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換金と治療

「買い取り出来ないってどういうことですか!?」


俺としたことが少し声を荒げてしまった。


「す、すまない。続けてくれ」


すぐに冷静に戻る。


「買い取りが出来ないっていうのはお前さんの出した()()()マデルライガーを買い取ることが出来ないというだけで、2匹ほどであれば買い取りことが出来る」


「あ、そうなのか。すまなかった、話しも聞かずに」


「気にしないでいい。で、2匹は買い取りが出来るが、あとの奴らを買い取るにはこのギルドでは予算が足りないんだ。だから後日、市場のオークションに出品して、貴族や解体師とかの奴らにその場で買わせて、その値段の8割をあんたに支払うっていうことを伝えたくて、ここに呼んだ」


「成る程、効率的にも営業的にも適している。良い仕組みですね。では、マデルライガー2匹の代金は今日の支払いは出来ますか?」


「もちろんだ。持ってきてくれ」


レウスが手を挙げると、召使いのような人が大きな布袋を持ってきた。それを机の上に置き、レウスが口を開く。


「金貨300枚だ。確認してくれ」


「金貨300枚!?」


思わず声を上げてしまった。


「すごいですカケルさん!こんな量のお金なんてみたことありません」


当たり前だ、俺だってみたことがない。


「えっと、あの魔物ってこんなに高いのか?」


戦災級といっても軍団の一つ程度だ。この値段は高すぎる。


「どうやら、お前さんは常識を知らんらしいな。戦災級の魔物は軍団一つが動員されるレベルの魔物だ。そのレベルの予算を考えるとこの値段が妥当なんだ」


成る程、この時代の常識を知っておかなければならないな。


「あ!レウスさん。一つ聞いて欲しいことがあるんだが、良いか?」


「なんだ?お前さんの頼みなんざ聞けないかもしれんが言ってみろ」


「この金を半分に分けてくれ」


「何故だ?」


「あの少女に渡すんだよ」


俺は、ネネを指差した。


「ふぇっ?私ですか?」


「あぁ、生活費が無かったんだろう?」


そういうと、ネネは首をブンブンと横に振った。


「こんなにもらえません!私が何かしたわけでもないし」


「俺が、やると言ったんだ。大人しく受け取れ」


「でも‥‥」


「ふむ、じゃあ、一時的に俺が貸したとしよう。いつでも良い。貸した額の半分も有れば俺は十分だ」


まあ、本音をいうとこんな大金は1人で持ちたくないっていうのが、真意なんだが。


「で、では、必ずお返ししますので、お借りします」


半分に分けた袋を持ってネネが言った。


「おう、待ってる」


「あの娘は、お前さんのパーティメンバーかね?」


レウスが聞いてきた。仲間ではあるがパーティメンバーでは、無いんだよな。まぁ、でも今回は良いかもな。


「あぁ、そうだ」


「えっ?」


ネネが声を上げた。


「カ、カイトさん。私がパーティメンバーでも良いんですか?」


「別にダメなんて一言もいってないだろ」


「私なんかで良いんですか?」


この()は、自分を低く見過ぎだな。修行すれば余裕でLv1000はいけると思うのだか。


「じゃあ、カイトさんに付いて行けるように頑張ります」


「期待しているぞ」


 俺は笑い、レウスに口を開いた。


「と、じゃあ、レウスさん俺らはここら辺で失礼します。他のマデルライガーのことについてはまた後日に」

「分かっている。そのときはまた呼ぶから分かるだろう」


その言葉を聞き、部屋を後にした。



「さて、ネネはこれからどうするんだ?」


「あ、私は薬を母に届けに行ってきます。その後看病もしないといけないので、今日はこれで失礼します。ありがとうございました」


ペコッと頭を下げるツインテールの少女。


「ちょっと待って」


俺が引き止めた。


「はい!なんですか?あ、お金のことはさっき言ったとうりに‥‥」


「違う、ネネのお母さんのとこに連れて行って欲しいんだ」


「母の所に?」


ネネがきょとんとした。


「病気にもよるが、俺は大抵の病気や怪我だったら治すことが出来るからな」


「こんなこと言うのはアレかもしれませんがカイトさんでも治せないと思います。母の病気は『精霊循環不全症』という精霊が取り付き、身体のバランスを崩ししまう病気なんです。今の技術では治すことはできません。いくら、カイトさんがすごい方とは言っても流石に‥‥」


