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金田は動かない!

最後まで読んでいただくと良いことがあります。いや、ほんとっす。


       【第一話】『金田は動かない!!』



他愛のないことがきっかけで思い出すものは同じように他愛のないもので、金田一かねだ いちはそんな他愛もない記憶を一人ぼんやり思い出す。


            ×××××


小学生の頃の日曜の昼さがり。取り溜めてあった戦隊ヒーロの番組を俺んちで俺達がダラダラと見ていたいつだかの冬。


「もっと腰を使え腰を!踏み込みもぬりぃし!駄目だ。こいつの拳には何にも乗ってねー。つーか、いいからちゃっちゃと道具を使えっつー話。てか、そもそも戦闘服派手すぎだろ!そこは迷彩だろ普通。目立ってどうすんだっつーの。あと巨大ロボットいらねえ。そのビーム砲で倒せんならそれを搭載した小型戦闘機の大量生産に予算を回せ。」腕を組み、足を組み。椅子の上でぐるぐる回りながら京子がつまらなそうに口にする。


「それは言えてますねえ。たとえ両腕がふっ飛ばされても見た目は超絶カッコイイですが、武器がもてなきゃただの馬鹿でかい的。遠隔操作にしておとり用として考えさせてもらえれば有用かと。」

ポッキーをかじりながらコタツから顔だけだしてテレビを見ながらリカが言う。



「社会背景は現実を適用しているはずだから、これって国民の税金だろ?だとするとそもそもまず疑うべきはこの悪の組織とやらの黒幕が、本当にこいつかどうかじゃないか?ふつう黒幕は自分で黒幕とは言わないものだし此処まであからさまに自分が悪者の大将だと主張するのはまず疑っていいと思う。これをきっかけにして国の防衛予算や警察関連予算の膨大な増額にも成功してるはずだし、この組織が被害を拡大させればさせるだけ完璧な管理社会へと足を速めることにも繋がるはずだ。よって、裏で手を組んでいるという可能性も充分ある。とにかく情報が足りない。もっと情報がほしい。」

背筋を伸ばし両手をテーブルの上に乗せ、コタツに入りながらも正座を崩さず、真面目腐った顔でシンが言う。


「まあ、どの目線で見るかによりますよねえ。リカとしては正しい消費の仕方としてヒーロー目線推しですから上の指示に従い目標を完全に制圧することに命をかけたいと思います!まず一話目からないですね。リカなら一匹も殺しません。捕獲します。」


「へえ。正義のヒーローだから?お優しいことでぇ~。」ぐるぐるまわりながら京子がせせら笑う。


「いえ。拷問ですよ!もったいないじゃないですか。情報を引き出せるだけ引き出すためにあらゆる苦痛を与えます。そうですねえ。まずはありたいていですが、爪を全て剥がしてそれから歯、指、耳、、、ああっ!!可能性は無限大ですねえ~。そして、それらの映像記録は全て録画して次に捕獲した敵に見せます。そこからの可能性も無限大です。発信機埋め込んでわざと逃がすのはもちろんのこと!捕獲した敵をもれなく最大限利用して組織を完全に解体することだけに専念します。リカならワンクールもいりません。5話。いえ3話で制圧してみせます!」


「、、、オレとしては次回作の前に必ず敵の雑魚キャラ達のドキュメンタリーでワンクール使って、そっち展開に深みを持たせてほしいのだが、、、、もごもご、、」俺は寝転がって天井をぼーっと眺めてそう言いながら、みかんをほおばっていた。


「大変!!大変だぁ!!!」あかねが叫びながら部屋に入ってきた。肩を上下させながら手を膝につけて息を整えている。


「た、大変ですぜえ、、」


「雪でも降ったか?」俺はそう言いながら、もう1つみかんを取ろうと腕を伸ばす。


「児童公園で事件!!うちのクラスの男の子たちがビシバシ叩かれちゃってるよ!!相手六年生くらい!?んー!わかんないけどうちの学校じゃないのはたしか!!」


「それは大変だなあ。」ぐるぐる回るのをやめて京子がニヤつく。


「よし!出動ですね!!」リカが待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。


俺もみかんを持って立ち上がった。シンはやれやれと首を振る。



児童公園に到着した時には同じクラスのヤツが二人。泣き出しそうな顔で財布をポケットから取り出して囲まれた男たちに今まさに献上しようとしているところだった。


「年下から金を巻き上げようとは、わかりやすい悪党め。」みかんの皮を剥きながら俺はそう言った。見るからに悪そうな4人組の男だ。背は俺たちよりも随分高い。が、俺にはそんなことは関係無い。


