ギルドにて
〜ギルド〜
「さて、戻ってきた訳だが……」
俺たちが、ギルドに到着すると異様な光景を目の当たりにした。
多くの冒険者たちが、クエストボードに群がっている。
何かあったのだろうか? まぁ、リーンさんに聞けばいいことか。それよりも今はルートの冒険者登録が最優先だ。
俺はルートをカウンターに連れて行き、俺が登録したときと同じように魔力を使い、特に変わったこともなくルートの冒険者登録は終わった。
ルートは、鉄色のギルドカードを手に取り、喜んでいた。
「わぁ〜、これが冒険者の印ですか〜」
「身分証明書の代わりにもなるから無くさないようにね?再発行には銀貨が必要だから気をつけてね?」
第一目標は完了した。そろそろ、あの人だかりについて教えてもらおうかな?
「あの、入ってきたときに気になったんだが、あの人集りは何なんだ?」
「ああ、どうやら、《メルゾート魔剣学園》の教師を募集してるらしいわよ」
メルゾート魔剣学園……学園ということは魔法など教育機関か?
転生前の世界にはそのような施設がなかったからな。響きが新鮮だ。
「どのような施設何ですか?」
「お!興味ありそうだねぇ。でもカイトさんは教師というより生徒の方かな?」
「ん?生徒……?」
「あ、カイトくん、そう言えば言ってなかったね。この国……王都・メルゾートは、15歳になったら学園に入ることの出来る権利が与えられるんだ〜」
後ろで、待機していたネネが説明してくれた。
「ネネは入らないのか?」
「えっと、本当は入りたいんだけどカイトくんたちと一緒に冒険者をやってもいいかな?って考えてるから、どうしようかなって……」
ふむ、学園を取るか冒険者を取るかということか…。
それは、俺の言うことではないな。
それより、今はここに来たもう一つの要件だ。
俺はリーンさんに要件を一言伝えた。
「リーンさん。レウスさんに会うことは出来ますか?」
「「「??」」」
後ろにいる3人は、よく分からないといった様子で首を傾げていた。
まぁ、説明もしていなかったからな。それに要件と言ってもただの確認だ。
「えっと、少し確認してきます」
そう告げ、リーンさんは奥に消えていった。
待っていると後ろからリリカが疑問を投げかけてきた。
「マスター、レウスさんに何の用があるのですか?」
「何、ただの確認だ。本当にそれ以上でも以下でもない」
そう言って、戻って来たリーンさんに連れられ応接間に案内された。
〜応接間前〜
「ギルドマスターには、『カイトさんがギルドマスターに用がある』と伝えたので私は職務に戻らせて頂きますね?」
そう言って、その場からリーンさんはカウンターへと戻って行った。
さて、要件を済ますとするか。
俺たちは応接間に入ると、筋肉質の中年男性がソファに座っていた。
ギルドマスター、レウスである。レウスは俺たちの姿を見るとすぐに口を開いた。
「さて、俺に要件ってのは何だ?出鱈目には慣れたからな。魔物だったらそこに出すんだ」
レウスは補強されているのか、一部的に床の色が違う場所を指さしたが、俺は首を振り淡々と告げた。
「いや、今回は魔物じゃない、ただの確認だ」
「確認だと?何のだ?」
「あくまで、シラを切るつもりですか。レウスさん…いや、師匠?」
その言葉にピクッと僅かに反応したことを俺は見逃さなかった。
「やはりその反応、明らかに動揺しているな。どうしてこんなことをしたんだ?師匠?」
すると、レウスはフッと笑い変装を解き、本当の姿…最高神の姿が現れた。
「変な行動をした記憶はないんだがね。どうして分かったんだい?」
後ろで驚いている3人を他所に俺はその問いに回答えた。
「最初に違和感を持ったのは、一番最初、この場で会った時だ。俺のステータスを見て驚いていたが、それはあくまで表面上での話であり、心の中では全くそんな感情を抱いていなかったことが気になっていた」
ネネのステータスをみて、この世界ではLv1000以上の存在が少ないことが分かっていたが、俺の今のステータスはLv9000を超えている。
前世の世界でもLv3000を超えた者は一握りしかいなかったし、Lv5000といえば常軌を逸した存在であり、Lv7000を超えた者は邪神などの神々でしか観たことがなかった。
それなのに、いきなりLv9000のステータスを持った者が現れて、驚かないという方がおかしいというものだ。
「魔物の処理に時間がかかるなど、前に言っていたが神の権能を使えば、瞬時に素材に変えることも簡単だろうな」
「ふむ、その考察は半分正解だが、半分不正解だ」
……半分正解、半分不正解か。
「最初に会っていたのは、この僕だが、その素材のときにいたのはカイト、君が師匠と呼んでいたやつだよ」
「ふむ、まるで今目の前にいる『あんた』は師匠じゃない様に聞こえるが……?」
すると、師匠の姿をした何かはククッと笑い俺の問いに答えを返してきた。
「ああ、その通りだ。僕は最高神であるが、そうじゃない。正確に言うのならば、最高神に創られた複製体だ」
複製体……か。その言葉に嘘は感じられない。それが事実なんだろう。
「それじゃあ、なんで師匠の複製体がこんなところでギルドマスターなんかをやっているんだ?」
そう問うと目を丸くして、複製体は笑った。まるで、本物の師匠のように。
「アハハ!何だ、アイツから聞いてないのか。そうだな、これも変装を見破ることが出来た褒美だ。特別に教えてあげる」
そう、複製体は言うと、急に目を細めて淡々と言葉を発して行く。
「まず、君の師匠、エルメスについて君はどれほどの知っているんだい?」
「どれほどと言われても、師匠は私情を頑なに話そうとしませんでしたし、最高神がどのようなものか知っているのは全創造神と全破壊神を生み出した万物の始祖であり、現在存在している次元の創造主ということくらいしか知らないな」
そこまで言うと、複製体は『ほぅ…』と声を洩らした。
「最高神に関しての基礎知識は知っているのか」
「これを教えたのも、師匠ですよ」
「なるほど、じゃあ最高神がどのように存在しているのかは知らないのか」
「少なくとも、聞いた覚えはないな」
「じゃあ、君は今現在、一体幾つの世界が存在しているか分かるかい?」
「確か、1005万1860じゃなったか?」
「その通りだ。まぁ、何が言いたいかと言うと、その世界全てに僕のような最高神の複製体が存在している。そして、その全ての個体と記憶や感情を同期したり、意思疎通が可能だ」
何なんだ、その馬鹿げた能力は……。
「世界の状態をいち早く知るために取ったアイツの行動だからな。そしてこの世界の状況を知るために創られたのが『レウス』という存在だ。だが、弟子の君に会いたいという理由でこの前この世界にアイツがやってきて僕という複製体を取り込み、君にバレないように近づいていたんだろう」
なるほど、最初に会っていたのはこの複製体で黒淵竜のときに会っていたのは本当の師匠だったということか。
「そして、ここからがどうやってアイツが存在しているのかという話になるんだが……どうやら戻って来たようだな」
『当たり前だ。勝手に僕の弟子に個人情報を暴露してる複製体を放って置くとでも?』
天から聞き覚えのある声が響き、複製体以外の全員が天井を見上げた。
そこには、今さっきまで話の話題になっていた最高神が姿を現していた。




