《理外の宝具》
遅くなりました!申し訳ないです!
「……師匠、《理外の宝具》とはなんですか?」
「あれ?、教えて無かったっけ?」
師匠はキョトンと眼を丸くし、呆然とつぶやいた。
師匠は、頭をガシガシと掻き始め髪がボサボサになってしまっていた。
――あぁ、これは予測していたことが外れたときの師匠の癖だったな。
師匠は、隙などは一切なく常に気を張っていると思われがちだが、一緒にいるとやけに癖や、抜けている所などが何かと多くあり、随分と人間味に満ちている。
俺としては、師匠やファルヴィス、ヴェルフェンくらいに人間味があった方が接しやすい。
――神の中には忠義を意識し過ぎるあまり、俺にまで固く接してくる者もいるからな。
「お〜い?どうした?」
そんなことを考えていると、師匠が俺の顔の前で手を振り、現実世界に引き戻された。
「あ……いや、なんでもないです。……コホン、それで、《理外の宝具》って一体なんなんですか?」
「あー、それなんだけど…………その前に君って君たちの世界の仕組みって知ってるかい?」
……世界の仕組みだと?師匠に学んだ記憶を辿って見るが、そんなものを教わってはない。
「……その様子だと説明してなかったみたいだね」
『じゃあ……』と師匠は語り始めた。
「まず、君は《スキル》や、《称号》って何か分かるかい?」
「ステータスに表記のあるコレのことですよね?」
ステータスプレートを開示して、師匠に見えるように可視化させ、《スキル》と《称号》を指さした。
「うん。その《スキル》や《称号》って誰がつけていると思う?」
「……妥当な考えとして、ヴェルフェンなどの創造神などが決めているのでは?」
「……ふふふっ、そんなことしていたら、創造神といえど身が持たないよ。……正解は君たちの住んでいる世界自身だ」
世界自身だと?
「世界を創造するには3つのルールがあってね。まず『生物を創造し生存出来る状態』。次に『必要なとき神が手を加えられるもの』そして、最後に『世界が意思を持っていること』この3つが世界創造の条件なんだ。そして、世界は創造された時点である程度の制約がつく、それが摂理というやつさ」
「ステータスなどが存在しているのもその摂理が原因であり、それに付随し、《スキル》や《称号》がつけられると言うことですか?」
師匠は俺の考えに、腕を組んで首肯する。
「その通りだ。んで、《理外の宝具》ってのは、その摂理から外れた道具のことを指すんだ。僕の概念剣もその一つだね」
――摂理に反する武器と言うことか。
そう聞くと中々、恐ろしいものを創ったのだと実感する。
だが、そうなると1つの疑問が思い浮かぶ。
「……師匠、さっきヘカトンケイルも《理外の宝具》と言いましたよね?この武器にそれほどの力があるんですか?」
普通の武器から考えると群を抜いて強い武器だが、先程の話に出た師匠の概念剣に比べてしまうと幾分、性能は劣るように思える。
概念剣は概念を取り込み、取り込んだ概念を具現化するという通常ではありえない暴論な武器だったが、その武器と同じ位置にいるというのか?
「……そうだね。君はその武器の性能を確認したことってあるかい?」
「……はい。一部不明瞭なものがありましたが、それ以外は――」
「――そう!その不明瞭が《理外の宝具》の能力なんだよ。そうだなぁ、概念剣は僕が壊しちゃったし――そうだ!カイト、僕を【鑑定】してみてくれるかい?」
何故《理外の宝具》の話から師匠を【鑑定】することになったんだ?
「……まぁ、分かりました。【鑑定】」
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名:エルメス・ ████
種族:最高神
LvΩ94619
HP: ████/████
MP: ████/████
攻撃: ████/████
防御: ████/████
素早さ: ████/████
能力:ーー
固有スキル
荳牙鴻荳也阜、蜑オ騾?閠、神羅万掌、天王
-これ以降のスキルは表示出来ません-
称号
生命の始祖、生命の支配者、創造神の統率者、破壊神の統率者、混沌の覇者
-これ以降の称号は表示出来ません-
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うん?待て待て、何かの間違いだ。
そう言い聞かせながら、再度【鑑定】を発動させるが結果は変わらなかった。
――なんなんだこのステータスは!?