「ネネ、俺をナメてるのか?」


少し言葉に力を込めた。


「い、いえ、そんなことは‥‥」


「その程度の病気なら目を瞑ってでも治療出来る。だからお前の母さんのところに連れて行ってくれ」


「本当ですか?」


少し泣きそうになりながらネネが聞いてきた。


「俺が嘘を言ったことがあったか?」


「いえ!信じます。カイトさんは恩人ですので!」


「よし、じゃあ案内してくれるか?」


「はい!」


俺たちはギルドを出て、ネネの家へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜クライフィア家〜


「ただいまー、お母さん」


「お邪魔します」


俺たちの声によって返ってきた声は一つだけだった。


「お帰り、ネネ。あら?そちらはお友達?」


声の持ち主は、ベッドに横たわったネネを母親だった。


「はい、カイト・ルイークと言います。今日はあなた様に会うためここに来ました」


「カイトくんは凄いんだよ!戦災級の魔物を倒せるくらい強いんだよ!それに盗賊に襲われてた私を助けてくれたんだ〜」


「あらあら、それは。ありがとうございます」


身体が動けないので、こちらを向いて首を縦に振った。


「先程言った通り、今日はあなたに会いに来ました。あなたの患っているその病気を治す為に」


俺がいうと、ネネの母親は少し俯きながら話し始めた。


「この病気は治すことは出来ません。症状を抑えることしかできません」


普通はそうなんだ。俺のいた時代ですら、特効薬はなかった。だからこそ()()を作り出した。


「私が創り出した魔法、極癒魔法・五十六位階

絶対癒効果(アーネス)】を使えば治すことが出来ます」


パァァッと魔法を発動して、原因の精霊を消滅させ身体回路の状態を正常に戻した。


「終わりました。何か不調はありますか?」


「!?」


ネネのお母さんは眼を見開いて身体を起こす。


「えっ!?お母さん動けるの!?大丈夫なの?」


ネネが後ろから心配している。


「なんともない。信じられない。この病気を治して下さるとは、なんとお礼をしたら良いか分かりません。本当にありがとうございます」


久しぶり立ったから少しふらつきながらお礼をいってきた。


「カイトくん!さっきの魔法はなに!?」


「あぁ、アレは、全ての病気や怪我を治すことを目的として、創造魔法で作り出した極癒魔法だよ」


「そ‥‥創造‥‥魔法?それって神話の中で使ったと言われているあの魔法!?」


神話?なんのことだ?


「その神話ってなんだ?」


「数千年前に、魔王を打ち倒し神を下したと言われている賢者の神話です。その賢者が使っていたとされている魔法が創造系の魔法です。まさか、本当に使える人がいるなんて思いもしませんでした」


「へぇ〜、そんな凄いやつがいたんだな。会ったら戦ってみたいな」


創造魔法に関しては、存在自体があまり知られていなかったので使用者は極端に少なかった魔法だが、使い勝手は良いのでその使用者の話か?

今度、また聞いてみよう。


「今更かもしれませんが、カイトくんって戦闘狂なの?」


「ん?あぁ、そう呼ばれてたこともあったな。まぁ、戦闘が好きなのは本当だしな」


元の時代では色々な二つ名があった。〈冷酷な神殺し〉とか〈世界を下した戦闘狂〉とか〈神に最も近き怪物〉とかだったか?

まぁ、どれにしろ汚名を被っている様にしか聞こえないがな。


「カイトくん?どうしたの?」


ネネがこちらを覗き込んでいる。


「あ、すまん。考え事をしていた。というかネネいつの間にか俺のこと『くん』と呼んでくれたな」


「あ!ごめんなさい」


ネネがしゅんっとなる。


「いや、咎めているわけではない。むしろ今の呼び方で頼む。俺が偉い訳ではないからな」


そっちの方が親近感が湧くからな。


「じゃあ、カイトくん!お母さんをありがとう!」


ネネに抱きつかれた。彼女の柔らかい部分が俺の体に当たり若干緊張してしまった。


「あらあら、この家の将来は安泰かもね」


後ろでネネのお母さんがクスクス笑っている。

それを聞いたネネが顔を赤くする。


「そ、そんな気は少ししか‥‥ないもん」


だんだん声を小さくするが、気は強いらしい。

ネネ母はまた笑っている。


「じゃあ、お母さん。私はこれからもカイトくんと一緒に旅をするからしばらくの間、別れるからその間元気でね」


母親の腕を握って言うネネ。

ふむ、微笑ましい光景だ。


「カイトさん、今日はこれからどうしますか?」


「う〜ん、今日はもう遅いので、どこかで泊まって行こうかと思っています」


「じゃあ、ここに泊まって行ってよ!」


ネネが白いツインテールを揺らしながら嬉しそうに言ってきた。


「そうですよ。病気の件も娘の件もお礼をしたいので」


ネネ母からも勧めを受けてしまった。特に断る意味もないので、答えはもちろん‥‥


「では、今日はお世話になります」


丁寧にお辞儀をして、お世話になることを決めた。


さて、明日はなにをしようかな?

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