第11話
それから俺は、彼女とともに家路についた。他愛のない会話に花を咲かせながら…自分のこと、家族のこと、学校のこと。このころにはもう、お互い砕けた口調になっていた。
「やっぱりきょうだいも似てるんだね、私も冬基さんに会ってみたいなー」
「いやマジで雰囲気とかそっくりだから、普通に俺つい『姉さん』って呼んじゃってマジ恥ずかしくてさ…夏輝さんも『ハル君』とか言い出すし」
「あはは、でもよかった…お兄さんも春美君のこと、普段からすごく大切にしてくれてて。そういうところは、変わらないでいてほしかったから」
話をしていて、彼女は俺より少しだけ大人びているように思われた。女性は早熟なところがあるとか聞いた気がするけれど、それゆえに彼女は、あの日の俺のように、タガを外してしまうことができなかったのだろうか…ふと、そんなことを考えた。
しばらくして家に着く。夏輝さんが、玄関先で待っていてくれた。
「あっ…」
秋実さんに気付き、少しだけ戸惑う様子を見せる。けれど。
「…ただいま!」
秋実さんのその言葉に。
「あ…うん、おかえり!」
満面の笑顔で、そう答えていた。
「ハル君も、おかえりなさい」
「ただいま夏輝さん。カギ、ありましたよ」
そう俺も応じるが…夏輝さんは言葉を続けず、何かを期待するように俺をじっと見つめている。
「…あー…その…ただいま、姉さん」
夏輝さんは満足げに頷き、秋実さんはクスクスと笑っていた。