まず、レベルが普通ではなく何やらおかしい記号のあとに数字が書かれている。あれがレベルなのだろうか?
そして肝心な身体能力は表示が出来なくなっており、ステータスの大半が見えなくなっている。
それに固有スキルでおかしな表記になっているもので前に似たものを見たことのあった。
――これが《理外の宝具》のスキルだと言っていたものか?
だとしたら、何故そんなスキルを師匠がもっているんだ?
「見えたかい?固有スキルの中に見えないものがあっただろう?さっきの話を詳しく話すと、その見えないスキルは《涅槃能力》と呼ばれていて、摂理の効力を超えた力を発揮するスキルなんだ。《涅槃能力》が道具に付いていたら《理外の宝具》と呼ばれ、僕みたいに生命に付いていたら《理外の生命》と呼ばれるんだ。まぁ、このことは僕が勝手に名付けたんだけどね」
《涅槃能力》……そんなものがあったのか。
ヘカトンケイルに《涅槃能力》が付いていたと言うことは神器を元にした武器だったからか、よく分からないが、あのスキルの正体は分かった。
だが、同時にある疑問が浮かんだ。
「師匠、一つ気になったのですが、この《涅槃能力》の効果の確認って出来ないんですか?」
「ん?何故だい?」
「前に、ヘカトンケイルのスキルの効果を【鑑定】したのですが、スキルの表記同様に読めなかったので……」
前に表記を見たときは何やら数字が幾つか書かれていたのは分かったが、それ以外はさっぱり分からなかった。
「ああ、それはスキルを一回でも発動すればスキル名と共に効果も分かるはずだよ。僕みたいに《理外の生命》になれば発動させなくても見えるようになるけどね」
「……じゃあ、今までヘカトンケイルの《涅槃能力》を発動出来てないんですか?」
「そうだね。だけど、僕がみた感じだとその武器の《涅槃能力》は少し特殊でね。武器の使用による経験値の量によって発動する感じかな?まぁ、時期に見えるようになると思うよ」
ふむ、時期に見えるなら、わざわざ急ぐ必要はないか。
ん?待てよ?そういえば《理外の生命》とやらになれば、見えると言っていたな。
「師匠、最後に聞きたいのですが、《理外の生命》と言うのは俺はなれますか?」
「……っ!」
俺の言葉を聞いた瞬間、僅かだが師匠の表情が変わった。
そして、今までの声色とは少し変わり、真剣な眼差しで紅と翠の眼がこちらを見据えていた。
「……君は、《理外の生命》になりたいのかい?」
「なりたいか、なりたくないかで聞かれたら、俺はなりたいです」
俺は正直に答えた。
俺は、強くなりたい。誰よりも強くなって、いつか目の前にいる師匠を超えることが現在の俺の目標だ。
――超える相手から教えを請うというのもおかしな話だが……。
そういうと、師匠は俺の顔を覗き込み、少し考える仕草をしてから微笑を浮かべながら頷いた。
「……その眼は、本気の眼だね。いいよ、ただし、後悔だけはしないように」
「……えっ」
師匠の言葉が紡がれた次の時には気を失いかけるほどの魔力の濁流に襲われた。
なんか気づいたら一章とのボリュームの差がすごいことになってたのに最近気づきましたΣ(゜д゜lll)
元々はこんなに長くする予定はなかったのですが色々書いていくうちに楽しくなってこんな量になっていました(´ω`)
そんなこんなで二章が続いていますが、二章はもう少し続きますのでお付き合いください!
最後にこの小説を読んで面白かったり、続きが楽しみな読者様は下の☆☆☆☆☆から評価をして下さると作者が歓喜の舞を踊りますのでよろしくお願いします(*´∀`*)
長文失礼致しました!