「なにお前ら?関係ねえだろ。」案の定、意地の悪そうな男が睨みつけながらオラオラ近づいてくる。俺はその様子からつまらなそうに目を逸らし、もったいないからと、みかんを一粒ずつほおばる。


「私はバカじゃねぇから目の前の事をちゃんと認識できんだよ。認識したその瞬間から私にも関係ある事になったんだよ。このバ―――カ!」京子が嬉しくてたまらないという様子ではしゃぐ。


「は?なんなのおまえら。正義ぶってんじゃねぇよクソガキ。」

火に油を注がれた男達がたまらずに怒りを露にさせた。


「いえいえ。それはもはや当たり前のことなのです!リカはヒーローなのです。それだけはもう完全に決定しております。だから貴様らの選ぶ道は二つだ!われわれ正義陣営に加入するか悪役として無様に葬り去られるか!さあ選ぶがいい!!このゲスやろう!!」


派手な手振りを交えながらリカがさらに油をぶっ掛ける。


「まじでバカじゃねえのこいつら。死ね!」

暴発した男共が群れで駆け出してきた。



「いけえ!!」なぎ払え、とでもいう様にリカが向かってくる前方の男共に人差し指をビシッと突き出し、それと同時に「お願いします!!」と、あかねが両手を組んでお祈りのポーズをとり、俺はまた一粒。みかんをほおばった。


駈けてくる男共を迎え撃つように京子が飛び出し、接近した瞬間には一人、また一人とその場に崩れ落ちた。


京子は2撃で早くも二人を仕留めてもう一人と対峙する。

残った一人がこちらに突っ込んでくる。

「ひええ!!」とあかねが叫び終わるよりも早く、俺達の前にシンが立ちはだかってまるで踊りの振り付けのようにさらっと動いたと思ったら男が、あっという間にその場に転がる。


「おまえらは俺が生まれてきたことをこれから先ずっと後悔しろ。俺のせいで一世紀早まるんだ。世界平和。」転がった男を見下ろしながらシンはそうつまらなそうに言って微笑む。


最後の一人が京子の回し蹴りで吹っ飛んだ頃には、俺は全てのみかんを食べ終えて皮をゴミ箱に捨てていた。


それから俺は最期にこう締めくくった。

「全世界の民が!!ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存させる!!!我々はそのためのサキガケ団だ!!!」


一件落着。


            ×××××


ふっ。俺は日曜早朝の特撮ヒーロー番組をダラダラと部屋で一人見ながら、そんな他愛のない昔のワンシーンを思い出し嘲笑的に笑った。


テレビの中のヒーローを見ながらこう思う。この世界平和のために命をかけている派手なコスチュームの隊員達の給料っていくらなわけさ?

リーダーのほうがやっぱ高給取りなの?

派遣社員、、、って事は、ないよな?

てか、世界平和のためなら一生暮らせるだけの金もらえなきゃ割に合わないよなきっと。


ん?てことはつまり、こいつらワンクールで一生分の稼ぎを蓄えたってことか!?


「ふざけろ!!」俺は思わずテーブルをドンッと叩いた。


それから俺はテレビを消した。


てか、日曜日の朝からすでにオレを憂鬱にさせやがる中学校を破壊してくれたなら悪の組織でも関係なく俺、お金払うわ。


あっ、でもあれな。作戦は「命を大事に」な!つーか誰も殺すな。俺は金土日は休みたいだけだ。ヤッホーだ。



なんでもない日曜の静かな部屋。


「あーあ。まじで明日学校潰れてねぇかな。」


寝転がって天井をぼーっと仰ぎ見た。他愛のない記憶がそこにべったり張り付いてる。


くだらない唄を口ずさんで気を紛らわし、それから少し咳をして、落書きのような夢を見た。


           ×××××


『神は細部に宿る』とはよく言う。が、『ラスボスもまた細部に宿る』とは誰も言わない。しかし、俺はそんなこと露知らず。目下のところ平凡そのものの中学生だった。


まさか自分が世界そのものを相手取ってやらかしてしまわねばならなくなるなんてことは、この時の俺は知る由もない。


『水着は濡れてもいい下着だ』


ブックマーク登録していただけたら幸いです。ほんと。いずれ良いことあります。ほんとっす。

これから毎日午後11時過ぎくらいに投稿して三月頭に終わらせます。ほんとっす。

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