魔法使い、冒険者になる
〜王都・ルマイド〜
「カイトさん着きました〜。ルマイドの街です」
俺は、ネネに連れられて街に来ていた。
「ありがとう、ネネ」
「いえ、お礼ですので」
やはり、この街は綺麗な街だ。一目見て清潔感が感じられた。
「ネネ、この街にはギルドはあるのか?」
先程倒した魔物の換金をしたい。
「ギルドというと、冒険者ギルドですか?」
「あぁ、魔物の換金もしたいし、ついでに登録もしていこうかと思っている」
アイテムボックスに魔物を入れておくと魔力を多少なり吸われるから出来るだけ速く換金しておきたい。
「魔物を倒してたんですか。ではギルドはこっちですのでついてきて下さいね」
ネネの指差した方向へ歩いていく。
10分ほどでギルドには着いた。前世のギルドと然程変わらない見た目だったので、すぐに分かった。
「ここがギルドです。早速入りましょう!」
俺は、ネネと一緒にギルドに入った。
中は、多くの人で賑わっていた。
やっぱりギルドはどの時代でも変わらないな。
「こんにちは、ネネさん。今日はどんな御用ですか?」
受付嬢の人が声をかけてくる。
「今日は、この人を案内しているんです」
ネネがこちらを見てくる。
「カイト・ルイークです。冒険者登録と魔物の換金をしたいのですが、良いですか?」
「はい!では、まずは冒険者登録ですね。この台に手を置いて下さい」
受付嬢が何やら台を取り出してた。
なんだこれは?
見たことがない。
「すいませんが、これは何ですか?」
「これは、手を置いた者から少量の魔力を吸い取って冒険者登録をする装置ですね」
そんな便利なものが出来ていたのか。
「すごいですね。魔力を使って冒険者登録をするんですか」
「ふふっ。この街は最新の技術を使っているものもあるので、色々見ていって下さいね」
受付嬢が笑顔で説明していた。
「あの、すいませんがお名前を聞いても?」
名前を聞いていなかったので、少し困った。
「あ!すいません。私は、リーンと言います」
なるほど、リーンさんと言うのか。
「では、改めて手を置いて下さいね」
俺は、台の上に手を置き、少し待った。
冒険者登録は、30秒ほどで終わった。
「では、カイトさんのランクカードはこれです」
渡されたのは、鉄色の厚みのあるカードを渡された。カードには、『G』の文字が書かれていた。
「最初は、Gランクからスタートです。功績によって速くランクアップすることもできるので頑張って下さい」
リーンさんが丁寧に説明してくれた。
「あの〜、モンスターの換金ってどこで出来ますか?」
さっさと換金しておきたいから聞いておく。
「あ!そうでしたね。換金だったら隣のカウンターで出来ますので受付の人に話してもらえれば良いと思いますよ?」
「ありがとうございます」
さっと、隣のカウンターに移動する。
「お?さっき、冒険者登録してた新人の坊主か」
前にいた筋肉おじさんに話しかけられた。
「はい、ここに来る途中に弱い魔物を倒したので換金しに来ました」
「弱い魔物って言うからにはゴブリンとかか?」
「いえ、ゴブリンではないのですが小動物のような魔物です。弱かったので、今日の宿代くらいにはなって欲しいな〜と思って狩ってきたので」
本当に弱かったから宿代になるかも怪しい。ちょっと心配になってきた。
「っと、俺の番だな。またな、坊主!俺はガウルスっていうからなんか困ったら言えよな!」
とても優しい人だった。街が清潔だと街の人も良い人が多いなぁ。
と、考え事をしていると自分の番がきた。
「はい、モンスター換金所です。君は、何を狩ってきたのかな?」
「森の方で小動物を狩ってきたのですが、ここに出しても良いですか?」
「はい。もちろんです」
アイテムボックスから森で狩ってきた魔物を取り出す。
ところが、取り出した瞬間、空気が凍った。
「お、おい。あれって、戦災級のマデルライガーじゃねーのか!?」
「嘘だろ!?何で、あんな魔物を持ってるんだ!」
あちこちで声が上がる。
「あの〜、これって弱い魔物ですよね?」
