少女たちの買い物と別れ
遅れましたー!。゜(゜´Д`゜)゜。
〜ネネside〜
カイトくん達と別れたあと、別れた私とリリカちゃんはというとーー
「ねぇ!ねぇ!この服とかリリカちゃん凄く似合うと思うんだけど!」
「この服ですか?わぁ!フリフリが付いてて可愛いです!ですが、私に似合うでしょうか?こういうお買い物とかってあまりしたことがなかったもので……」
「…絶対似合うと思うんだけどなぁ?よし、試着してみようっか。店員さーん!」
「え?ええ!?ちょ、ネネさん!待って下さーい!」
女の子達の買い物場の定番である、洋服屋に来ていた。
この店は王都の中でも中々に大きい洋服店であり、多くの服を取り扱っている。
私は手に可愛らしい服を持ち店員を探し、リリカちゃんはそれを追いかけている。
「店員さん、この服、この娘に試着させてあげたいんですけど〜」
「分かりました!ではお客様、こちらへ」
「え?えぇ!?そんな、似合いませんよ!?」
ドナドナ言いながらもリリカは女性の店員に試着室に連れられて行った。
困りながらも、少し嬉しそうな表情を浮かべるリリカをネネは優しい笑顔で見送った。
◆
「…き、着替えて来ました。どうでしょうか?」
試着室のカーテンが開くと美麗なドレスに身を包んだリリカちゃんが出てきた。
紅色鉱石の輝きを持っている髪に、黒を軸とした婚礼式のようなのドレス
を着ており、街で見かければ名家の令嬢様かと思うほど美しい雰囲気を漂わせていた。
「すっごい綺麗だよ!お姫様みたいだよ!」
「あ、えっと、あ、ありがとうございます!」
リリカちゃんは、少し顔を赤くしながらお礼を言ってくれた。
「お客様、この服お買い求めになるでしょうか?」
すると、リリカちゃんは良い笑顔を作り、答えた。
「はい!買わせていただきます。いくらほどでしょうか?」
「えっと、それはですねーー少しお高いですが金貨3枚ですね」
金貨3枚というと、Cランク冒険者の月給と同じくらいなので、相当裕福でないと買うことはないがリリカちゃんは迷うことも無く、10枚を店員さんに手渡していた。
「……あ、あの、お客様?3枚ですよ?」
店員さんは首を傾げて、必要ない7枚の金貨をリリカちゃんに渡そうとするが、リリカちゃんは受け取ろうとしない。
「まだ、買い物して行きますから。前払いで金貨10枚です。もし、買った物の金額が金貨10枚を超えてしまったら追加でお支払い致しますのでご安心下さい♪あと、金額が超えていなくてもお釣りは差し上げますのでそのままお受け取り下さいね?」
「は、はぁ…」
なんか、見ていて思ってしまったことが1つあった。
私は気になってリリカちゃんに聞いて見ることにした。
「…あの、リリカちゃん?リリカちゃんのお家って、もしかしてお金持ちだったりするの?」
「え?あ、お金持ちって程のものなんでしょうか?分からないですが、召使いさんが200人程雇ってたり、部屋もいっぱいありますよ?」
ーーあ、これ、典型的なお嬢様だ。
と、内心思ってしまった。召使いさんを200人も雇えるなんて確実にお金持ちなんだと容易く想像出来た。
「あの、リリカちゃん。そうやって金貨とかをポンポン出しちゃうと変な人たちとかに襲われたりしちゃうこともあるから、なるべく気をつけた方がいいかなぁって思うんだけど……」
「変な人というと野盗などですか?でしたら、消し炭に出来ますので!」
良い笑顔でそう言われてしまった。
そういえばリリカちゃんってファルヴィス様の娘さんだったんだっけ。破壊神様の力があるんだったら野盗を倒すなんて造作もないことだもんね。
「そ、そうだよね!リリカちゃんは強いもんね!」
「……強いですか。私としてはまだまだ未熟です。マスターにも何度か手合わせをした貰ったことがあったのですが、まるで歯が立たなかったんです」
「えっと、確かカイトくんが今、Lv9057だっけ?リリカちゃんはいくつなの?」
「私のLvは2670です。修行しているのにマスターには遠く及びません」
私からすると十二分に強いと思うんだけど、何か強くなりたい理由とかがあるのかな?
