その後
遅れましたーー!!(´;Д;`)すいません
〜???〜
気がつくと俺は暗い空間に立っていた。
――どこだ、ここは?
最初にその疑問が頭をよぎり、次に違和感を感じた。
その空間はただの暗闇とは違い、空間そのものが生物であるかのように不気味に闇が蠢いていた。
――色々と疑問があるが、とりあえずこの空間を調べるために少し歩いてみるか。
その場から動こうと、足を前に出すとヌチャ、と嫌な音がした。
足元は泥沼のようにぬかるんでおり、気をつけて進まなければ怪我をしそうだ。だが、床には泥などは見えず、ただ漆黒の闇が空間を支配していた。
――本当に気味の悪い空間だ。
視界に見える範囲に光は存在せず、無限の闇黒が広がっていて普通の生物であれば、気が狂うだろう。
まぁ、この空間でも魔法は使えるようで、精神魔法をかければ、なんてことないが。
◇
何日、歩いただろうか。はたまた、まだ何時間か。
永遠に続く闇……魔法を使っていても既に気が滅入りそうだった。
そして、ソレはいきなり現れた。
ソレはこの空間で初めて視界に入った闇以外のものだった。
――あれは、人……か?
そこに立っていたのは、この闇とは対称的な透き通るような長い白髪に宝石のように紅い赤眼を持った青年のようなもの。
見た目的には20代にもなっていないようで、まだ少し幼さが残っているように見えた。
だが、そんな外見からは想像も出来ないほどの禍々しい魔力を放っていた。
その禍々しさは、あの《創造の半身》と《破壊の半身》と同列か、それ以上のものだった。
俺は、警戒を最大限までに引き上げ、眼の前のソレを睨む。
『ねぇ、君、誰だい?』
こちらに気づいたようで、こちらに語りかけて来る。
声を聞くと、見た目よりも少し幼く聞こえ、10歳程度の子供の声のように思えた。
未だに警戒を解かずに、ソレの問いかけに応えた。
「ふむ、通りすがりの迷子といえばいいか」
『……ん〜?君、なんでここにいるの?』
それは、俺が聞きたいことなのだが……。
コイツが何者で何故ここにいるかなど疑問を挙げればキリがないが、とりあえず、この空間について知っていることを話してもらうとするか。
「お前はこの空間に住んでいるのか?この空間について知っていることを教えてくれ」
『……』
眼の前のソレは顎に手をやり、考える仕草をし、しばらくしてから、口をひらいた。
『……この空間は、僕の創った空間……だと思う?』
眼の前に立たずんでいるソレは、何故か疑問系で俺の問いに応えてきた。
自身がやった記憶がないのか?だとすれば無意識下で空間を創った……いわば、力を制御出来ていない状況だったのか……今のところでは不明な点が多すぎるな。
「ここがお前の創った空間なら、ここから出して欲しいのだが?」
『……んー、それは難しい。ここは君の夢だと思う。だから無理』
ん?
「意味がよく分からんな。ここはお前の創った空間ではないのか?」
『……ここは僕の空間、だけど君の夢。両方とも合ってる。……んー、君の夢に僕の空間が繋がってるって感じ』
こいつの言っていることが真実か嘘かというのは最早、どうでも良いと思っていた。
『一刻も早くこの空間から出たい』という気が大きくなっていたので信用ならないが、こいつの言うことを信じることにした。
何故、俺の夢にこんな不気味な空間が繋がったのか謎だが、とりあえず、ここから出る方法は分かったので俺は、ため息をこぼした。
つまり、この空間は俺の夢ならば俺が眼を覚ますまで待てばいいということだ。そうすれば、自ずとここから出ることができる。
『……君、名前はなんて言うんだい?』
いきなり、話しかけられ、少しビクッとなったが、何事もなかったかのように問いかけに応えた。
「そうだな。俺はカイト・ルイークという名前だ。お前はなんと言うんだ?」
すると、少し言い淀むように俯きながら、こう口にした。
『……僕……名前、無い。彼にも教えられてない』
――名前が無いか。
それに、彼……とは誰だ?こいつと誰かが面識があると言うことか?