俺は、マデルライガーとか言う魔物を指差しながら言う。
「弱いって、戦災級の魔物なんて、軍隊でやっと1匹仕留められるレベルの強い魔物ですよ!?それを1人で倒したんですか!?」
軍隊で1匹って、この程度も1人で倒せないのか。
「あと30匹ほど同じやつがいるんですが、良いですか?」
それを聞いた瞬間、受付の人が倒れた。
「あ、あれ?」
手を振ってみるが、返事がない。ただの屍‥‥
じゃない、気絶しているようだ。
「カイトさん!あんな魔物倒したんですか!?すごいです!」
「いや、すごいと言われても、小動物を狩っただけだけど?」
正直、この魔物は、竜の数万分の一程度の強さしかなかった。その時後方で、声が上がった。
「おい!お前、本当にあんな高ランクの魔物を狩ったっていうのか!?こんなガキが倒せるわけないだろ!どっかから買ってきたのを見せてるんだよ!騙されんぞ!」
いきなり、声を荒げた男が寄ってくる。
「やばい!Aランクのピースドが新人に喧嘩吹っかけてるぞ!」
「あーあ、あの新人終わったな」
周りからそんな声が聞こえる。
強いのか?こいつ?
「まぁ、良い。『鑑定』」
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名:ピースド・リベイル
種族:人間
Lv27
HP:6872/6872
MP:2258/2258
攻撃:750
防御:670
素早さ:450
能力:D+
固有スキル
身体強化、剣術
スキル
炎魔法Lv2
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やはり弱いな。しかも、属性魔法を1種類しか持っていない。よくここまで生きてこれたな。ネネの方が育て甲斐がある。
「あんた、俺のこと疑ってるのか?」
すると、ピースドは吠えた。
「当たり前だろ!インチキしてんだからよ!」
別にインチキなんてしてないんだがな。誤解が解ける様子でもないし。よし!
「なら、今から俺と戦ってみるか?あ、その場合剣術での勝負だ。あんたは、剣術が得意みたいだからな」
「は!俺様に剣術で勝てるとでも思っているのかよ!いいぜ、俺様の——」
「いや、勝てるから言ってるんだが‥‥」
うるさかったので言葉を遮った。
ブチッとピースドがキレたことがわかった。
「おい!闘技場を貸せ!このガキをぶちのめす!」
闘技場なんてものがあるのか、どんな時に使われるんだろう?と考えていると‥‥
「カイトさん!何で、ピースドさんに喧嘩なんて売っちゃったんですか、いくらカイトさんが強いからって倒されちゃいますよ。相手はAランク冒険者ですよ!?」
話し掛けてきたのは、ネネだった。
「大丈夫だって、あんな『雑魚』には負けることは、万に一つもない」
「Aランク冒険者を『雑魚』って」
本当のことだ。Lv二桁なんて、雑魚すぎる。
「じゃあ、ちょっと言ってくる」
そういって、その場を離れて闘技場に向かった。
◆
〜闘技場〜
「来たか、ガキ!」
ピースドが声をかける。
「さっさと終わらせよう。俺だって色々やりたいことがあるんだ」
その瞬間、ピースドが地を蹴った。
「だったら、さっさと終わらせてやるよぉぉ!」
こちらに剣を向け襲いかかってきたが、その剣を片手で止め、綺麗に真っ二つに握力だけで刀身をへし折ったした。
「「えっ」」
ピースドだけでなく、後ろにいた人からも声が聞こえた。
「これで終わりだ」
そのまま、ピースドは膝をつき、唖然としていた。
「俺様の剣が‥‥おい!ガキ!何したんだ!」
「見てなかったのか?ただ、剣を止め、折っただけだ」
「嘘をつけ!」
事実でしかないだろう。もうこいつに関わっていても意味がない。そう思い闘技場を離れた。
後ろでピースドが、何かいっていたが無視した。
◆
〜再びギルド〜
「カ、カイトさん!何やったんですか!?剣を折っちゃうなんて!」
ネネが聞いてきた。
「ただ、剣をへし折っただけだ」
「どんな、握力してるんですか」
はぁ、とネネがため息をついた。
そんなに変か、俺?
