蘇生魔法
遅くなりましたー!(´;ω;`)スイマセン
俺たちは師匠に連れられ、【喫茶リィーシェン】という場所に来ていた。
店の中は、綺麗な壁紙に洋風の絵が飾られていて、転生前にはあまり見かけることのなかった食器や椅子、テーブルなんかが置かれていた。
「ふむ、初めてきたが、雰囲気の良い場所だな」
俺が、ぽそりと呟くと、師匠が反応して、口を開いた。
「そうでしょ?ここは下界に降りて来てから行き付けの店なんだ」
「仕事の方にも来て欲しいのじゃが‥…」
ファルヴィスが、頭を抱えて、溜息をついていた。
「ごめん、ごめん。こっちでの用事を済ませたら、すぐに戻るから安心してよ」
「それなら良いのじゃが……」
ファルヴィスは『はぁ〜』と二度目の溜息をつきながら、空いている席に座っていた。
そして、6人席を2つ使い、1つ目の席には俺、ネネ、リリカ、ファルヴィス、師匠、シャロンが座り、2つ目の席にはレスト、メリッサ、アーロン、セレス、ルートが座っている。
席の距離は近く、話をするくらいならば、席を立たずとも、いい程だ。
「さて、さっきの続きを話そうかといいたいけど、その前に注文しょうか」
師匠は、席にあったメニューを人数分創り、それぞれをみんなに配った。
各々、メニューを見ているが、シャロンはファルヴィスと一緒に見ている。
皆が注文を終えてから師匠が口を開いた。
「それじゃ、さっきの話の続きなんだけど、何故、蘇生魔法教えるのに苦労した、だったけ?」
「そうじゃな。蘇生魔法の基本術式は魔法位階であれば80位階程度だと思ったからの」
師匠は、それを聞き、クツクツと笑う。
「そうだね。その通りだ。じゃあ、ファルヴィスちゃん、蘇生魔法の基本原理は、分かるかい?」
すると、後ろの席でセレスやアーロン達がクスクスと笑っていた。
ファルヴィスは神界の中でも、最高神である師匠を除いたら、ほぼ最高の位に位置していることから、下位神から『様』や『さん』で呼ばれており、同位の他の破壊神やヴェルフェンなどの創造神からも基本呼び捨てか、『さん』付けで呼ばれているので、『ちゃん』と呼ばれることなんてなかったのだろう。
『ちゃん』と呼ばれてファルヴィスは顔を赤くしていた。
「…ちゃ、ちゃんは辞めて欲しいのじゃが」
「アハハ、恥ずかしいかな?ごめんごめん。じゃあ、第487次元原初主神長・破壊神ファルヴィスと呼んだ方がいいかい?」
「し、仕事での名前を出さなくてもよいじゃろう……。はぁ〜、もう『ちゃん』でよいのじゃ……」
「うん!じゃあ、良いね?それじゃ、改めて蘇生魔法の基本原理を聞こうか?」
すると、ファルヴィスは顎に手を当て、話し始める。
「蘇生魔法は、身体が失われるか、絶命した場合に身体を蘇らせ、生き返らせる魔法じゃろう?」
一息でファルヴィスは蘇生魔法の説明を終える。だが、それはあくまで、蘇生魔法の説明を言っただけに過ぎない。
師匠が言っているのは、蘇生魔法の根底原理のことだろう。
「そうだけど、まだ薄いかな?それじゃあ、今度はカイトに質問をしよう。《死》という概念がどういうものか、説明出来るかい?」
……それならと続けて、問いに答えを返す。
「《死》というものは、身体の生命活動の停止を意味するのではなく、自身を構成する概念の消失だ。つまり、肉体が亡くなっても、『構成概念』が消失していなければ、蘇生が出来るという原理を元に創られた魔法が蘇生魔法だな」
蘇生魔法は、構成概念に干渉することが難しい為、基本術式は簡単でも発動することは容易では無い。
そして、俺は話を続ける。
「加えて、蘇生魔法は対象者を蘇生出来るという効果があるが、時間経過で蘇生した対象者に何らかの障害が起きる。理由は、時間経過による構成概念の一部が消失することにあり、構成概念の全てが完全に消失した場合、蘇生は不可能となる」
それから、さらに話を続ける。
「因みに、構成概念が完全に消失する期間は絶命してから約1年だと言われていて、構成概念を失われる前に蘇生したいのならば絶命して3時間以内に蘇生することが条件となる。と師匠に教わったな」
俺が説明を終えると、リリカの兄弟達から『おおぉ〜』という声が上がった。
「蘇生魔法の基礎は、お母様から教えられていましたが、根底原理に関しては知りませんでした。流石、カイトさんです!」
ルートが称賛してくれた。少し、気恥ずかしい気もしたが、まぁ良いだろう。
「あ、あの!」
いきなりネネが手を上げ、師匠に問いかけた。
