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6. ギャラクシア 1

そう言ってディーアは五つの突起の一つでずっと遠くを指さした。星子は目を細めて見ても何も見えなかった。その事を言おうとするも、空腹感と倦怠感から唇を開くことさえわずらしく、もうこのままこの気味の悪い星型の生物と一緒に、どこでもなんでも好きなところへ連れて行ってくれという気持ちになっていた。

だが、とぼとぼと歩いていくうちに、確かにディーアの言ったように、村のような街が点々と見えてきた。一歩一歩近づいてみると、小さく橙や茶色といった低い四角い建物が列を為して集っている。それらは外観から見ても賑やかな商店や家である事が分かった。

街並みはまるでヨーロッパのように思えた。ようやく気味の悪い場所から去る事が出来ると思うとそれだけで安堵した。

弧を描いた白いアーチをくぐると、新しい風景が出迎えた。空はどこまでも澄んだ夜空で、星達が踊りだしている。疲れが一気に癒やされる程の荘厳な景色に、星子は心が洗い流されるようで、両手いっぱいに広げ大きく深呼吸をした。

「すっごく綺麗!こんなにいっぱい星を眺めたの初めて」

「創造の空だからね。見てご覧星子。あの星達は皆生きている。ほら、あそこに踊っている者もいる。ここはホッリビスからかろうじて護られている領域なんだ」

と、レンガ調の地面を踏んで歩いていくと、連なる屋台の店主たちに声をかけられた。

「お嬢さんとれたて新鮮な魚はどうだい?この水色に輝く魚はミルキーウェイから採れたんだ」

「宝石はどうかな?星の欠片を削って作った本物の宝石だよ」


皆、人間のような相貌をしており、話す言葉も日本語だったが、どこか人間らしくない異国の雰囲気を纏っている。服装も、星屑を散りばめたベールや、金の装飾、水色と紺を貴重とした布など、星子の知っている国とは違った趣のある衣装だ。見るもの知るもの全てが珍しかった。


屋台からは食欲のそそる匂いがして、益々空腹を刺激される。道を逸れた真っ白な階段の上にはテラス席の設けているレストランもある。住民は談笑しながら大きな肉の丸焼き──何の動物の肉かは不明だが──を食べたり、飲み物を飲んだりしている。心底羨ましかった。そういえば生前、自分は何を食べていたのだろう。思い出そうと脳を絞らせてみたものの、結局無駄な労力だった。

「星子、お腹が空いてるだろうけどもう少しお待ち。あそこが陛下のいらっしゃる城だ」

ディーアが手を指した方角には、いくつもの塔がそびえる立派な城が中心にあった。

「陛下って?」

「この国の王さ」

「王様になんて、私が会っていいものなのかしら」

星子は自分自身を見てみた。服装は普段着ているセーラー服だし、先程の闘いや何やらですっかり汚れきっている。こんなボロボロな成りで高貴な人物に会っていいものなのだろうか。

「王様はとてもお優しい方でいらっしゃる。だから平気だよ。星子はきっと気に入られる。それにご馳走が食べられるかもしれないよ」

「…ディーアはお腹空かないの?」

「僕は空腹は感じないんだ」

無一文である星子は、ディーアに従うしか方法はなかった。王様に会う前にせめて少しでもマシになるようにと、スカートの泥を両手で払った。


城へと続く橋の前に二人の鎧を着た兵隊が立っていた。思わず縮こまって真ん中を通ったが、何も言われずにすんなりと通る事が出来た。それどころか、門の前の番人は星子が来ると、城の門を開いてくれた。星子を城の中に迎え入れるかのように。城の中に足を踏み入れると、思った通りの荘厳な装飾の数々が、星子を圧倒した。星子とディーアは兵隊に案内されるまま玉座の間へと通された。


部屋の中には赤に刺繍の施された長い絨毯と、きらきらと目が痛くなるような程黄金に輝くシャンデリアや、豪華な置き物の数々が壁際に飾られている。輝くものが好きなのだろうか、部屋全体が金色に包まれていた。そして長い絨毯の先には白い髭をもうもうと生やした逞しい老人の姿があった。そしてその白髪にはこれまた煌々と輝く立派な王冠があった。彼が王なのだろう事は、見て直ぐに分かった。

兵士は玉座に座る王の前に止まり、敬礼をした。

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