力の証明
遅れましたーーーー!!!!!(´;Д;`)
止まった時の中で、轟音が響き渡る。
「……流石、昔の力とは比べものにならない程に重い一撃だ。しかし……」
バチンッと俺の攻撃は蚊を払うかのように軽く弾かれた。
「剣撃の一撃一撃に大した威力が無いのは何故かな?」
――見抜かれていたか。師匠の使っている剣の効果を確かめるために様子を見ていたが、やり方を変えるか。
ヘカトンケイルが俺の魔力を湯水の如く貪っていく。中々の量だが、この程度で有れば3秒で回復できる。
...師匠は剣を構えたまま微動だにしない。
――強者故の余裕か。だが、油断は出来ないな。
俺は渾身の一撃を大上段から叩きつけた。
ガギィィンと重い金属音が響く。
「おぉ!良い攻撃だ!」
師匠は簡単に受けているが、この攻撃の余波だけで壁の一部にヒビが入り始めている。だが、そんなことはどうでもいい。
師匠の持っている剣に攻撃を与えているが、一向に傷がついていないのだ。
この攻撃で傷が全く付かないというのは考えにくい。となると……。
「…その剣、回復に硬質化の効果ですか。厄介だ……な!」
俺は近距離から極炎魔法の【紅蓮千万華】を放ち、一点放射で剣ごと灰燼に帰すつもりだったが、師匠の剣は溶けることは愚か、傷一つついていなかった。
――ただの回復魔法の付与では【紅蓮千万華】を無力化するのは不可能だ。かと言って、防御魔法を展開した様子も無かった。だとすれば単なる付与ではないか。
「……その剣の仕組みは分からないが、邪魔になることは確定だな。なら――【固型腐蝕溶鏽】!」
剣の刀身を掴み、万物を腐蝕させる呪術魔法【固型腐蝕溶鏽】を発動させ、腐蝕させる。この魔法は強力で、例え形を再生したとしても呪術の効果は残り、再度腐蝕していく。
「――ッ!」
師匠の剣が黒く腐蝕していき、ボロボロに崩れ落ち、刀身が消えてしまう。
師匠にも驚愕の表情が一瞬だが、伺えた。
だが、みるみるうちに刀身は元通りになり始め次の瞬間には刀身は回復していた。【固型腐蝕溶鏽】の効果すらも打ち消して。
「その剣には呪術耐性すら付与してあるのですか?正直、魔法で付与出来る範疇を優に超えていると思うのですが…?」
そう問いかけるが、今の力は見たことがあった。
「勘のいい君なら、もう気付いているんじゃないかい?この剣の能力にさ」
俺は、『ふぅ』と息を零し、剣を振るいながらその問いに答えた。
「……どのような仕組みは分かりませんが、先程の呪術を解除した力はこの次元の神、癒叡神・ナガルノディオスの力ですよね?」
――癒叡神・ナガルノディオス、その名の通り高い知能と治癒効力を持った神の一柱だ。
その治癒能力は凄まじく、傷や病気は勿論だが、呪術や、戦争によって消えた生物の生命すらも瞬間的に蘇生することが可能だ。
俺の極癒魔法でも蘇生は出来るが、大量の魔力を消費するため、一度に大人数を蘇生をすることは難しいが、癒叡神であればそれも容易いことだろう。
「……その剣は『神の権能』を利用したものですか」
「……神の権能か。正確には神の権能もだね。この剣の能力は、神の固有権能に加えて天使や悪魔などの汎用権能を宿した剣なんだ」
「…まさか、概念を利用した剣とは、恐れ入りますよ。だが、そうだと分かったならそれを踏まえた上で闘えばいい――【種族変換】『龍王』」
【種族変換】のスキルを発動させると、身体が龍の鱗に纏われ、爪が強靭なものへと変化し、背からは黒い一対の翼が生えて来た。
この【種族変換】は対戦をしたことがある種族にのみ有効であり、戦ったことのない種族の力を身体に反映することは出来ない。