「ねぇ、リリカちゃん。変なことを聞くようで悪いんだけど、リリカちゃんはどうして強くなりたいの」
すると、刹那程の時間だったが、ほんの一瞬だけリリカちゃんが眼を丸くしたことが見えた。
そして、リリカちゃんはポツポツと喋り出した。
「……強くなりたい理由ですか。少し昔話になりますが良いですか?」
そして、服を選びながら彼女は自身の過去を語り始めた。
◆
〜カイトside〜
夕刻の時刻となり、俺たちはファルヴィスたちとの約束だった石像の前に来ていた。
「まぁ、時間どうりに皆揃ったようじゃな」
ファルヴィスの言葉通りにこの場にはリリカを含めたファルヴィスの家族全員とネネと俺が揃っていた。
「当たり前だ。ところで、ファルヴィスたちはこれからどうするんだ?師匠も帰ると言っていたし、ここに留まる必要は無いと思うが…」
「そうじゃなぁ、一度神界の方へ帰って他の破壊神や創造神の奴らに報告をしないとならんからな。このまま、帰ろうと思っておる」
まぁ、そうだよな。他次元の奴らも最高神がいなくなったとなれば、血眼になって探していただろうからな。
「そうか。それじゃあ、ここでお別れか?」
「そうじゃな。じゃが、その前に……」
ファルヴィスは指を指し、眼を細めた。
「リリカ。お主はどうするのじゃ?妾はお主を見つけることも視野に入れて、エルメス様の捜索をしていたんじゃ。だからこのまま、一緒に神界に帰っても良いと思っておる。さて、お主はどうしたいのじゃ?」
その言葉によって、緊張感がこの空間の空気を重くした。
要するに、帰ってくるか、この世界に留まるかを決めろと言われているのだ。
俺には口出し出来ないが、リリカと離れるとなると少し寂しいな。
3000年ほどの間、従者と主人という関係で仲間をやってきたわけだからな。
――まぁ、いきなり、転生した俺も悪いとは思ったが。
兎も角、これは彼女の決めることだ。
すると、リリカは少し口籠もっているが、やがて意を決したように言葉を発した。
「…悪いですが、私はこの世界に残ろうと思っています。これは、今決めたことではなく前々から思っていたことです!」
ほぅ。リリカは元々、他者との接触の際に自身の意見をはっきりと伝えることを難としていたが、今の言葉には決意と強い遺志を感じる。
俺がいなくなった後にも成長を続けていたのか。なんとも感慨深いものだ。
リリカの言葉を聞き、問いを持ちかけた張本人は高らかに笑った。
「カカカ!そうかそうか。お主はここに留まるのか。ならば良い!それはお主の決めたことじゃ。妾が言うものではあるまい」
「お母様……ありがとうございます!」
リリカは満面の笑みを浮かべてファルヴィスに抱きついていた。
「リリカ姉さんの意見でしたら私も反対はしませんわ。姉さんは少し自由なくらいが丁度良いですからね。カイト様、どうぞリリカ姉さんを宜しくお願いします」
近くにいたメリッサがこちらに来て、そんなことを言われてしまった。
姉と仲良くして欲しいという意味だろうか?勿論、仲良くするつもりなので俺は快く頷いた。
「ああ、任せてくれ」
俺が言うとメリッサは微笑み、リリカの元へと向かっていき、何かを話している。
リリカは何やら、驚いていたが遠くだったので聞こえなかった。
まぁ、姉妹で話したいことでもあったのだろう。触れて置かないでおくか。
「まぁ、リリカの意見は分かったのじゃ。それじゃあ、これでお別れじゃ。お前たち、こっちに来るんじゃ」
それから、ファルヴィスは転移魔法を展開させ、リリカを除く兄妹を全員を魔法陣の上に乗せた。
