お買い物
遅れましたーー!!定期テストのせいで投稿が遅れましたーー!
俺たちはギルドを後にし、街を歩いていた。
「まさか、最高神様が大勢いるとは思いませんでした」
ルートが驚愕の言葉を口にしているが、あの人の出鱈目はあの程度ではない。修行のときにたっぷりとその実感をしたが、数え始めるとキリがないので辞めにした。
「それより、これから何しましょうか?」
リリカが質問してくる。夕刻までまだ時間が少しある。
「ここからは、俺たちも別れて自由行動をしよう。何やかんやあって、まともに街を周れていなかったしな」
「あの、カイトさん。僕も一緒に周ってはいけませんか?」
ルートがこちらに振り向き、真剣な顔つきで聞いて来た。
「もちろんいいぞ。最初に約束してたからな。『一緒に行く』ってな」
そういうと、ルートの表情がとても明るくなり、俺の腕にしがみ付いて来た。
少しむず痒い思いだが、悪い気は全くなく、何とも複雑な感覚だ。
「えっと、マスター。マスターがルートと一緒に行くのでしたら、私はネネさんと一緒に周って行ってもいいでしょうか?」
リリカが質問してきた。まぁ、女の子同士の方が話していて楽しいだろうからな。
「全然いいぞ。ただし、ファルヴィスが言っていた時間には間に合うようにな」
「もちろんです!」
そう言い残し、俺たちは一旦別れることにした。
◆
「さてと、ルート、お前は何処に行きたいんだ?」
「い、いえ、カイトさんの行きたいところに僕は付いて行きます!」
ルートは首を振り、こちらに視線を向けている。
自分も行きたい場所があるだろうに気を使ってくれているのだろうか?
俺は、【思考受信】を使いルートの思念を読み取った。
「……なるほど、雑貨屋か。家族のお土産を買いたいんだな。よし、雑貨屋に行くぞ!」
「え?えぇ!?え、いや、僕、口に出してました!?」
考えていたことを当てられ、ルートは焦った声を出す。
「フフッ、お前の思念を読み取ったんだ。行きたい場所があるならそう言えばいい。大人はよっぽどの奴じゃなかったら、年下の意見を尊重してくれるんだ。覚えておくんだな」
俺は、ポンっとルートの頭に手を乗せ、優しく撫でた。
「むぅ、僕は4842歳です!子供じゃありません!」
「ハハハッ、俺は8250歳だ。子供だと言われることを嫌うのは子供の特徴だと何処かで聞いたことがあるが…ククッ」
ルートが、ぷぅと頬を膨らませ、主張するが、俺はカラカラと笑いながらルートと一緒に歩き始めた。
俺たちは長い年数を過ごしている話していたが、周りから見れば10歳と15歳程の兄弟が言い合いをしているようにしか見えなかった。
◆
〜雑貨屋・オーリシア〜
「ここが雑貨屋らしいな」
店内に入ると、雑貨屋というだけはあり、様々なものが置かれている。
アクセサリーや装飾品から、薪割り用の斧なども置かれており、日用品に関してはこの店だけで一通り揃いそうだ。
「ルート、ここで欲しい物は揃いそうか?」
「はい!お母様やお兄さんたちの好きそうなものもありますし……あ!これなんかセレス姉さんが好きそうだなぁ」
そう言いながら、色々な物を見回り始めた。
ーーさて、俺も見て周るか。
探しにきていたのは、ヘカトンケイルの鞘になる物だ。
ヘカトンケイル程の剣となると、鞘自体を見つけるのには時間がかかるのでその素材になるものを探していた。
店内を適当に彷徨き、武器系統の置かれている棚の前に来ていた。
「……あまり、良いものがないな」
一眼見て思ったことがそれだった。
鞘とはいえ、神器を収める物はそれ相応の物でないと直ぐに壊れてしまいかねない。
「……やはり、自分で作った方がいいか」
手に持っていた鞘に素体として使おうとしていたものを棚に戻す。
ーー分かっていたが、市街に置いてあるものは1番良い物で魔銀が限界か。
前世で俺が採掘していたものは神鉱石などの別次元世界でしか採掘出来ないものを除けば、魔鉄鋼や狂熱鉱石、神鉄鉱石などの硬度が高く、耐久性に長けたものを中心に採掘していた。
魔銀は洞窟の奥地や、ダンジョンの比較的、低い階層にて採掘出来る鉱石だが魔力伝導率が高く、耐久性に優れているため、市場などにたまに出ていることがあった。
だが、実際のところはミスリルは長くは持たないという欠点があった。魔力伝導率が良いせいか、本気の闘いを10回ほどしたら直ぐに壊れてしまっていた。
前世は、種族間での争いが絶えずに続いていて、人間は魔族やエルフ、ドワーフ、リザードマンなどの種族と闘っていたので長期戦には向かない魔銀を使用していたことはあまりなかった。
しかし、争いの無くなったこの時代では手に入り易い、魔銀などを使っているということか。
と、そんなことを考えながら店の中を歩いていると、1冊の本が眼に入った。
本は分厚く、背表紙には『歴史書』と書かれていた。
ーーこの2000年間のことが書いてあるのか?