「まぁ、いいや。それより換金の方はどうなったのかな?」
「あ、そうでしたね」
換金所に向かうと、受付の人に呼ばれた。
「すいません、こちらにきていただけませんか?」
案内されたのは、応接間だった。中に入るとガウルスさんに少し似た男の人がいた。
「ま、まさか、レウスさん!?」
「ネネ、レウスとは誰だ?」
「ギルドマスターですよ!滅多に人前に現れない人です」
ギルドマスターか、なんか俺のいた時代に比べて覇気が感じられない。本当にギルマスか?
「君が、マデルライガーを倒したという少年かね?」
「そうですが‥‥」
なんか、怒られるのかなぁ、心配だ。
「先の戦いを見させてもらった。片手で剣をへし折るとは、貴様何者だ?ただの新人ではないだろう?」
なるほど、覇気を隠していたのか。こいつは、この時代であった者の中で、間違いなく1番強い。
「俺は、ただ力が強いのと魔法適性があるだけだ。別に特殊なことはない」
だが、レウスが細眼でこちらをみた。
「いや、それだけで、相手の剣の刃先すら傷つけないように折るなんて芸当ができるはずがない。もう一度聞くぞ。貴様は何者だ?」
どうやら逃れられそうになかった。
「あんたに話す義理は無い。だが俺の戦いを一目見ただけでそこまで見抜けた者は、あんただけだ。だから、一つだけ教えてやる」
俺は、ネネなどに聞こえないように、音を遮断する結界を作り、レウスに話した。
「これから言うことを実行して欲しい。ただし、他言禁止だ」
「約束しよう」
「あんた、『鑑定』のスキルは使えるか?」
「使える。それを貴様にすれば良いのか?」
こくんと頷いた。
「では、『鑑定』」
レウスは、俺のステータスを見て眼を見開いた。
「これに書いてある事は本当なのか?だとすればこれは‥‥賢者、いやそんなものでは話がつかん。お前さん、人間なのか?」
俺が見せたのはレベルと能力値だけだが、こうも驚かれるとは、この世界のことはまだ全然わからん。
「ちゃんとした人間だ。この時代の者ではないがな」
「どういうことかわからんが、このステータスを見る限り、あの戦いも納得がいく。疑ってすまなかったな」
どうやら、納得してくれたようだ。だが、何か引っかかるな。驚いているが、本心では驚いていない様な‥‥考え過ぎか?
「強いやつがギルドにいてくれるのは有り難い。これからも頼む」
ギルマスに頼みごとされてしまった。だが答えは一つしかなかった。
「任せてくれ。俺はこの街が好きだからな、街のためなら基本的に動くとしよう」
「よろしく頼む」
レウスがニヤリと笑った。
さて、そろそろ結界を解いてもいいか。
結界を解くとネネが聞いてきた。
「レウスさんも何話してたの?」
「特に?ただ、強いやつがいてくれると嬉しいだとよ」
「本当にすごいね。カイトさんって!」
素直に褒められると嬉しいな。
「あ!そうだ、レウスさん」
俺がギルマスに問いかける。
「なんだ?」
「マデルライガーの代金ってどのくらいなんですか?」
「あぁ、そのことなんだが少し面倒なんだよな」
「どういうことですか?」
「結論から言うと、お前の出したマデルライガーを買い取ることは、『出来ない 』」
「なんだって!?」
俺の声が応接間に木霊した。