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第1話
それはとある春の日の…いや、春だったはずの日の出来事。何が起こった?どういうことだ?俺の身にこんなことが降りかかるなんて…玄関先に立ち尽くし、突然の事態に混乱する俺の意識を引き戻したのは、スマホから届く兄貴の声だった。
『春美、聞いてるか?家着いたんなら俺の部屋の…』
「…兄貴、ちょっとヤバいかもしれない」
そう告げる俺の声に緊張の色を感じ取ったのか、兄貴も息をのむ。
『…どうした、春美』
「兄貴、俺…」
一呼吸おいて、簡潔に現状を伝える。
「俺、異世界転生しちゃったっぽい…」
「………」
「………」
しばしの沈黙の後。
『すまん、今日は早めに帰るから…あとお前の好物も買って帰ってやるから…』
「違うんだって兄貴マジなんだって!聞いてよ!」
―――『俺』にとって忘れられないひとときが、幕を開けようとしていた。