「【真滅極炎陣】!!」
極炎魔法の強化魔法【真滅極炎陣】の魔法陣を出現させ、魔法陣の中心部にヘカトンケイルを突き刺し、【真滅極炎陣】の力を付与し、威力を増幅させる。
強大な力を持った『龍王』の身体と【真滅極炎陣】の魔力を纏ったヘカトンケイルを師匠の神体目掛けて振るう。
が、その一撃も概念剣によって防がれてしまった。
「ハハッ、《極醒魔法》か。随分と様になっているね」
――《極醒魔法》【極炎魔法】や【極氷魔法】などの属性魔法の範疇を超えた究極の魔法形体の一つだ。《極醒魔法》は威力故に魔力の消費が激しく、俺の魔力を使ったとしても連続して発動することは難しい。
「……面白い、少し本気を出すとしようか【殱滅光淵球】」
師匠の告げた瞬間に巨大な魔法陣が上空に出現し、そこから眩い煇の煌球が顔を覗かせていた。
その場にいるだけで伝わって来る強大過ぎる魔力の量と密度。恐らく、あの球だけで俺の総魔力量を超えていることが分かる。
――さて、どうやってあの球を防ぐか。
防御魔法を展開したところで紙切れ程の効果もないだろう。では、破壊魔法ではどうだろか。否、例え球を破壊出来たところで師匠への追撃をする前に他の魔法やあの 概念剣で斬られるだろう。
ならどうするか?答えは決まっていた。
「……終焉魔法 氷滅・第零位階【終焉氷河槍】」
俺の使用することの出来る最上位魔法である《終焉魔法》で、あの球を消し飛ばすということだ。
《終焉魔法》は並列神界のそれぞれの属性神が行使することが出来る、言ってしまえば最終奥義だ。
――まぁ、最終奥義らしく《極醒魔法》以上に魔力を消費するから師匠にこの魔法を学んだときにも『無駄打ちは決してするな』と釘を刺されたが……。
俺の使った【終焉氷河槍】は城と思える程の氷塊と打ち出す《終焉魔法》だ。
そして師匠の放った【殱滅光淵球】と【終焉氷河槍】がぶつかり合い、とてつもない轟音と共に互いに消滅した。
「……ハ、ハハハハハハ!!」
その瞬間、高らかな笑い声が闘技場に響く。
「……まさか、《極醒魔法》だけでなく《終焉魔法》までも使いこなしているとは、ハハッ、『この領域』にまで来ているなら僕の本気を見せてあげるよ!」
師匠は力余ってか概念剣を握り潰し、粉微塵して上空へと飛翔した。
そして上空に二つの魔法陣を描き、自身の身体に纏った。
「見せてあげるよ。これが僕の本気だ!」
魔法陣を纏った師匠の姿は変わっていき、見たことも無い姿へと変貌していた。
師匠の右半身は闇黒の力を固めた様になり、逆に左半身は神光を放つ姿になっていた。そして、背には16枚の翼を持っている。
――16枚の翼、主に翼を必要とする天使の中でも最も多く翼を有しているのが神の側近である熾天使で、12枚が最大のはずだが、天使の力も使えると言うことか。
「……これが、師匠の本気ですか?」
「ああ、そうだよ。《破壊の半身》と《創造の半身》さ」
正直、力が大き過ぎるのか魔力を感じることが出来ず、放出している魔力だけで押しつぶされたかのような錯覚すら覚える程だ。
「……正直、この手はあまり使いたくなかったんですが仕方ないですね」
手に魔力を込め、スキルを発動させる。
「――【種族変換】『破壊神』」
その言葉と共に破壊神の特徴である黒い天輪が現れ、破壊の魔力を纏った。
「これが俺の本気です。さぁ、第二ラウンドと行きますか」
「この力を見せた者は殆どいないんだ。だけど君は僕を本気にさせてくれた。だからその期待には応えないとね!」
俺たちは更なる力を身につけ、再度ぶつかった。
じ、次回はもう少し早く更新するぞ〜(震え声):(;゛゜'ω゜'):