となると、その彼という存在がコイツにこの空間を作らせたという可能性も出てくる。
ますます、こいつの存在が謎に包まれた。
と、そんなことを考えていたら、どこからかミシリと耳に残る音が鳴り始めた。
どうやら、この音は空間からなっているようで、闇黒の空間にヒビが入り始め、徐々に空間に光が満ちていく。
『……君が夢から覚めるみたいだ。今回はここまで……かな?久々に……楽しかったよ』
その言葉とともに闇黒は光に包まれた。
◆
「……んっ」
俺はその場で眼を覚ました。
眼の前には見た記憶のない天井があった。
いや、天井ではなく空があった。
――なんだここ?
見たことがあるような気もするが、眼の焦点が合わず、見渡しても分からず視界がふわふわとしている。
何か、忘れてはいけないものを見ていた気がするが、ぼんやりとしていて霧がかかったかのように思い出せない。
「やぁ、起きたかい?」
天から声が降ってくる。
声の主は直ぐに分かった。
「師匠ですか。これはどういう状況ですか?」
「えっと、まずここは、君の創った『虚実空間』だね。そしてあの闘いのあと、倒れた君をここに運んで、君を寝かせていたって感じかな?」
ということは、あの時俺は倒れたということか。
まだ、身体を動かせそうになく、首を動かして、掠れた声で師匠に話しかける。
「……俺は、負けたのですか」
「……ふむ、負けたというのは半分正解で半分不正解だ。実際、あの大会の優勝者は君だ」
その言葉を聞き、声を大きく挙げたくなったが、まだ身体がいうことはを聞かず、先程と同じく掠れた声で、聞き返す。
「……何故です?俺は、負けたはずでは……」
「そうなんだけどね。君は戦闘不能になって倒れたけど、同時に僕は、武器が壊れちゃってたから引き分けかなって思ったんだけど、あの大会に引き分けっていう判定は無いみたいでね。どちらが先に、勝利条件を満たしたかって言うので勝敗を決するみたいなんだ」
師匠は明らかな作り笑いをした。
――分かりやすい嘘を。
言葉の中に明らかな嘘が混ざっている。引き分けがないなんてルールはなかった。
先程の『半分正解、半分不正解』というのも俺を安心させる嘘だな。
実際の勝敗は引き分けか。だが、あんなものは勝ちではない、俺の実力が足りていなかった。
最後、俺の放つことの出来る最大の魔法を放ったが、師匠は気にしている様子はない。
「……君が最後に放った魔法……【真核世滅】だったかな。あの魔法は使うんだったら、どうしようもなくなった時だけにして欲しい。君だって分かっているだろう?」
俺の思考を読んだのか、様子を見て言ったのかは定かではないが、師匠はそんなことを言ってきた。
――師匠の言っていることは最もだ。
【真核世滅】は、言ってしまえば諸刃の剣であり、自身の魔力と世界の維持に使われている力の一部を【真核世滅】を発動させる場所に収束させ、暴発させる魔法であり、自身の身の保証なんてものは出来ないうえ、今の俺の魔力では闘技場での様に倒れてしまう。
何より、世界の維持に使われている力を使うのだ。一部とはいえ、多少は世界に影響が及ぶことになる。
「……えぇ、あの魔法は当分《禁忌の術》としますよ。今の俺では、身の丈に合いませんからね」
「……身の丈に合わないか。うん、ストレートに言ってしまうと、あの技は今の君には流石に荷が重いね」
どストレートに言われてしまった。だが、その通りだ。
この魔法はデメリットが多過ぎる上未完成な部分も多い。
「……まぁ、気にかけることはないよ。それより、僕が気になったのは君の持っていた黒い剣だね」
黒い剣……ヘカトンケイルのことか。なんでだ?特におかしなものでは無かったと思うのだが……。
師匠は、俺の側に置いてあったヘカトンケイルを拾い上げた。
「カイト……これ、どこで手に入れたんだい?」
「……【物質融合】のスキルを使ってヴェルフェンから譲り受けた神器を造り替えたんです」
「へぇ、それは凄いね。まさか、《理外の宝具》を造り出すなんて、思いもしなかったよ」
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