5.リンカー
胸の真ん中の、星屑の紋章へそっと掌を宛てがった。まるで命のあるもののように生温かい。そういえば、いつの間にか服が変わっている。紺色の襟のついた白い短いジャケットに、白いフリルのついたミニスカート。白の太ももまであるブーツ。こんな露出のある服は生まれてこの方着たこともない。それに何だか髪が長くなっている気がする。子供の頃に見た、変身もののアニメのような格好だ。――星のブローチからディーアの声がした。
「ディーア?そこに居るの?」
「ああ、ここだよ。星子。今君は僕と融合している。君の心のままに僕の姿を変える事が出来る」
「どういう事?」
「とにかくやってごらん」
心のままに。ディーアの言っている意味が最初は理解できなかった。しかし、ホッリビスの触手が再び星子を狙う時、その意味を理解した。咄嗟に防衛本能が働いた星子の心に反応し、ディーアは星型の盾に変形し、星子の身を守った。
「え?今、私の心に反応して……」
「そうだよ、君が願えば僕はどんな形にも変えられる。さあ、願って!君には想像力があるはずだ、星子。彼らを倒そう!」
「うん、分かった」
星子は言われるがまま、ホッリビスの次の攻撃が来る前に願いを込め、ディーアを星の剣に変えた。柄を両手で持った時、それが自分の体の一つのような気がした。
――大丈夫、怖くない。私に、勇気をください。
心の中でそう唱えると勢いよくホッリビスに向かって走っていった。そして触手の先端から一気に刃を立てて、縦に半分に切り裂いた。ぶしゅっと、赤黒い液体を飛び散らせながらホッリビスは悶え、そして動かなくなった。
「た、倒した」
急に力が抜けると、星子はその場にへたりこんだ。緊張と恐怖感から解放され、息を整えるように肩を上下させる。
「やったね、星子。ホッリビスを倒した」
「何だか、疲れたわ……」
「今、リンクを解くよ」
ディーアは元のグロテスクな姿に戻った。
「最初は願いの力が少ないけれど、いずれそれにも慣れたらもっと強大な力を発揮できるからね」
「そう、良かった」
放心状態のまま星子はほとんど適当に返事をした。その後、何とも気の抜けた音が腹から鳴った。とうに恥じらいなどは薄れていた。
「お腹が空いたみたいだね」ディーアは淡々と言った。
夢の中でもお腹が空くものなのだろうか、と星子は疑問だったが、たまに夢を見てても本当に感覚を感じる事がある。その為、その疑問は一瞬で霧に消え星子は力を振り絞って立ち上がり歩き進めた。
喉が渇き、全身が疲弊して足が重たかった。心なしかディーアの体の色が先程より濁って見える気がした。
「まだ着かないの?」
「もうそこだよ」




