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1 俺が彼女の借金を返した理由

タイトルで内容わかるシリーズ。まあ、書いてみたいだけのやつです。色々と細かい点はスルーでお願いしますm(__)m





俺、中島努(なかじまつとむ)は社畜である。正確にはある24時間のディスカウントストアで明らかに人手不足なのに超過な仕事を押し付けられている負け犬である。そんな俺の朝は意外なことに基本的には普通に学生と同じような時間だ。


「あ、おはようございます!」


毎朝の始まりはそんな元気な挨拶から始まる。近所に住む女子高生の彼女はいつも笑顔で挨拶してくるのでその日も仕事を頑張ろうと思える。まあ、そう言っても大変なものは大変なんだけど。


「おはよう、今日も学校頑張ってね」

「はい!中島さんもお仕事頑張ってください!」


そんな風にしていつの頃からか挨拶するのが定番になっていた。俺が社畜になってからだいたい7年程だろうか。18歳で高校卒業してから今の会社で社会の厳しさを叩き込まれてから、ここ2、3年は彼女の笑顔に随分助けられている。実際上司からのパワハラに自殺未遂まで考えてしまった頃から考えると高校生の眩しさには助けられている。趣味も無料の小説サイト巡りくらいだし、貯金だけが貯まっていく空虚な生活の潤い。邪な考えが浮かばないくらいに楽しそうな彼女の笑顔は好きだった。


そんな風に思いながら珍しく早く帰れたその日にそれは起こった。マンションの前で何やら揉めている彼女と複数の男達。普段ならスルーしたい人種の人間にしかし悔しそうに泣いている彼女の表情を見て思わず聞いていた。


「あの、大丈夫?」


その声に一斉にこちらに視線が集まる。厳つい顔にびびりそうになるが俺は彼女に視線を向けると聞いた。


「何かあったの?」

「あ、あの・・・実は」


彼女は涙を浮かべながら両親が事故で死んでしまったこと。そしてその両親の借金を即日払えと催促されていることを話した。事情を呑み込んでから考える。普通に警察沙汰にしても勝てそうだけど、これ以上彼女に心労をかけずに早く退散するための方法は・・・


「ちなみに借金ていくらなの?」

「そ、それが・・・」

「2000万や。本日中に貰えんのならそれなりに覚悟してもらうで」


嫌らしい表情を浮かべる男達に怯える彼女を見て俺は思わず言っていた。


「なら、その借金俺が払いますよ」

「な、中島さん!?何を・・・」

「あんさんそんなに持ってるんか?それにこの子とどういう関係や?」

「そんなの何でもいいでしょう。貴方達の目的は借金の返済。ならここで話を終わらせないと警察沙汰になりますがそれでもいいんですか?」


その言葉に舌打ちをしてから頷いたので本日中に振り込む手筈を整えてから追い返すと彼女が呆然と聞いてきた。


「どうして・・・」

「無神経なアイツらに頭にきたからついね」

「あ、あの・・・お金はちゃんと返しますから」

「ん?いやいいよ。そんなことよりも・・・」


俺は彼女の頭を撫でると微笑んで言った。


「よく一人で頑張ったね。ご両親が亡くなって辛いのに偉いよ」

「あ・・・」


しばらく何かを堪えるようにしてから彼女は涙を流して言った。


「お父さんもお母さんも死んで、変な人達がきて、おばさんにも連絡つかなくて私どうしていいかわからなくてそれで・・・」

「うん」

「中島さん・・・私一人ぼっちになっちゃった。どうしたらいいの・・・」


そう泣きながらすがるような表情になんと答えればいいか迷ってから言った。


「とりあえず自宅で休んで・・・は、やめた方がいいか。さっきの連中来るかもしれないし。なら家を使いなよ。部屋は余ってるし一応客用の布団もあるし不安なら俺はネカフェに泊まるから」

「どうしてそこまで・・・借金のこともどうしてですか?」

「えっと・・・君の笑顔が好きだからかな」

「え・・・」


その言葉に彼女はきょとんとするので俺は少しだけ気恥ずかしい気持ちになりつつ言った。


「色々と仕事が辛くても元気な君の笑顔に助けられたからそのお礼かな」

「中島さん・・・」

「ま、あのくらいの金額ならまた仕事を頑張ればいいからね。だからお礼なら笑ってくれると嬉しいな」


彼女はその言葉にしばらく涙を脱ぐってから不器用に笑顔を浮かべるので俺はそれに頷いて言った。


「うん。やっぱり可愛いね」

「ぐすん・・・中島さん。私の名前知ってます?」

「そういえば聞いたことなかったね」

「私、高木紗耶(たかぎさや)です。紗耶って呼んでください。中島さんは名前はなんていうんですか?」

「え?努だけど・・・」

「努さん・・・つっくんでいいですか?」


年上にその呼び方はどうなのかと思っているが俺は笑って言った。


「可愛い呼び名だね」

「つっくんも私のこと名前で呼んでください」

「えっと・・・紗耶?」

「はい。つっくん」


微笑む彼女・・・紗耶に少しだけ元気が出たようで良かったと思っていると彼女は聞いてきた。


「つっくんは彼女いますか?」

「いやいないけど・・・」

「あ、あの・・・でしたら、私をつっくんの家に居させてくれませんか?一人は寂しいので・・・」

「いいけど・・・まずは紗耶の叔母さんにも確認取らないとね。多分叔母さんが保護者扱いになるんでしょ?」

「そのはずです。ご迷惑かけますが・・・」

「いいよ。紗耶が嫌じゃなければ好きなだけ我が家にいてよ」

「ありがとうございます」


その最後の笑顔はさっきよりも自然で何かを覚悟したような表情だったのだが、俺はこのときは一時的な正義感でハイになっていたので違いがわからなかった。そう、この時には彼女が自分のことを依存の対象として見ているとはこの時の俺には想像すらできなかった。







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