっているはずだよ。そうだなぁ、君のあの剣だったら切れるかも知れないけど……」
腹を抱えて笑っている師匠に若干の殺意を覚えたが、今はそんなことどうでもいい。
ヘカトンケイルを握りしめ、自身の髪に刃を当てた。
すると、師匠の言う通り、普通の髪を切るようにすんなりと切ることが出来た。
ヘカトンケイルを使い、髪を丁度いい長さに切り揃え、その場に座り込んだ。
「……師匠、《理外の生命》になった途端、人間じゃなくなった気分なんですが……」
髪を切るだけでこんなに苦労するとは思わなかった。
強くなれたのは嬉しいが、今後は色々とこの力に慣れていく必要があるな。
「え?あぁ、そっか。説明してなかったね。ん〜、ステータスを見た方が早いかもね。開いてみな?」
「? まぁ、そう…ですか。では【能力板開示】」
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名:カイト・ルイーク
種族:極人
LvA1
HP:989,347,904/989,348,682
MP:864,598,668/999,999,999+
攻撃:13,784,689
防御:11,453,789
素早さ:10,762,526
能力:――
固有スキル
種族変換、言語理解、物質融合、全属性魔法行使 、大剣術、生物錬成、鑑定、魔力感知、アイテムボックス、魔法統合、森羅万象、 原初魔法行使、身体変化、〔《涅槃能力》 絶無〕
スキル
火炎魔法Lv10 氷結魔法Lv10 自然魔法Lv10
白光魔法Lv10 黒闇魔法Lv10 時空魔法Lv10
背反魔法Lv10 砂嵐魔法Lv10 猛毒魔法Lv10
雷電魔法Lv10 水流魔法Lv10 極炎魔法Lv10
極氷魔法Lv10 転移魔法Lv10 極癒魔法Lv10
幻影魔法Lv10 創造魔法Lv10 精神魔法Lv10
呪術魔法Lv10 解毒魔法Lv10 解呪魔法Lv10
破壊魔法Lv10 大嵐魔法Lv10 終焉魔法Lv10
称号
龍殺し、魔族の支配者、時の支配者、大魔導士、剣豪、神殺し、神々の弟子、神託者、邪神の天敵、極地への到達者、超越者
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色々とツッコミたいものがあるのだが……。
まず、種族が人間から極人になっている。
と、言うことは……。
「……俺は本当に人間を辞めたのか」
「だから言っただろう、後悔だけはしないようにってさ」
なるほど、あのときの言葉はこう言うことか。
「ですが、そういうことなら先に言って欲しかったですがね」
「先に言っちゃったら、楽しみがなくなっちゃうだろう?」
これが楽しみと言えるのかはさておき……。
「まぁ、後悔なんてしていませんよ。強くなれたのは事実ですからね」
「ハハハっ、それはよかったよ。可愛い愛弟子に嫌われてはたまったものじゃないからね。あとは、いつも言ってるけど――」
「えぇ、分かってますよ――」
そして、力を持つ者にとって一番大切であり、大事な言葉を師匠と同時に口にした。
「「――力は使えど、飲まれるな。力に決して使われるな」」
この言葉は修行のときから常々言われていたことだ。
力を持つ者は鍛錬を積み、より強く強靭な身体を作り上げ、順応出来る魔力の量を増やし、更なる力を手にしていく……が、大き過ぎる力は使用する者の身体を蝕み、傷つけ、最終的にその者自身の破滅へと誘う。
『そのことを念頭に置くことを前提として強さを求めること』と修行のときに言われていた。
「……クククっ、そのことが分かってるなら、言うことはもうないよ。ただし、《理外の生命》の力は今までとは比べ物にならない力だ。その力に溺れないようにね。……っと、そろそろ時間だ、僕はこれで、暇することにするよ」
「えぇ、色々と有難う御座いました。師匠」
俺が、深々と頭を下げると師匠はその顔に笑みを浮かべ、『それじゃあ』と言い残し虚空の彼方へ消えていった。
その様子を見送り、俺は息をこぼした。
「まずはこの力には慣れないと、話にならないな」
力を手に入れたところで使わなければ宝の持ち腐れとなり、使えなければそれこそ無駄になってしまう。
そうならないためにも、未だ重い身体に鞭を打ち、おもむろに修行を始めた。