「あの、お師匠様、あ、いえ最高神様?ええっと……」
「エルメスでいいよ。僕だって最高神なんて呼ばれるの、あんまり好きじゃないからね」
「えっと、じゃあ、エルメス様、蘇生魔法ってこの前にカイトくんが使ってたんですけど、種類ってどんなのがあるんですか?」
「そうだねぇ。まずカイトに最初教えた、完全に身体を蘇生する【完全蘇生】、そしてそれの簡易魔法の【蘇生】、亜人族の蘇生を目的とした【亜人蘇生】、魔族の蘇生に使われる【魔族蘇生】、神々の神体を蘇生する【神霊蘇生】、この5つをカイトに教えたんだ」
【神体蘇生】は蘇生魔法の中でも特に難しく、魔力の消費も激しい。
今の魔力ならば行使することは出来るだろうが、教えられたときは使うことが、出来なかったな。
その上、【神体蘇生】は上位神にのみ有効であり、下位神や亜神には効果を示さない為、前の力試しでは【完全蘇生】を使用した。
蘇生系統の魔法は一貫して、構成概念の再生を基礎としているので、術式ごとの差異はあまり無いが、蘇生対象と消費魔力は違うのでそこが原因で、使用難易度が変わってくる。
と話していると…
「お待たせ致しました。ご注文の品です」
女性の店員さんが皆が注文したものを持って来てくれた。
注文したものを受け取り、店員さんが席から離れようとした時、師匠が店員さんに声をかけた。
「これ、代金です」
師匠はピンッと指で硬貨を弾き、店員さんに代金を渡したが、それを見た店員さんは目を丸くしていた。
「お、お客様、こ、これって…白金貨ですか?」
「ん?そうだけど、使えなかったかい?」
師匠は、見た目通りの子供のようにコテンッと首を傾げ、店員さんの持っている白金貨を見ていた。
「い、いえ、使えないことはないのですが…白金貨ですよ?金額が多すぎるというか…」
「あ、よかった。それで足りてたのか。じゃあ、お釣りは要らないから、そのまま受け取ってくれるかい?」
「そ、そのままって…ええ!?」
だいぶ、困惑しているな。まぁ、俺も最初に聞いたときには困惑したからな。その気持ちはよく分かる。
その後、店員さんが代金について師匠に話ていたが結局諦めた様子で店の奥に戻って行った。
「師匠、よかったのか?俺たちの分もはいってるぞ、あれ」
「ああ、良いんだよ。たまには年上に甘えたってバチは当たらないでしょ?」
年上と言っても、俺も中々な年だが師匠には敵わないもんな。
その後は、色々と魔法のことを話したり、師匠が俺に稽古をつけてくれていた頃の話などをして盛り上がっていた。
◆
「さて、皆も食べ終わったみたいだし、そろそろ戻ろうかな?」
そう言って席を立とうとした師匠に俺は問いかけた。
「ずっと聞きたかったんだが、この世界に来た本当の理由ってなんなんですか?」
「そんな真剣な顔をして、何って、ここに来る前に言った通り休憩に来たんだ。まぁ、たまたまカイトたちに会ったっていうのはあるけどね」
師匠の言葉に嘘は感じられない。となると、本当に休憩をしに来ただけなのか。
神界の方で何かあったのではないかと気にして言ってみたものの、杞憂だったようだ。
「あ、あと最後に言っておくよ」
師匠はこちらを振り向き、ただ一言だけ告げた。
「君の強さに僕は期待してるよ?」
その瞬間、転移魔法で転移したのか師匠の身体は光に包まれ、消えていた。
最後の言葉‥‥‥『強さ』って一体何のことだ?
と、考えているとルートがクイクイと俺の服の裾を引っ張って来た。
「あの、カイトさん。ギルドに行きたいのですがいいでしょうか?」
ああ、そういえば王宮のことがあってしっかりと行けていなかったな。
連れて行くと約束したんだ。連れて行ってやらねば、可哀想だろう。
「そうだな。なんやかんやあったが、結局冒険者登録も出来ていなかったからな。ファルヴィス、夕刻までまだ時間もある、行って来てもいいか?」
「少し前にも言ったが、それまでは自由時間じゃ。妾も、もう少し街を見て周ろうと考えておる。お主らが行きたい所があるならば好きにして良いのじゃ」
ファルヴィスにも了承が取れたので、ネネとリリカも呼び、一緒に行くことにした。
「それじゃあ、行ってくる。ファルヴィスたちも問題行動を起こして目立つことは極力避けてくれよ?」
「分かっておるわ」
ファルヴィスが頷いたことを確認し、俺たちは喫茶店を後にした。
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