「それじゃ、またの!」
ファルヴィスが転移魔法を発動させ、一瞬にして姿が消えた。
幸い、周りに人がいなかったことで転移魔法が使われたことに気づかれてはいないようだ。
「……行ったか。賑やかだったな」
「うん!すっごい楽しかったね!」
横で、ネネがぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「マスター、虚実空間でアーロン兄さんや弟たちがご迷惑をかけていなかったでしょうか?無いと思いますが、一応心配で……」
「別に迷惑なんて思っていない。逆に賑やかで楽しかったぞ?」
その言葉を聞いたリリカは、ホっと息を吐き爽やかな笑顔を見せた。
「マスターに喜んでもらえたようで、私も嬉しいです」
その笑顔は夕日に当たり、幻想的に輝いていた。
ふむ、いつ渡すか悩んでいたが、今なら良さそうだな。
「2人とも、こっちに来てくれないか?」
2人はいきなり呼ばれたことで疑問に思ったようだが、呼ばれた通りにこちらに近づいて来た。
「実は、さっきルートと雑貨屋で見つけたもので、綺麗だったから購入した物があったんだ。……っと、これだ」
俺は、懐から2つのペンダントと取り出し、それぞれを2人に手渡した。
「…これって、ペンダントでしょうか?可愛いです〜!」
「わぁ!花型のペンダントだ!くれるの?カイトくん!」
「ああ、気に入ってくれたか?」
『はい!』
2人とも良い笑顔で返事をしてくれた。装飾品に関しては全くの無知だったが、喜んでくれたようで何よりだ。
「マスター、付けてみても宜しいでしょうか?」
「あ、私も付けてみていい?」
2人とも随分とグイグイ来るな。余程、嬉しかったのだろうか?
「勿論だ。付けてみてくれ」
2人は首にペンダントを付け、俺に見せてくる。
ふむ、装飾品という物にはあまり関心がなかったが、2人ともより可愛らしくなり少し大人びた感じになったと思う。
「うん!2人とも似合っているぞ」
「マスターが選んでくれた物ですので、きっと私たちの雰囲気に合わせて選んでくれたのですよね?」
……うっ、確かに雰囲気に合わせて選んではいるが俺の主観から観ての雰囲気で選んだだけだ。
ペンダントの良さをより引き立てているのは、彼女たちが可憐だと言うことが大きいだろう。
だが生憎、俺は女子を褒めるということをあまりしたことがない。
……どう声をかけるべきか……。
「まぁ、2人に喜んで貰えるようにペンダントは選んだんだ。気に入ってもらえて俺も嬉しい」
「えへへ、ありがと!カイトくん!これ、宝物にするね!」
ネネは俺の手を取り、笑顔でそう言って来た。
「あー!ネネさん!マスターの手を握るなんてズルいです!私も握ったことないのに!」
「え〜?はやい者勝ちだよ〜?」
「私の方がマスターと長い期間一緒にいたのに手を握ってもらったこともないんですよ!?」
何やら、ネネの行動により喧嘩になってしまったようだ。仕方ない。
「リリカも握ればいいだろう?」
ネネの手を握っている手とは逆の手でリリカの手を握る。
「これで、文句は無いだろう?」
「……あ……マスター…その…」
何やら、リリカは顔を赤らめているが恥ずかしかったのだろうか?
まぁ、先程は握ってほしいと言っていたし、いいのか?
「取り敢えず、2人とも今日はもう遅くなりそうだ。もう宿に戻るとしよう」
「そうですね」
「うん!私も疲れちゃった〜」
そして、俺たちは手を繋いでいたからか、いつもより少し近い距離で宿へと足を運んで行った。