そう思い、本を手に取り、ペラペラと中に書かれている内容を少し確認した。
「…大魔導師リオンによる魔法術式の提唱か」
大魔導師リオンという名は聞いたことがない。
2000年の間に有名になった魔導師のことか?
どのような魔法を説明しているのか眼を通してみるが……
「なんだ、ただの【方位爆炎刃】と【氷結地獄】の魔法術式じゃないか」
前者の火炎魔法・四十五位階【方位爆炎刃】は、業炎で作り出した燃え盛る刃を多方位に放出する初歩的な魔法だ。
そして後者の氷結魔法・四十六位階【氷結地獄】は広範囲に巨大な氷塊を出現させ、対象を氷付けにするという、典型的な魔法だ。
この程度の魔法であれば、とっくにマスターしている。
「まぁ、歴史を知ることが出来るなら良いか」
歴史書を買うものの一つに決め、持ちながら店内を見回る。
ルートは、まだ買うものに迷っているようで色んな物を腕に抱えていた。
「ルート、大変そうだな。いくつか持つぞ?」
俺はルートに近づいてそう声をかけた。
「あ、いえ、このくらいでしたら……あ!」
言って早々、腕に抱えていた商品の一つを落としてしまっていた。
……全く。と内心苦笑しながら、地面に落ちる前に拾い上げ、手の中に商品を収める。
「……っと、ほら」
「あ、ありがとうございます!」
「いや、いいぞ。まぁ、今みたいに抱えきれなくなると不便だ。いくつか持つぞ?」
「え、えっと、それじゃあ、このくらい持ってくれますか?」
ルートは、持っている商品に対しては少ない量の商品を渡してくる。
「……?もう少し持てるが、いいのか?」
「はい!僕だっていつだって手伝って貰うような子供じゃないんです!」
ルートの浮かべた微笑を見ていると俺も自然と笑みが溢れた。
ふむ、あまりこのような感情を抱いたことはなかったが存外、悪いものではないな。
「そうか。それじゃ、その荷物は自分で持つんだな?」
「はい!」
ルートの荷物と歴史書を持ち、会計の場に行こうとしたが、ふと会計場の横にあるものが眼に入った。
よく見てみると、それは綺麗な花型と雫型のアクセサリーだった。
花型と雫型、どちらも石を削って作られているようで、キラキラと光が反射し輝いていた。
色も多様で、紅や蒼、翠や紫など綺麗な色が揃っている。
「なぁ、ルート?少しこのアクセサリーを見てもいいか?」
「あ、はい!……アクセサリーですか?カイトさんはこのような物に興味があるんですか?」
「……あー、いや、まぁそんなところだ」
ルートにそう質問され、返答に困ってしまう。
事実、この様な装飾品に関しての知識は皆無に等しいのだが、ネネやリリカにあげたら喜ばれるかと思い、見ようとしたがどれが、良いのかがさっぱり分からない。
2人のイメージカラーで選んでみるか。もし嫌と言っても他の物を作ることは容易いからな。
ということで、ネネには花型の白い物を、リリカには雫型の蒼いアクセサリーを選び、会計場に向かった。
その後、ルートが白金貨を出したことにより店が騒然とし、少し足止めを食ったが目的のものは買えたので、俺たちは荷物を持ち、雑貨屋を後にした。




